作りたいと思った「もの」を自分の手で作るのが好き。 全米ベストセラー書籍「born to run」を読んでワラーチに興味を持ち、木村東吉さんが発表していたワラーチを真似して作る。 様々な人が色々な素材で作っている事をネットで知り影響を受け、ワラーチ制作にハマる。制作にあたり相談を受ける事が多くなった事をキッカケに、「材料を集めるのが面倒」「どんな材料を使ったら良いか分からない」人向けに「DIYキット」を作ると共にワークショップ活動を始める。ブログ:http://408ownworks.hatenablog.com ショップ:https://408ownworks.handcrafted.jp
私たち人間は、進化する過程で様々な便利な道具を生み出してきました。ランニングの際に、足元を守ってくれる靴もそのひとつで、衝撃を和らげ、走りやすさを提供してくれます。しかし、文明の発達する前の遠い昔には、裸足やワラジなどを履いて長距離を移動していました。
メキシコの山岳地帯に住む先住民族で、「走る民族」という名を持つ”ララムリ”は、走る時に「ワラーチ」と呼ばれるサンダルを履いているそうです。ワラーチは、廃棄されたタイヤを底に使い、革ひもで足を固定するシンプルな履物です。彼らは、このワラーチを履き、夜通し100kmを走ると言います。
日本でも数年ほど前から、いろいろな人がワラーチを自作しており、試行錯誤してオリジナルのワラーチが作られています。ここでは、私流のワラーチの作り方を一例として紹介します。このHow toでは、普段履きなれた靴ではなく、ララムリのようにワラーチを作り、素足に近い感覚で歩き・走ってみます。足から大地をダイレクトに感じ、地球を踏みしめてみましょう。
【ワラーチ作りに使う道具】
A4サイズの用紙
1,2枚
ハサミ
彫刻刀(弧形刀)※あると便利
穴あけポンチ(5mm)
鉛筆・カラーペン
白や銀色の細いペン(足型を転写する時に使用)
カッターナイフ
カッターマット
トンカチ
【ワラーチの材料】
ビブラムソール #8327 woodstock
PPテープ(15mm幅)
長さ1m 2本
パラコード(4mm)
長さ19cm 2本
ラダーロック(15mm用)
2個
アジャスター(15mm用)
4個
はじめに、必要なものを揃えます。
写真(1)は、ワラーチ作りに使う道具です。写真を参考に揃えましょう。白や銀色の細いペンは、ソールに足型を転写する時に使います。彫刻刀は、必須ではありません。
(2)は、ワラーチの材料です。パラコードは、足のサイズにより必要な長さが異なります。少し長めに準備し、作りながらバランスの良い長さに調整して下さい。
必ず同じものを準備する必要はありませんが、わかりやすいように具体的な材料の例をご紹介しています。全ての材料は、インターネットなどで簡単に購入することができます。
・ビブラムソール #8327 woodstock:http://amzn.asia/0O4CUku
・PPテープ15mm幅:http://amzn.asia/7KPh1Qq
・パラコード 4mm:http://amzn.asia/1N4qE6H
・ラダーロック(15mm用):http://amzn.asia/hJCggJb
・アジャスター(15mm用):http://amzn.asia/gBh5WjJ
はじめに、足型を取ります。A4用紙の上に足を乗せ、鉛筆で足の形に沿って線を描きます。足型は、足にぴったりなサイズで作ると良いでしょう。指がはみ出ていると、歩いた時に引っかかる原因になります。
線が描けたら、わかりやすいようにカラーのペンで、ガタガタしている部分をできるだけ滑らかな線に修正し、サンダルらしい型に整えます。
型を整えられたら、ハサミで切って型紙の完成です。同じように、もう片方の足型も作ります。足型は、左右対象である必要はありません。両足のサイズに少し違いがあるように、足型もそれぞれの足に合わせて取りましょう。
作った型紙をソールの上にあてて、白や銀色のペン(なければ、少し見にくいですが黒いマジックでも可)で、型をソールにうつします。線がしっかり描けたら、その線に沿ってハサミ、もしくはカッターナイフで切っていきます。カッターナイフの方がきれいにできますが、怪我のないように十分に気をつけて作業を進めてください。
両足のソールが切れたら、ワラーチのベースの完成です。
ワラーチは、水に濡れると滑りやすくなります。ソールを作る際に、ノンスリップシートをボンドで貼り付けると、滑りにくくなります。
ノンスリップシート:https://bit.ly/2mP2t29
ソールに紐を通すための穴を開けます。まずは、穴を開ける位置に、白いペンで印をつけます。ソールの上に足を乗せ、1枚目画像(図)を参考に、片足のソールに6箇所ずつ印をつけます。
(1)(2)の穴には、4mmのパラコードを通します。近すぎると、紐を通した後に強い力が加わると千切れてしまうことがあるので、10mm程度は幅をとっておきましょう。
