2025.05.3030 views

在来植物の花「ここはな」で昆虫も喜ぶ花壇をつくろう

9
数を減らす在来の植物と昆虫を同時に守る

現在、急速に在来植物が減っています。その理由はさまざまですが、その要因のひとつがハナバチを中心とする花粉媒介者の減少だと考えられています。地球上で昆虫とともに進化してきた虫媒花(花粉を虫に運んでもらう花)は、虫が消えると花粉を運んでもらえず、タネをつくることができなくなります。

植物がつけるタネは、鳥や哺乳類の大事な食糧でもあります。在来植物とハナバチを守ることは、そのほかの多くの生き物の暮らしを守る活動でもあります。郷土に根付いてきた在来植物の花を私たちは「ここはな」と名付けました。ここはなとハナバチを守る花壇をつくって、地域の生物多様性を保ってみませんか。

READY
準備するもの
  • 地域の在来植物のタネ

    必要量

  • 封筒

    必要量

  • ビニールポット

    必要量

  • 鉢底ネット

    必要量

  • 鉢底石

    必要量

  • 培養土と肥料

    必要量

  • ジョウロ

    必要量

  • 筒蜂巣箱

    必要量

STEP 1

ここはなとハナバチの関係を知る

  • タイアサミに来たトラマルハナハチ
  • ウドに来たハラナガツチバチの仲間

ハナバチをご存知ですか? ハナバチ(花蜂)は花粉と花蜜だけを食糧とするハチです。彼女達(子育てするのはメスだけ)は安全な巣を作り、そこに花粉と花蜜を集めて幼虫の食糧とする愛情深い生き物です。彼女達は、自分自身の栄養やエネルギーとするためだけではなく、巣の幼虫の餌を得るためにいつも忙しそうに花々を巡っています。

そして積極的に花々を巡ってくれるハナバチと共に進化してきたのが虫媒花の植物です。多くの人が花と認識する形の花は日本では概ね虫媒花です。他の株の花粉がつかないとタネができない自家不和合性という性質の植物が、花が綺麗な植物を中心に多く見られます。

しかし今、急速に在来植物が減少しています。その原因は、開発による生育環境の減少、繁殖力の強い帰化植物の繁茂、盗掘、草刈りや除草剤の進化、近年の異常気象、落ち葉や枯れ草の放置、人の無関心、そしてハナバチなどの花粉媒介者の減少が考えられます。

私達は日本に昔から分布する「在来植物」の中の、その土地に生育する「地域性系統の植物」、さらにその中の虫媒花をつけるものを「ここはな」と定義づけました。ここはなで花壇を作ることによって、ハナバチなどが生息できる環境を守ることを目的として活動しています。

世界中でミツバチ、マルハナバチなど重要な花粉媒介者が激減していることはご存知でか? その主な原因はネオニコチノイドなどの農薬とされていますが、それと共にハナバチたちの餌となる在来植物の減少も大きな要因なのではないかと思っています。なぜなら身の回りを見渡してみると、花蜜を出さない帰化植物や園芸植物ばかりで、太古の昔からハナバチの暮らしを支えてきて、共に命を繋いできた在来植物が消えてしまっているからです。

ハナバチが減少している地域では虫媒花の草木の実や畑、果樹園の実りが悪くなっています。雑草や雑木もその実やタネは、鳥や哺乳類など動物達の大切な食べ物。在来植物とそれらの受粉を行うハナバチは生物多様性の要であり、彼らを守ることは地域の生物多様性を守ることに繋がります。在来植物とハナバチを共に守ることが必要なのです。

STEP 2

育てるここはなを選ぶ

  • オトコエシに来た狩り蜂
  • ホタルフクロにコマルハナハチ

育てるべき植物は、地元に生育している、地元の環境に合っている在来植物です。生育環境が合っていれば基本的に育てやすいものです。他の地方、気候が違う場所、標高が大きく異なる場所、遠く離れた場所のタネを蒔くのは遺伝子の撹乱になりますからやめましょう。

地元に生育する植物のうち花が美しい植物を選びましょう。花が美しい植物はハナバチやチョウなどを花粉媒介者とする、花蜜を多く出す植物と考えられます。そして春から秋まで花が続くような花壇にすることが理想ですが、それが難しいなら、ぜひ夏から秋に咲く花を育てて下さい。樹木の花は春に咲くものが多く、夏以降は蜜不足になりがちだからです。ハナバチにとって夏以降の草花は大切な存在です。また、実際にタネが手に入る植物であることも重要です。自生している植物は大切なものですから傷つけることはせず、タネから育てましょう。

