人間が生きる上で欠かせない食事。私たちは毎日、何かしらの食事を取っています。野菜、魚、肉etc……。これらは元をたどればすべて生き物です。人間の豊かな食生活はこうした生き物とそれらを育む自然に支えられています。もちろん、このことは誰もが知識として知ってはいるでしょう。しかし、毎日の食事のたびに生き物や命に感謝して食事をする、という人は少ないのではないでしょうか。美味しかった、いまひとつだった、といった感想を抱くことはあっても、口にした食材が元はどういう形のどういう生き物だったのか、自分の口に入るまでにどんなプロセスを経たのかを想像することはあまりありません。それは私たち現代人が「食べる」という行為において、重要な手順を代行してもらっているからかもしれません。自分の手で生き物を食物へ加工すると、食や自然を見る目がきっと変わるはずです。※記事内にはニワトリを絞めて解体する写真や表現が出てきます。
ヨーロッパでは古くから筆記用インクとして没食子(もっしょくし)インクというものが使われてきました。このインクは皮でできた羊皮紙にもしっかりと書くことができ、中世から最近まで利用されてきました。没食子とは中近東で得られる虫こぶの一種。人類は長く虫こぶで字を書いてきたわけです。日本に没食子はないのですが、同じようにインク作りに適したヌルデミミフシという虫こぶがあります。化学的につくられたインクの書き心地いいボールペンが手軽に使える現代だからこそ、ここはあえて虫こぶインクで字を書いてみてはいかがでしょうか。
デジタルカメラを使った動画撮影が一般的になり、市場に出まわるデジタルカメラの多くにスローモーション撮影の機能が搭載されるようになりました。印象的な動画制作のために使われることの多いスローモーションですが、この機能でぜひのぞいてほしいのが生き物たちの動く様子です。スローモーションにすると肉眼では追いかけられない彼らの生態が見えてくるのです。身近な生物をスローモーション撮影して、秘められた生態や生活をのぞいてみましょう。
仕事がら、あちこちの水辺に出かけてはタモをふるいますが、年を追うごとに日本の水辺の環境が悪化しているのを感じます。その原因のひとつが、もともとはその地域にいなかった生きもの(=外来生物)の侵入です。そのまま野外に外来生物を置き続ければ、その地域の固有の自然が損なわれてしまいます。しかし、外来生物にも命があります。もとあった自然に対して外来生物が及ぼす影響と、個々の外来生物の命の重さはどのように考えればよいのでしょうか。また、子供たちに環境の保全と命の尊重をどのように伝えればよいのでしょうか。「地域の自然を守りたい」と市民が志したとき、外来生物をどのように扱うべきか。さまざまな視点から考えてみましょう。
今、図鑑が人気です。さまざまなジャンルに、いろんなタイプの図鑑がありますが、図鑑をひと言で言い表せば「いろんな種類ものを図とともに網羅的に掲載して解説する本」といえるでしょうか。多くの場合、生き物の名前を調べたり、分類や形態、生態などを調べるときに使われますが、図鑑を見ても「載ってない」「わからない」という経験をしたことのある方もいるでしょう。また、今の時代では、紙の図鑑よりも「WEBで検索」したり「SNSで聞く」「アプリで充分」という考えもあるかもしれません。しかし、図鑑は研究者やその生き物をずっと見てきた執筆者が1冊にまとめており、信頼度や安定感においてWEB上の情報とは比べものになりません。そうした図鑑はあなたの先生となりパートナーとなります。ここでは、生き物の図鑑を日々作っているわたしたちが、ともすればとっつきにくい図鑑の攻略法をお教えします。さぁ、あなたも図鑑と一緒に自然の世界を探索しましょう。
