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段ボール紙で機織り機をつくって糸から布をつくってみよう

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トミザワタクヤ

TokyoCottonVillage 代表
1本の糸から布を生み出す

人は植物や昆虫、獣から糸を取って利用してきました。細く長い1本の糸を、広がりのある布にするのが織りと編みの技術。糸を縦横に組み合わせてはじめて、布として利用できるようになります。織りの技術のなかでも最もシンプルなのが平織りです。経糸と緯糸を交互に織るこの方法で、布の原点を感じてみましょう。布や洋服はすべて、糸の集合体ということを感じられます。

READY
準備するもの
  • 手紡ぎ糸か太めの糸

    必要量

  • 割り箸

    2膳

  • 硬めの段ボール紙

    1枚

  • 1個

  • 爪楊枝

    1本

  • シャトル(段ボール紙で作成)

    1本

  • 糸巻(段ボール紙で作成)

    2~3個

  • カッター

    1本

  • カッターマット

    1枚

  • 定規

    1本

  • 鉛筆

    1本

  • ハサミ

    1本

  • セロハンテープ 

    1巻

STEP 1

「撚り止め」と「綛(かせ)上げ」をする

  • 手紡ぎ糸を沸騰したお湯に入れる
  • 落とし蓋で沈め30分茹でる
  • 長い板に巻き取り綛にする
  • 綛にテンションをかけながら乾かす
  • 乾いた糸を段ボールに巻き取る

綿糸の手紡ぎをした場合、織る前に「撚り止め」と「綛(かせ)上げ」の工程が必要です。これは紡いだ後の処理の説明なので、市販の糸を購入される方は、STEP2の織り機づくりから参照してください。

手紡ぎした糸は、糸自体に捩れる力が働いているため、この力を取り去るために「撚り止め」と「綛上げ」を行います。今回は特別な道具を使用せずに、家にあるもので代用できる方法を紹介します。

まずはスピンドルで紡いだ手紡ぎ糸をお湯で茹でます。茹でても問題ない割り箸などに糸を巻き取り、沸騰したお湯で糸が少なければ20分程度、多い場合は60分ほど茹でます。今回の写真程度の量であれば30分でよいでしょう。

天然繊維には油分があってなかなか沈みません。落し蓋で沈め、お湯の蒸発を避けるために鍋に蓋をして少しだけ開けておきます。油分がにじみ出てくるのでお湯は徐々に茶色に変化します。茹で上がったらタオルの上に置いて、軽く押してタオルドライをします。

糸を長めの板状のモノに巻きつけ、大きな輪状にまとめたものが綛(かせ。巻き取って輪形に結束した糸)です。巻き取った綛には、下部におもりになるものをぶら下げて乾燥させると糸が真っ直ぐになります。糸が乾いたら、ダンボールで作った糸巻に巻き取りましょう。この際、椅子の背もたれ等、綛の長さ・大きさにあったものを使用すると途中で絡まることなく綺麗に巻き取ることができます。今回は茹で上がってから綛にまとめましたが、初めに綛を作ってから茹でても大丈夫です。

この後、手紡ぎ糸には糸の毛羽立ちを抑え、緯糸の滑りを良くする「しょうふ糊」などを施します。滑りを良くすることで経糸が切れることを防ぐのですが、今回は段ボール織りの小さな作品になりますので割愛します。

STEP 2

織り機をつくる

  • 段ボールを切り出しスリットの位置をマーク
  • ハサミで切れ込みを入れる
  • シャトルを切り出す
  • シャトル末端をテープで処理
  • 残材から糸巻きもつくる

つくるのは織り機本体と緯糸を巻きつけるシャトルの2つ。段ボールは厚くて強いものがよいので、今回は2Lのペットボトル飲料が6本入っている箱を使用しました(重たいものを入れる箱は丈夫にできています)。経糸が多いほど、きめ細かな布ができますが、段ボール織りの場合は、緯糸を通す作業を全て手で行うため、今回は経糸25本程度にしておきましょう。

今回織り上げる布は120×120mmなので、織り機本体の寸法はふたまわり大きい240×200mmとしました。短辺の両サイドから40mmの余白をとり、残る120mmを5mm刻みでマーキングして切れ目を入れます。この切れ目が経糸を保持するスリットになります(制作写真は画角の都合で90°転倒しています)。

緯糸を巻きつけるシャトルは180×30mmとしました。両端に糸を保持するための凹みをつくり、セロハンテープで端を補強すると経糸にくぐらせるときにスムーズです。残った段ボールから糸巻きもつくっておきましょう。筒状のものに緯糸を巻いてそれを棒状のものに挿すと、糸巻がクルクル回ってシャトルへの巻き取りが容易になります。