そうは言っても身の回りにどんな在来植物があるかご存知ない方も多いと思います。今は人里の植物のほとんどが帰化植物に置き換わっています。人が手を入れた場所に生えるものは帰化植物か、園芸植物の生き残りか、強い在来植物(ヨモギやドクダミ、クズや笹あるいはイネ科植物など)ばかりになってしまいました。

しかし、自然豊かな所では?まだ在来植物が生き残っている可能性があります。そのような所を探してみましょう。どの植物が在来植物なのかは、専門家に教えてもらえれば一番良いのですが、今は良い図鑑もたくさんありますからぜひ身の回りの植物を調べてみてください。

STEP 3

ここはなのタネを集めに行く

  • タネをつけたスミレ
  • 熟したオカトラノオ
  • ノハラアザミの綿毛

在来植物のタネはほとんど売られていません。一番良いのは、近隣の自生植物のタネです。遺伝子撹乱の心配もありません。道端や緑地に残っていないか探してみましょう。もちろん私有地、公有地など採ってはいけない所もありますから許可をもらいましょう。まず、目立つ花の時期に見つけて場所を覚えておきます。季節が変わると風景が変わりますから、地図を書く・目印の人工物などと一緒に写真を撮る・GPSで記録するなどした方が良いです。実が熟した頃に再び訪れて熟したタネを採取しましょう。実の下の柄の部分が茶色く枯れていれば大抵タネは熟しています。植物種によって異なりますが、触ってポロッと取れたり、綿毛が開いていたり、実に穴が開いていたりすれば採り頃です。紙袋や紙の封筒に入れて持ち帰りましょう。

夏から秋に採取してきたタネは雨が当たらないベランダ等で、風で飛ばないようにして紙袋に入れたまま乾かします。その後タネ以外のもの、例えばゴミや花の柄や実の殻、冠毛などをできる限り除去して下さい。タネだけになったら種名、採取日、採取場所などを書いた新しい封筒に入れて下さい。チャック付きビニール袋に入れてはいけません。密閉すると呼吸ができなくなったり、カビが生えたりしてタネが死んでしまうことがあります。保存は紙の袋にしましょう。

封筒入りのタネは、密閉しない箱などにまとめて入れ、冷蔵庫の野菜室で濡れないようにして春まで保存して下さい。暖かい部屋などでの冬越しは、呼吸量が増えて消耗して発芽力が落ちますし、植物種によっては寒さを感じないと発芽しないものもあります。野菜室に入れない場合は屋外の雨の当たらない所に保存するようにして下さい。

春に採取したタネは、乾燥させずにそのまますぐに土に蒔いてください。芽が出るのは来春になることが多いですが、乾燥させないように管理してください。また、果肉がついているタネも処理方法が異なります。果肉をきれいに取り除いた後、湿った砂に埋めて冷蔵庫で保存して下さい。

STEP 4

ここはなのタネを蒔く

  • タネまき後のポット
  • ポットの構成

夏から秋に咲く草花は、大体2月末から3月がタネの蒔き時です。ビニールポットに蒔くのがお勧めです。花壇に直接蒔くと、雑草に負けて失敗しやすいのです。せっかく集めた大切な在来植物のタネですからポットに植えて大きく育ててから花壇に植えて下さい。地植えせずにプランターで育てるならプランターに直蒔きでも良いです。

まず下準備です。タネの量や蒔く種類が少なければそのままポットに蒔いても良いですが、いろんな種類をたくさん蒔くときは面倒でも紙に1ポット分の量のタネを包むと良いです。私は10×10cmほどの紙に包んで準備します。また紙包みと同じ数の名札も用意しておきます

タネ蒔きに必要なものは、以下の4つ。
・培養土
「タネ蒔き用の土」ではなく、普通の培養土が良いです。少量の固形肥料を混ぜるのがお勧めです。
・ビニールポット
直径10cm程度のもの。小さいと土がすぐに乾いてしまいますが、大きいと土がたくさん必要です。
・鉢底ネット
プラスチックの網。穴からの害虫の侵入を防いでくれます。
・鉢底石
水はけを良くするため。

ビニールポットに鉢底ネットを敷き、底が見えなくなる 程度の鉢底石を入れて、有機固形肥料を混ぜた培養土を入れます。土をぎゅっと上から押して、上を1~1.5cmくらいあけて下さい。静かに水を入れて土を落ち着かせます。粉のように細かいタネは、30~40粒程度を土の表面全体にばらまき、上に土はかけなくて大丈夫です。つまめる程度の大きさのタネは土にくぼみをつけてタネを入れ、土をかぶせて下さい。大きいタネほど大きな芽が出ますから1ポットに蒔く数は少なめに。ゴマくらいの大きさのタネなら10粒程度です。風で飛びそうな?タネは飛ばないように土を薄くかけて下さい。そして必ず名札をつけて、種ごとに栽培カゴに入れて管理しましょう。そうすれば発芽時に同じカゴの中のポットの似た芽は、蒔いたタネの芽ということがわかるでしょう。そしてそれと違うのが雑草の芽ですから早めに抜いて下さい。