虫のこと、嫌いですか? 私は好きです。多くの人に虫のことを好きになって欲しいです。なぜかというと、虫や草が好きになると、それまでとはちょっと違う世界が見えてくるように思うのです。「虫たちのように、ヒトも自然の生態系の一部になるような暮らしがしたい!」そんな思いから田舎に移住し、畑をつくり、そこを虫草農園と名づけました。野菜を育てることで虫や草が育ち、畑に集まってくる生き物たちに小さな生態系をつくってもらい、彼らの力も借りながら人はほどほどの分け前をいただく。虫草農法では、収量の最大化より多様性を高めることを目指し、生き物とともに野菜をいただきます。虫や草にも手伝ってもらう農法の魅力を、いま絶滅に瀕している里山生物たちに代わって、紹介したいと思います。\ PRO TREK PRW-61 × WILD MIND GO! GO! /ケース・バンド・裏蓋に、植物由来の再生可能素材「バイオマスプラスチック」を採用したPRO TREKのエコモデル!詳しくはコチラから
自然は巨大な食材の宝庫です。なかでも昆虫は日本だけでも3万種を数え、狩猟採集時代から食べられてきた立派な食材です。昆虫を捕って食べる行為は、私たちのDNAに刻み込まれている本能なのです。たとえば、セミは昔から世界中で食べられてきました。中国では漢代の王の墓から「セミ焼きコンロ」が副葬品として出土していたり、古代ギリシアの哲学者アリストテレスは「幼虫が美味い」と言い、それを知ったファーブルが幼虫を捕まえて試食する話を『ファーブル昆虫記』に書いています。日本では井伏鱒二が小説『スガレ追ひ』で「アブラゼミはビールのつまみによい」と書き、かつて長野の園芸試験場では、リンゴの樹液を吸う害虫として捕獲されたセミ幼虫を缶詰に加工・販売していました。身近で捕れる昆虫が食材になると、家の近くの草原や河原はご馳走の宝庫になります。さあ、美味しい食材を狩りに出かけてみませんか?前回の記事 「昆虫は食材だ!身近な虫を捕って食べよう」では、バッタをいただきました。今回は、いまが旬のセミを捕って美味しくいただきます。※このHow toには昆虫を調理する写真が含まれます。苦手な方はご注意ください。
太陽からはいろいろな光が降り注いでいますが、その中には人の目には見えない「紫外線」が含まれています。紫外線と聞くと、日焼けの原因になるのであまり良いイメージがないかもしれませんが、実はその光で照らすと"光る生き物たち"がいるのです。ここでは、誰でも簡単に手に入る「紫外線ライト」を使って、私たちの身の回りや、身近な自然の中にいる生き物を観察する方法を紹介します。思いもよらない生き物の新たな姿に出会えるかもしれません。
春から夏にかけては、生き物の気配がどどどーーと増す季節。家の中にいるなんてもったいない!太陽の照りつける中、そよ風を頬に受けながら、あちこち走り回って、小さな命の不思議を楽しんではいかがでしょう?虫は、僕ら人間と違うところがたくさんある生き物。なんで体がかたいんだろう?頭から生えている触角はなに?6本足でどうやって歩いているんだろう?人間との違いを見つけて、家族や仲間と一緒に、ワイワイ話しながら楽しんじゃえば、なんだか虫も愛おしく見えてきます。それにはまず、本物をつかまえてみなきゃ!ということで、今回は、私むしハカセがとっておきの虫取りの極意と、初夏に出会える虫たちを紹介します。わが子は虫が好きなんだけど、親の私はちょっと…。そんな風に思っている方も安心して楽しめる虫のつかまえ方をお教えします!
