コロナの蔓延をきっかけにキャンプブームが訪れ、去っていきました。中古用品店を覗くとアウトドア用品が山と積まれています。残念なことに、キャンプもまた大量生産・大量消費の流れに取り込まれてしまったようです。「キャンプは人との接触を避けられるレジャーだったからコロナ禍で流行した。接触が解禁されれば、ブームも去る」。そう言ってしまうのは簡単ですが、他者との接触を避けられる遊びはほかにもありました。きっと、過密の回避以外にもたくさんあるレジャーのなかからキャンプが選ばれた理由があったはずです。多くの人がキャンプのなかに「素敵なもの」の気配を感じたものの、それに気づけないまま通りすぎていったのではないでしょうか。その素敵なものの正体とは何か。簡素なキャンプのなかに、そのヒントが隠されています。
マッチやライターが登場する以前に使われていた発火法のひとつが火花法。火打石と火打金を打ち合わせて火花を飛ばし、その火花から火種をつくって火をおこします。ヨーロッパでは1万年ほど前から行われており、日本でも江戸時代にはよく行われる発火法でした。火花法は今では馴染みが薄くなりましたが、実は身近な素材で再現可能です。河原で拾った石と生活の中から出る廃材で火をおこしてみましょう。
日常の生活空間や街は「人間の都合でデザインされた世界」といえます。日々の社会生活のなかで、誰もがいろんな人の都合に左右され、ときにはぶつかり合いながら懸命に生きていますが、まるで身動きが取れなくなったり、命を奪われることは稀です。人の世界は厳しいながらも手心や情けがあります。そんな世界の対極にあるのが川です。川の流れはどこまでもパワフルで、一歩川の中に入ったら、そこから先は川の流れに従うしかありません。流れに抗おうとすればするほど、体力を消耗していきます。水の世界には人の世界で働く「容赦」がありません。陸上と違って、川のなかでは自分の思い通りに動けません。水のなかでやるべくことは、力みを捨て、流れを感じとり、流れに働く力に寄り添うこと。川の流れは決して一様ではありません。1本の川のなかには、いく筋もの向きと力が違う流れが走っています。そのなかから乗るべき流れを見つけ出し、それをつかめば少ない力で水の上を移動できます。流れを読む力を育むのに最適の道具がリバーボードです。浮力と高い操作性を備えたリバーボードは、水の流れを体で学ぶのに最適の道具です。リバーボードで川へ出て、水の流れを体感し、それを乗りこなしてみましょう。
冒険家の遠征をサポートしたり、辺境へのツアーを催行するうちに、いつしか子供たちを誘ってちょっとハードな旅をするようになりました。親元を離れて自分の体と思考をフル回転させると、子供は自分の持っている力を自覚し、使いこなすようになります。その瞬間に立ち会うのは大きな喜びです。幾人もの冒険家と交わり、子供たちと旅をするなかで、親にしかできないこと、親以外の大人にしかできないこと、同世代の子供たち同士にしかできないことが見えてきました。どうしたら外の世界へと踏み出す力を子供に贈れるのか。そのヒントをお裾分けしたいと思います。
デジタルカメラを使った動画撮影が一般的になり、市場に出まわるデジタルカメラの多くにスローモーション撮影の機能が搭載されるようになりました。印象的な動画制作のために使われることの多いスローモーションですが、この機能でぜひのぞいてほしいのが生き物たちの動く様子です。スローモーションにすると肉眼では追いかけられない彼らの生態が見えてくるのです。身近な生物をスローモーション撮影して、秘められた生態や生活をのぞいてみましょう。
一般の遊漁者に許される漁法のなかでも、とくに効率が高いのが投網。使える状況は限定されるものの、地形や水位とマッチすれば、ほんの数投でその日のタンパク源を調達できます。一度身につければ、その技術は一生もの。きれいな川や海の近くに住んでいるなら、ぜひ覚えておきたい生活技術です。
サンドイッチの味付けやウインナーの付け合わせに使われる粒マスタードはペーストの和カラシよりも風味が強く、食材をひと味もふた味も美味しくします。お店では小瓶がそれなりの価格で売られていますが、実は自作するのはそれほど難しくありません。カラシナが種子をつける初夏、河川敷に生えた野生の株から粒マスタードをつくってみましょう。
私が長く通いつめているのが、鳥取県の菜種五島の周辺です。このエリアは地形の変化に富み、深く切り込んだ入江や海蝕洞を探検するようなツーリングを楽しめます。菜種五島を含むこの一帯は地質学的にも価値が高く、ユネスコから「山陰海岸ジオパーク」として認定されてもいます。私はこの海を最初はダイビングで楽しんでいましたが、 10年前に新たな道具としてSUPが加わったことで遊び方が一変しました。水の上を歩くように進むSUPは異次元の自然体験で、それでいてマスクをつけて飛び込めば、海中の風景や生き物を見ることができます。SUPを手に入れたことで、総合的にこの海を楽しめるようになりました。船でも徒歩でもたどれない海岸線を漕ぎ、ときに海中をのぞき、波があれば乗るSUPのツーリングは、日本の海を楽しむのにぴったりの遊びです。