「風で飛びそうな」とかの方がわかりやすいと思います。

STEP 5

苗を育てて植えかえる

  • 育った苗
  • 生育後をイメージしつつレイアウトする

水やりは必ず、蓮口のついたジョウロで優しくあげること。芽が出る前はポットの土の表面が乾いたらたっぷりと水をかけて下さい。芽が出てからは毎日忘れないようにします。土の表面が濡れているだけではダメで、ポットの底から水が出るまであげて下さい。夏の晴れた高温の日には朝晩2回水やりすると良いでしょう。

風の強い乾燥しやすい日も要注意です。たった1日の水やり忘れで全滅することもあります。また雨が降ったから大丈夫と思っていたら意外と雨量が少ないということもあります。気にかけてあげて下さい。水やりが大変な場合は、自動散水装置を使うこともできます。タイマー付きで、水量が変えられる物が良いですね。でも、任せきりにすると雑草まみれになります。

春が来ると次々と芽が出ます。双葉はみんな似たような形ですが、本葉はそれぞれ個性的です。大きく育ってきたら2週間に1度の割合で液肥をあげると生長がよくなります。

梅雨の頃が適期です。自宅の庭の他、学校の校庭や、街路花壇など管理しやすい所に植え付けましょう。管理できない所に植えても帰化植物などの雑草に負けていずれ?消えてしまいます。出来れば日照りに備えて水をあげやすい場所で育てるのが良いでしょう。

場所を決めたら、地面を深さ15cm程度耕して、元の土に腐葉土や培養土を混ぜ合わせておきます。草丈などを考慮して植える位置を決めます。草丈が高くなるもの、トゲなどがあるもの、臭いがあるものなどは奥に植え付けましょう。植え穴をポットの高さよりやや深めに掘り、有機固形肥料を少し入れて土をかぶせ、そこに苗を植え付けます。苗は生長期ですから根にダメージを与えないよう、ほぐさずにそのまま植えます。鉢底ネットだけ外しましょう。植えた後は周りの土とポットの土がしっかり接触するように、苗の周りをぎゅ~っと押さえつけてください。植えたら名札をつけます。そして水たまりができるかなと思うほどたっぷりと水をあげてください。

STEP 6

植え付け後の管理

  • 植え付けた年の秋の花壇
  • 植え付けから3年目の花壇
  • 冬枯れの花壇。根は生きている

根付くまでの一週間はしおれない程度に水やりして下さい。その後は基本的に水やり不要ですが、晴れが続いて葉がしおれているようならばたっぷり水をあげて下さい。地植えにした後は急速に育ちます。生育が良ければその年に咲く花もありますが、1年目は葉だけで生長し、次の年に初めて開花する植物も多いので気長に育てましょう。雑草は見つけ次第、抜いて下さい。

冬になって地上部が枯れたら、根元から切り取って片付けて下さい。多年草の場合、地下部は生きていますから根こそぎ抜かないで下さい。翌春にはまた出芽してさらに大きくなります。その時1年目とは全く違った形の葉が出る種もありますから、地植えにする時に名札をつける事が大切です。そして花壇に落ちてきた樹木の葉も取り除いて下さい。落ち葉が地面を覆っていると、タネから出た芽はもとより、多年草の芽であっても生育を阻害されます。積もった落ち葉は冬の間の保温や保湿になり、良いことだと多くの人が誤解しています。春が来る前に取り除いて下さい。

環境が合っていれば年を追うごとに大きな株に育ち、周囲に雑草もあまり生えなくなり、管理もしやすくなります。地下茎や地上茎で広がっていくものもあります。ここはなの種類によっては、草丈が高くなるものもあります。支柱を立てたり、ひもを張ったり、あるいは上部を切り落として草丈を下げたりして見栄え良く育てましょう。ここはなは栽培に適した植物ではないため、ちょっとした工夫が必要です。

長く花壇を維持し、たくさんの花を咲かせ、多くの虫を呼び、たくさんのタネを収穫しましょう。そしてハナバチのための花壇、「花蜜畑」を増やしていってください。

STEP 7

花々のリレーをデザインする

  • ホタルブクロの花壇
  • ユウガギグをハナアブが訪花
  • ミソハギに来たモンシロチョウ

ここはなの会が活動する東京多摩地方の低地でお勧めの植物を紹介します。いずれも少し昔には「山野のふつうにみられる」とされた植物で、この方法で育てやすいものばかりです。日当たりが良い場所から半日陰の花壇にお勧めです。花壇によって環境が異なりますから、多くの種類を植えてもそこに合う植物が増え、合わないものは消えていくこともあります。その場合はまた別の場所に植え付けてみましょう。