みなさんはセミが食べ物とは思わないでしょう。でもセミは、美味しく食べることのできる立派な食材です。成虫をサクッと揚げればエビ風味、丸々太った幼虫の燻製はナッツ味!狩猟採集時代の日常食は昆虫でした。栄養があって、たくさんいて採りやすかったからです。いまでも私たちのDNAには、虫採りの本能が刻み込まれています。昆虫採集の大好きな子どもが多いのはその証拠でしょう。夏には「セミを採って食す『セミ会』」を催すのですが、大人になってそうした狩りの本能に蓋をした人たちが参加します。彼らは幼少にかえり嬉々としてセミを採り、食べ、久しぶりの狩猟に心が解放されて帰っていきます。昆虫食の醍醐味を知ると、山や森へ行かなくても、家の近くの草原や河原はご馳走の宝庫になります。春は小川でヤゴがスイスイ泳ぎ、夏はセミがうるさく、やがて秋の鳴く虫の大合奏が聞こえます。冬には脂がのったざざ虫がザーザー流れる瀬の音を子守唄に眠っています。さあ、みんなで美味しい食材を狩りに出かけてみませんか?四季のある日本ではそれぞれが旬のご馳走がいろいろあります。このHow toでは、まずはじめに美味しい虫たちを紹介したあと、身近な昆虫「バッタ」を例に、狩りをして美味しく調理して食べる方法を紹介します。※このHow toには昆虫を調理する写真が表示されます。苦手な方はご注意ください。
きのこを植物の仲間だと思っている人がいるかもしれませんが、きのこは、カビや酵母と同じ菌類。植物よりも動物に近い生きものです。ですから、光合成をすることができないので、生きていくためには何かを食べなければなりません。きのこは、枯木や枯葉などから生える「腐生菌(ふせいきん)」、生きている植物や動物や菌類から生える「寄生菌(きせいきん)」、植物と一緒につくった、菌根という器官を通じてお互いに栄養のやりとりをする「共生菌(菌根菌=きんこんきん)」と、大きく3つに分けることができます。つまり、きのこが生えている場所は、そのきのこが好きな「食べ物」があるところなのです。今回は、たくさんの種類があるきのこの中でも、生きている虫などにとりついてその虫を栄養にし、結果的には殺してしまう「冬虫夏草」という、ちょっぴり不思議なきのこに注目します。一緒に楽しみましょう。
夏の昆虫採集のド定番と言えば……樹液に集まる虫たち。そもそも、どうして木から樹液が出るのでしょうか? 実は、木は樹液を流したくて流しているのではなく、ある昆虫の仕業によって、仕方なく樹液は流れてしまっているのです。では、そのある昆虫とは誰でしょう?木から樹液が流れ出る秘密を知って、「樹液が出る木を予測する術」を身につければ、雑木林での生き物たちの暮らしをじっくり観察することができます。この夏、親子で友達同士で、樹液酒場に集まる生き物たちに会いに出かけよう!
ウミホタルとは、体長3mm程度の透明で硬い殻と関節をもつ節足動物で、カイミジンコの仲間。日本では、太平洋沿岸で「キレイ・海底が砂地・周りが暗い」という条件がそろった海に多く生息しています。ウミホタルは通常、日中は海底で生息していますが、夜になると活発に海中で捕食活動をします。仲間に危険を知らせるためや求愛行動のため、体から酵素を出し、青白く光ります。そんなウミホタルは、自分で採集して観察することができます。※採集をする時は、必ず大人と一緒に行いましょう。※安全のため、救命用うきわとライフジャケットを準備しましょう。※堤防によっては、立ち入りが禁止されている場所があります。あらかじめ確認しましょう。
ホタルは世界で約2000種類、日本国内では約50種類いると言われています。実は、そのすべてが光るわけではなく、幼虫時代を水辺で過ごすのも多くはありません。そんな中、日本ではゲンジとヘイケの2種類のホタルが、水辺の暗闇に明かりを灯します。今回は、世界的にも珍しい、水辺で光を放つ不思議な虫『ゲンジボタル』の生き方を中心に、ホタルの魅力に触れる方法をご紹介します。写真撮影:三森典彰氏(表紙/STEP3/STEP4)
子どもにも大人にも人気がある昆虫界のアイドル、テントウムシ。テントウムシには、とてもたくさんの種類がいます。小さなもの、大きなもの… 黒いもの、赤いもの、黄色いもの… たくさんの星(紋)があるもの、少しだけ星があるもの、星がないもの… ほかの虫を食べる肉食のもの、植物の葉を食べる草食のもの… などなど。テントウムシについての少しの知識があれば、今まで気づかなかったたくさんの種類に出会うことができます。中には、同じ種類なのにまったく違った姿をしているものや、逆に、違う種類なのにお互いそっくりな姿をしたものもいて、ゲーム感覚で種類調べを楽しむこともできます。さあ、身近に見られる小さな妖精、テントウムシの世界をエンジョイしましょう!(このHowtoは、それぞれのSTEPを違う日におこなうこともできます。)