STEP 3

経糸をセットする

  • いちばん端の切れ込みの裏側で糸を固定
  • 経糸を往復させて張っていく?
  • 表側に25本の経糸を張った
  • 末端は裏側でテープで留める

経糸を取り、糸の末端をいちばん端の切れ込みにかけ、裏側でテープで固定します。そこから上下の切れ込みを往復するようにして経糸を張っていきます。最初に経糸をかける切れ込みは上左端、上右端、下左端、下右端の4か所切れ込みのどこでも大丈夫です。経糸のかけ方は、上から下まで糸を張ったら切れ込みにかけて裏側にまわし、隣の切れ込みから再度表側に糸を出して張るのを繰り返します。最後の切れ込みまで行ったら全ての切れ込みに糸が入っているかどうか確認して裏側で糸をテープで留めて、糸を切ります。

STEP 4

機織りの準備をする

  • 奇数糸、偶数糸で上下に分ける
  • 端から端まで箸を通す
  • 箸の隙間をシャトルが通る
  • シャトルに緯糸を巻く
  • シャトルが厚くなりすぎないように

セットした経糸に割り箸を入れていきます。その際、奇数糸が上に、偶数糸が下に来るように上下交互に差し入れていきます。次に段ボール紙で作ったシャトルに緯糸を巻いていきます。ここで重要なのは、緯糸を巻いたシャトルを厚く(高く)しないこと。緯糸をたくさん巻いて厚く(高く)なったシャトルは、経糸間を通しにくく、無理に通すと経糸が切れてしまう恐れがあるからです。

STEP 5

機織りを開始

  • 往路は箸の隙間を通す
  • 復路は爪楊枝で偶数糸をすくいシャトルを通す
  • 1往復目では末端を内側に織り込んでおく
  • 2往復するたびに櫛で寄せる
  • 経糸を絞らないように注意しつつ織る

経糸間に通した割り箸を立てて隙間をつくり、その隙間にシャトルに巻いた緯糸を入れていきます。隙間が空いているので容易に通るはずです。帰りは、割り箸を横に倒してシャトルで偶数糸の経糸を一本ずつすくいながら戻ってきます。決して力任せに通さずに、経糸には優しく接してください。一度目の往復ができたら、緯糸の末端を往路と復路の間に通し、経糸に3回から4回ほど縫うようにしてからめておきます。この処理をしないとほつれやすくなります。

この織り方では、割り箸でつくる隙間があるため往路は通しやすく復路はちょっと面倒になります。行きはよいよい帰りは……ですね。これを繰り返して織り進んでいきますが、気をつけたいのが左端、右端での折り返しです。両端では少しだけ余裕をもたせないと、緯糸が経糸を絞るような力が働き、布全体の横幅にくびれができてしまいます。そして、2往復程度するごとに横糸を櫛(コーム)で軽く手前に優しく寄せて間隔を密にしておきます。機織りの音「トントン」というところです。

STEP 6

緯糸を継ぎ足す

  • 糸の末端は布の中央近くで終える
  • 2本どりすると風合いが変わる
  • 残った末端。最後に切って処理する

何往復かするとシャトルに巻いた緯糸がなくなります。緯糸の末端は、経糸の中間ぐらいから出すようにしましょう。空になったシャトルには新たに緯糸を巻いていきます。この際、緯糸を2本取りにすると織りの表情が変わったり、織りの進みが早まったりしますので、試してみても良いでしょう。新たな緯糸で再開するときも、糸の端は経糸の中間から出しておきます。緯糸を補充するたびに経糸の途中から出した糸が増えていきますが、この糸は最後に全て切るので、緯糸を継ぎ足した形跡はなくなります。

STEP 7

織りあげて末端を処理

  • 織りあげたら経糸を切って処理する
  • 緯糸の余分を切ったら完成

今回は布の大きさを120×120mmとしました。段ボール織りでは、復路で緯糸を戻す際に経糸を切らないようにケアしながら戻るので、横幅としてはこれぐらいのサイズがちょうど良いでしょう。織り上がったら、経糸の上下を切って織り機から外しますが、いきなり全てを切り離してしまうと、ばらけて始末がつけにくくなります。まず経糸を端から4本切り、それを2本ずつに分けてその束を結び合わせてほつれ留めとします(経糸は25本あるので、4本を結束する始末をつけていくと最後の組だけ5本がワンセットになります)。織り機から外したら、最後に布からちょろりと出ている緯糸の末端を切って処理して完成です。

STEP 8

『やった!レポ』に投稿しよう

体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。

MATOME
まとめ

段ボール織り機でつくれる布は、単純で小さな布かもしれませんが、これが機織りの基本(=全て)となります。人は必要に応じて他にもさまざまな織り方、編み方を工夫して布の表情や感触を変えてきました。平織りを体験すると、なぜ人類がこれまでにさまざまな織りや編みを生み出したのかを気になるはずです。そして、当たり前に身につける衣料品が技術と資源の結晶であることにも驚くのではないでしょうか。天然繊維の原材料は、太陽と土壌と雨からできています。私たちは、人類には作りだせない命を服として身につけています。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性4
5知性
3感性
アクティビティ
つくる
環境
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
小学生高学年以上
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