仕事がら、あちこちの水辺に出かけてはタモをふるいますが、年を追うごとに日本の水辺の環境が悪化しているのを感じます。その原因のひとつが、もともとはその地域にいなかった生きもの(=外来生物)の侵入です。そのまま野外に外来生物を置き続ければ、その地域の固有の自然が損なわれてしまいます。しかし、外来生物にも命があります。もとあった自然に対して外来生物が及ぼす影響と、個々の外来生物の命の重さはどのように考えればよいのでしょうか。また、子供たちに環境の保全と命の尊重をどのように伝えればよいのでしょうか。「地域の自然を守りたい」と市民が志したとき、外来生物をどのように扱うべきか。さまざまな視点から考えてみましょう。
仕事の合間にちょっと休憩……。そんな場面で日本人がいちばん飲んでいる飲料はおそらくお茶でしょう。現代では静岡や福岡、鹿児島といった有名産地でつくられたお茶を飲むのが一般的ですが、数十年前まで、お茶は庭先のチャノキから若葉を摘んで自宅でつくるものでした。今でも、郊外や田園地帯の生垣にはそのころの名残のチャノキが使われています。そんな木から若葉を摘んで緑茶と紅茶をつくってみましょう。
自分の生活に欠かせない嗜好品を問われたとき、多くの人がコーヒーをあげるでしょう。コーヒーはコーヒーノキの種子を焙煎して砕いた粉から、成分を抽出した飲料ですが、このコーヒーの種子は、生のままでは私たちの知るコーヒーの香りや味は一切ありません。しかし、「焙煎」という処理を加えると、生豆にはない豊かな味や香りが引き出され、美味しい飲料に変化します。焙煎という調理方法は食材にどんな変化を与えるのでしょうか。コーヒーの焙煎と聞くと、大きな焙煎機を使ってプロが厳密な温度管理のもとに行うものが思い浮かびますが、焙煎自体は家庭にある機材にいくつかの道具を買い足すだけで楽しめます。キャンプやピクニックに出かけたときに、そこでコーヒーを焙煎してみませんか?
2024年3月、PRO TREKから「生命を育む水」をテーマにした新モデルが発売されました。何を隠そう、私が勤務するNGO、日本自然保護協会とのコラボレーションモデルです。このモデルのテーマとなったのは人の生活に欠かせない「水」。豊かな自然が生み出す「最初の一滴」と都市で暮らすみなさんのつながりについて解説します。╲生命を育む水をテーマにした、「日本自然保護協会」コラボレーションモデル/『PRW-61NJ』PRO TREKは日本自然保護協会とのコラボレーションを通じて、自然の美しさとそれを守る大切さを発信しています。今回のモデルは、「生命を育む水」がテーマ。利根川の源流「みなかみ」エリアの自然をモチーフに、水のライフサイクルをホワイト×ブルーのアクセントカラーで表現。地域のシンボルであるイヌワシをデザインに落とし込みました。さらに、再生素材やバイオマスプラスチックを採用するなど、マテリアルでも自然との共生を表現しています。
ここ数年で、肉や魚の身は新鮮なものだけではなく、数日寝かして熟成させたものもおいしいことが知られ始めました。また、お寿司屋さんでも仕入れたばかりの鮮度の高いお魚をすぐに出さずに熟成させた魚を出すお店もあります。おいしさは主観に大きく左右されます。鮮度が高くて身が締まり、歯応えのある鮮やかな色味のものがおいしい、と感じる人もいれば、熟成が進んでやや柔らかくなった甘い身がおいしいと感じる人もいます。その中間を好む人もいるでしょう。一度に食べきれない魚を手に入れたときは、魚の熟成を試してみるチャンス。釣りたてから数日かけて食べ比べれば、自分がどんな歯触りと味を好むのか知ることができます。魚の熟成の仕組みと熟成させるための技術を知り、味の変化を五感で感じ取ってみましょう。
外国の生活事情を紹介するテレビ番組には、よくニワトリの姿が映っている。日本でも半世紀ほど溯れば、人の生活圏でニワトリの姿を見るのは、珍しいことではなかった。歴史的には3600~5000年程前から人間とニワトリは一緒に暮らしてきたらしい。ともに生活することで、ニワトリにも人間にもいいことがある。そのためにニワトリと人間の生活は近づいていったのではないかと思う。人間にとっては、卵や肉などの動物性タンパク質が比較的簡単に手に入ること。そして単純に楽しいこと。ニワトリにとっては、日々の食べ物が手に入り、安全に繁殖生活を営めること。ニワトリが人との暮らしを楽しいと感じているかはよくわからない。ときどき、卵を取られたり、食べられてしまったりするのは、些細な損失として許容されているように思う。そしてこれらの「いいこと」はいまでも双方にとって有効である。
野生動物の市街への進出がニュースになる昨今。数十年前と比べると、都市近郊の身近な野山にも大型の哺乳類が姿を見せるようになりました。しかし、ぼんやり風景を見ているだけではその存在に気づけません。人の目を避ける野生動物の気配を感じ取るにはちょっとしたコツと注意力が必要なのです。人間界に顔を出した哺乳類たちは、さまざまな痕跡を残します。その痕跡を「フィールドサイン」と呼びます。哺乳類が残したフィールドサインを読み解いて、それを残した主を探し当ててみましょう。