人類をちょっとワイルドにする自然体験を集めた、体験メディア「WILD MIND GO! GO!」編集部。
自然の中の体験を通して、普段の自分がちょっとワイルドに変わって行く、そんなステキなアイディアを集め毎週皆さんへお届けしています。
日本人なら誰でも一度は拾ったことのあるドングリ。秋の日差しを照り返して光る実はとても魅力的に見えます。もしかしたらドングリに心惹かれるのは、縄文人が食糧にしていたころの記憶が私たちのどこかに残っているからかもしれません。今では食べることの少ないドングリですが、種類を選べばそれほど無理なく料理ができます。近所で拾ったドングリを加工して、先祖たちを養った秋の実りを味わってみましょう。
ドングリ
必要量
殻割り器
1機
ミキサー
1機
薄力粉
必要量
砂糖
必要量
ベーキングパウダー
必要量
卵
1個
バター
必要量
白米
必要量





ドングリとはブナ科の木がつける実のこと。日本に分布するブナ科にはコナラ属、マテバシイ属、クリ属、シイ属、ブナ属があり、それぞれに特徴のある実をつけます。
本州の雑木林ではコナラ属のコナラやクヌギ、寺社林ではシラカシやアラカシ、スダジイ、公園ではマテバシイなどがよく見られます。ドングリだけでは見分けにくい種もあるので、落ちているドングリを見つけたらそれを落とした主の葉っぱの形や枝ぶり、樹皮の質感などをチェック。たくさんの手がかりを照らしていくと、正体にたどりつけるはずです。

ドングリを拾ったらペンチで割って味見してみましょう。はてさて、どんな味がするでしょうか。たいていの場合、薄いナッツ風味を感じた直後に舌先に強い渋みを感じるはずです。ドングリの渋みの正体はタンニン。種類ごとにドングリに含まれるタンニンの濃度は異なり、クヌギやコナラ、シラカシなどは強く、マテバシイやスダジイは少なめです。タンニンを多く含む種のドングリも粉砕して水に晒してデンプンを取り出せば利用可能ですが、そのまま食べるのは困難です。その点でマテバシイとスダジイはアク抜きなしで食べられるので優秀です。
飲み込まない限りタンニンが渋みを感じさせるだけですが、クリやナッツ類にアレルギーがある場合はドングリでもアレルギー反応が出る可能性があります。喫食も味見も避けましょう。




身近なドングリのなかでも、とくにタンニンが少なくて美味しいのがスダジイ。炒るだけで食べることができ、ポリポリとした歯応えと栗を薄くしたような甘味を楽しめます。フライパンで軽く炒るとピシッと音を立てて鬼皮にヒビが入るので、そこから爪で開けて中身を取り出してかじります。軽く塩を振っても美味です。


クリごはんの要領で、シイの実を具にして炊き込みごはんをつくることができます。作り方は簡単。炒って殻を外したスダジイの実を、水を張った白米と一緒に炊き上げるだけ。炊き上がったら塩をパラリと振りかけていただきます。スダジイを使う料理のなかでもとくに美味しく味わえる一品です。





スダジイほどではないにせよ、身近にあって食べやすいドングリがマテバシイ。マテバシイはたくさん成るうえ実も大きいので加工に向いています。マテバシイは鮮度が命。地面に落ちてしばらくすると虫に食われたり殻の内部がカビるので、落ちてすぐのものを集めるのが歩留りを高めるコツです。
拾った実はフライパンで軽く炒って鬼皮の弾力性を奪って割りやすくします。生のままだと渋皮はピッタリと中身に張り付いていますが、炒ると渋皮も簡単に剥がせるようになります。割る際は大型のプライヤーなどを使いますが、子供と作業をするなら梃子の力で割れる殻割り器を自作するとよいでしょう。
割って取り出した中身はミルにかけて粉にして利用します。この粉をサラシに包んで水のなかで揉めば、デンプンが溶出します。デンプンを含んだ液を沈殿させて上澄み液を捨てることを繰り返すと、きれいなデンプンが得られます。もちろん、デンプンを取り出さずにドングリ粉のままでも利用できます。





マテバシイのドングリ粉を使う食物の定番がクッキー。縄文人もドングリ粉からクッキーをつくったと考えられています(しかし、クッキーといっても私たちが想像するそれではなく、砕いたドングリと獣脂や肉を混ぜたと考えられています)。
肉を混ぜるのはちょっと勇気がいるので、私たちは現代的なクッキーをつくりましょう。配合比は以下の通りです(このバランスだと甘味が控えめになるので、好みで砂糖を増量してください)。
ドングリ粉 120g
薄力粉 120g
ベーキングパウダー 小さじ1
砂糖 40g
バター 40g
卵 1個
スダジイの実 適量
粉類と砂糖を合わせてふるいにかけたら、混ざった粉に溶いた全卵を流し入れます。さらに溶かしたバターを加えて捏ね、直径5cmほどの棒状に整えます。冷蔵庫で冷やし固めたら、1cm弱の厚みに切り出し、炒ったスダジイの実を載せてオーブンで焼き上げます。マテバシイは良くも悪くも個性が薄いので、クッキーにするとドングリとは思えないほど違和感なく食べられます。ぜひお試しを!
体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
子供たちと夢中で拾っても、なかなか活用法のないドングリ。たいていは袋や缶にしまっているうちに輝きがなくなり、そのうち虫が出てきて庭の隅に捨てられたりします。しかし、新鮮なドングリは優秀な野生食材として活用できます。野外から炭水化物を得るのは意外にも難しいものですが、ドングリは大量の炭水化物を提供してくれる点が特徴的です。人の身体の維持に役立つ野生の食材、という視点からドングリを見ると、現代でもなかなか魅力的な存在です。