意識をしたいのが花々のリレーです。それぞれの花の時期がすこしずつずれた植物を複数植え付けることで、春から秋まで、どの季節にここはなの花壇を訪れても虫が蜜や花粉を採取できるようになります。

花壇の場合、花が全然ないと寂しくなりますから、冬や早春などの在来植物の花が少ない時期は、園芸植物を混植しても良いでしょう。

豊かな自然があってこそ動物たちが?栄し、そこから必要な分だけ頂く暮らしも成り立ちます。各地でこういったかかわりが増えていけば、現在の人間と動物たちとの不幸な関係ももう少し良い方向にバランスが取れていくのではないでしょうか。

春に咲く花
スミレ類(スミレ、アリアケスミレ、ヒメスミレ、コスミレなど)、オオジシバリ、コバノタツナミ、ホタルブクロ

夏に咲く花
オカトラノオ、オトギリソウ、コバギボウシ、ミソハギ、ツリガネニンジン、ゲンノショウコ、キンミズヒキ、ユウガギク

秋に咲く花
ツルボ、オトコエシ、ノハラアザミ、タイアザミ、ヒヨドリバナ、ヤマハッカ

STEP 8

竹筒巣箱をつくる

  • いろんな直径の管を集めた竹筒巣箱

花を植えるほかに、ハナバチのために住処を提供することもできます。ミツバチは世話が大変で、マルハナバチやコハナバチなどは土の中に巣を作ることが多いので難しいですが、ハキリバチなら可能です。彼女達は竹筒などの筒に巣を作ります。ハキリバチの種によって体の大きさが異なりますから、紙ストローや細めの竹などの様々な太さの筒を木箱に詰め込んで、雨の当たらない、高さ1m以上の所に設置して下さい。詰め込んだだけだと鳥が引っ張り出してしまうので、箱の底に防腐剤が使われていないのりを塗ってから筒を入れると良いでしょう。また乾くと固まる粘土に穴を開けたものや、木切れに穴を開けたものなどを入れるとアクセントにもなります。

ハキリバチは筒の中に切った葉?で小部屋を作り、その中に花粉と蜜を詰めて卵を1つ産みます。子供1匹に一部屋準備するという手の込んだことをする愛情深いハチです。花粉と蜜を積極的に集めますから、優秀な花粉送粉者です。

この竹筒巣箱を設置すると、花粉と蜜ではなくイモムシやバッタなどを入れて、泥などで壁を作るドロバチなどの狩り蜂も利用します。彼女達も害虫を駆除してくれる無農薬畑や庭などでありがたい存在です。ハキリバチも、筒に巣を作る狩り蜂も、母蜂だけで働き蜂はいませんから、巣のそばで見ていても刺しに来ることはありません。彼女達が一生懸命に働く様子はとても微笑ましいものです。ぜひ竹筒巣箱を作って観察してみて下さい。

STEP 9

『やった!レポ』に投稿しよう

体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。

MATOME
まとめ

この活動を始めて10年以上になります。始めた頃はまだ見かけたハナバチ類が、春が来るたびに減っていると感じます。ついにこの春は近所で大好きなコマルハナバチに出会えませんでした。近所の緑地などに生えていた在来植物も減る一方です。樹木の実りも悪くなっていますし、マルハナバチしか花粉媒介できない花は全く実らなくなってしまいました。このままでは畑や果樹園の実りにも影響が出てくるでしょうし、野生植物の果実やタネを食べて生きている鳥や動物達もいなくなってしまうではないかと危惧しています。でもそのことに気付いている人がどれだけいるでしょうか? 生き物を守るためには、その生態を知り、必要な環境を整えなくてはなりません。

「ハチの羽音がしない春、植物が実らない秋」。その広がりを抑えるために、ぜひ在来植物やハナバチなどの昆虫類に関心を持って下さい。そして少しでも彼らの助けになるよう、ここはなで「花蜜畑」「花蜜かだん」を作っていただけたら幸いです。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性3
5知性
3感性
アクティビティ
つくる
環境
街 ・ 田畑 ・ 公園
季節
春 ・ 夏 ・ 秋
所要時間
1日以上
対象年齢
小学生高学年以上
やった!レポを投稿
写真とコメントをみんなと共有しましょう。
※画像サイズが大きい場合、通信料などがより多く発生します。
ログインしてやった!レポを投稿しよう!
※投稿するにはログインが必要です。
Profile
あと140文字
EVERYONE’S REPORTS
みんなのやった!レポ
やった!レポはありません。
コメント
Profile
あと140文字
クリップしたユーザー(1人)
LATEST HOW TO
新着のHow To
NEWS
お知らせ
THEME
テーマ