(3)(4)の穴は、後ほどカッターナイフで切り込みを入れてつなぎ、長穴にして、15mmのPPテープを通します。(5)(6)の穴も同様にして長穴にします。
印がつけられたら、穴あけパンチとトンカチで6箇所穴を開けます。次に、(3)(4)の穴を、カッターナイフで切り込みを入れてつなぎ、長穴にします。同様に、(5)(6)も長穴にします。
両足のソールに穴を開けたら、紐が地面に擦れないようにするため、ソールに溝を掘ります。パラコードとPPテープの厚みの分を、カッターナイフでソールを削って加工します。あまり削りすぎると強度がなくなってしまう為ある程度で良いです。加工には、アートナイフや彫刻刀などがあるとやりやすいかもしれません。
いよいよソールに紐を通していきます。
はじめに、1枚目の写真を参考に、親指と人差し指の股の穴(1)と(2)に、パラコードを通します。ソールの表面から紐を差し込み裏面に通し、もうひとつの穴から表面に引き出します。
紐の長さを揃えて、紐の端をギリギリの所で本結びします。結び方は、解けなければなんでも結構です。本結びの結び方を知りたい方は、インターネットで調べて下さい。パラコードは、ギリギリの所で結ばないとPPテープからはみ出て美しくないので、できるだけギリギリのところで結ぶようにしましょう。
次に、2枚目の写真を参考にPPテープを通していきます。アジャスターにPPテープを通し、本結びしたパラコードの結び目をPPテープで巻き付けて隠し、再びアジャスターに通して、紐の輪っかが取れないように固定します。
次に、3枚目の写真を参考に、PPテープにラダーロック通します。ラダーロックの位置は足の真ん中(足の甲)くらいが目安です。
最後に4枚目の写真を参考に、ソールに足を乗せて、ソールの外くるぶしの横に開けた長穴に、PPテープがねじれないように通します。ソールの裏面から差し込み表面に通し、そのまま緑色の矢印のようにPPテープを後ろから前に巻きつけます。
1枚目の写真を参考に、足を入れた状態でラダーロックを指で引っ張り、紐が鼻緒から足の甲まで真っ直ぐになるようにPPテープを調整します。
次に、2枚目の写真を参考に、踵の位置にくるアジャスターを取りつけます。最後にこのアジャスターにPPテープを通す事によって踵が落ちにくくなります。
次に、3枚目の写真を参考に、PPテープを内くるぶしの横に開けた長穴に通します。PPテープがねじれないように、裏面から差し込み表面に抜けるように通し、踵にしっかりフィットさせた状態で、後ろから前に巻きつけます。
4枚目の写真を参考に、ラダーロックにPPテープを通します。ラダーロックを上に引きながらPPテープを引っ張るとPPテープが締まっていくので調整できます。指一本入るくらいの緩さに調整するのが良いでしょう。
最後に、5枚目の写真を参考に、PPテープをアジャスターに通し固定します。ここの締め具合でも履き心地が変わってくるので各自、調整してみて下さい。余ったテープを斜めに切ってライターで炙ってほつれないようにしたら、完成です。
ワラーチを履いて、実際に歩いてみて、PPテープの締め付けを調整します。何度か繰り返し、足が痛くならない位置を見つけて下さい。調整がうまくいけば、紐は締め直さずそのまま脱ぎ履きする事ができます。
ちょうどよい締め付けに調整ができたら、実際に歩いてみましょう。散歩に出かけるのも良いですね。普段走る人なら、いつものコースを、いつもより少ない距離をゆっくりと走ってみてください。足から伝わる感覚に意識を向け、歩き心地を感じます。いつもよりダイレクトに地面を感じられるはず。サンダルなので使い方は自由です。
ただし、むき出しの足に木の枝をぶつけたり、鋭利な石を乱暴に踏みつけた時などは、痛みを感じる事もあります。その分、集中して無心となって歩いたり、走ったりする感覚を味わいましょう。そう言った感覚は、今となっては、野生を感じられる数少ない体験なのではないかと個人的に思います。
また、何が良いって自分で作った履物で、こんなに自由に歩いたり走ったりできるということに気づくことは、特別な体験になると思います。
ワラーチで山に入るときは、必ず予備のワラーチか靴、替えの紐を持って行きましょう。紐が切れた時にすぐ対処でき流ようにしておくのが基本です。
オリジナルのワラーチで大地を感じたら、写真に撮って「やった!レポ」にシェアしましょう。普段履きなれた靴との違いや、感想があれば、コメントにも書いてください。
これであなたも「走る民」の仲間入り!作ったワラーチで大地を感じましょう。
走る民、ララムリは夜通し100kmを走ると言います。彼らに、「なぜ走り続けるのか?」と聞けば、「No se(知らない)」と答えるとか……。ララムリには、自分の気持ちを言語で語る習慣がないといいます。野山を走りながら、走る民、ララムリがどんな思想をもっているのか、彼らは何故走るのかを想像してみるのも面白い体験になるのではないでしょうか?
ララムリの話を抜きにしても、ワラーチで走る魅力は、その開放感、軽快さだと思います。ケガをしないように注意しながら、自分の力で自然を踏みしめ、駆けて行く爽快感を存分に味わってください。