旅をしながら十勝に暮らす編集デザインチーム(山本 学・山本えり奈)。あいうえお表やカレンダー、すごろくやイラストマップなど、日々の楽しさをデザインする作品をつくっています。「ヤムヤム旅新聞」にて、旅やローカルの楽しみ方を発信中。http://www.tyy.co.jp
雪国に古くから伝わる「かんじき」は、柔らかい雪の上を歩くことのできる便利な道具。形や素材などいろいろなタイプがあり、冬の山仕事や登山などで使われてきました。輪っかになった部分により、雪面にかかる体重が分散され、雪面からの浮力が得られて沈み込みが少なくなり、雪に足がズボッと埋もれることなく歩けるのです。
今回は、厳冬の北海道・十勝から、北海道のアイヌの民具として伝わる「かんじき」の作り方を参考にしながら、身近な自然の素材を使ったかんじきを作ります。そして、できあがったかんじきを履いて、ふかふかの雪の上を歩いてみます。冬のアウトドア遊びとしても楽しめるので、ぜひ挑戦してみてください。
コクワ、ヤマグワなど植物のつる
麻紐
50cm × 4本
針金(太さ 0.7mm位~)
50cm × 8本
綿ロープ(太さ 15mm)
3m × 4本
綿ロープ(太さ 15mm)
4m x 2本
ナイフ
軍手
北海道ではどんなかんじきが使われてきたのでしょう。参考資料をあたると、アイヌの人々に伝わる民具にその説明がありました。
柔らかい雪の上を歩くための軟雪用かんじきは、アイヌ語で「テシマ」(「テシ=滑る、マ=泳ぐ」)と呼ばれ、アイヌの人々はかんじきで雪の上を歩くことを「滑りながら泳ぐ」と表現していたそうです(萱野 1978)。厳冬期の柔らかい雪の上を歩きまわるのに重宝された道具でした。素材には、北海道に自生する「コクワ(サルナシ)」や「ヤマグワ」などのつるが使われていたようです。
ここでも、素材となるつるを集めてみましょう。コクワのつる(サルナシ)は、北海道から九州まで広く分布し、概ね標高600m以上の山間部に自生します。北海道では、平野にも自生するので比較的手に入りやすい素材です。野山を歩いて探してみたいところですが、今回は庭にコクワ棚のある友人から分けてもらい、つるを調達することができました。
コクワのつるを入手するのが難しい場合は、ぶどうのつるや、藤のつるでも作れます。身近にある自然の素材を探してみましょう。
輪をつくるために力を加えて曲げるため、つるのような丈夫でしなやかな素材が加工に適しています。
ここでは、集めた素材で、かんじきのパーツを作ります。つるは皮をむき、80cm位の長さにカットし、同じものを4本用意します。次に、つるをU字に曲げて、開かないように麻紐などで結び固定します。つるが硬い場合は、一晩水に浸けておくとやわらかくなり、曲げやすくなります。
U字に曲げたつるを、前後に組み合わせて、楕円形のかんじきを作ります。まず、連結部分に針金を巻いて固定します。1足につき4ヵ所、2足で合計8ヵ所を固定します。次に、その上からロープ(3mのもの)をぐるぐるとまいてしっかり結びつけ、そのままロープを左右に渡して、ブーツをのせる土台になる「足のせ」を作ります。足のせは、1足につき前後2カ所、2足で合計4カ所作ります。
足のせは、実際に履いているブーツを合わせながら作ると、位置など確認しながら作業ができます。
かんじきが完成したら、実際にブーツに結びつけてみましょう。ここで履いているスノーブーツは、「Sorel(ソレル)」の「ウィンターカーニバル」( http://www.sorel.jp/items/NL1495/ )。丈夫な作りで、-32°Cまで対応し、雪の中でも安心して履くことがでる、雪国の頼もしい味方です。自作かんじきと組み合わせると、深い雪の上でも無敵になります。
ここでは、新しいロープ(4mのもの)を使います。はじめにロープを半分に折り曲げます。次に、折れ曲がった先の輪っかになった部分をつま先に引っ掛け、ロープの両端を足のせの下をくぐらせて後ろにまわします(1)。次に、かかとの上あたりでクロスさせて、そのまま足首にぐるぐると巻きつけて、しっかりと固定します(2)。
ロープの結びが弱いと、かんじきが足から外れてしまいます。ブーツに2重3重に巻くなど、外れないよう、いろいろと工夫してみましょう。民具に伝わる知恵も参考にしてみてください。
いよいよ、かんじきを装着!積ったばかりの新雪の上を歩いてみましょう。この時の積雪は60cmほど。かんじきなしでは太ももまで埋まってしまい、とても歩くことのできない深さです。
かんじきを履いて、数歩足を進めてみると… すぐにその効果を実感できます。雪の上に足をのせると、ふくらはぎくらいまでは沈みますが、それ以上は沈まずに歩くことができます!
植物のつるを輪っかにした簡易的なかんじきでも、十分に機能を発揮してくれます。自然の雪の柔らかさをしっかりと味わいながら、スイスイ歩いてみましょう。
自分で作ったかんじきで雪の上を歩けたら、写真を撮って『やった!レポ』に投稿してみましょう。見つけた工夫や、感じたことがあれば、コメントも添えてみんなにシェアしましょう。
自分の作ったかんじきを履いて、誰の足跡もない雪原を一歩ずつ進んでいく。通常だと、ズボッと埋もれてしまうところを、かんじきを履くことでスイスイ歩けてしまう不思議な浮遊感を体感し、自然の雪の柔らかさをしっかりと味わってください。また、動物の足跡を探してみたり、冬ごもりの植物に触れてみたり、いろいろな発見があるはずです。
かんじき作りについては、植物のつるを使うほかにも、身近にあるいろいろな材料を使ってアレンジしてみてもいいですね。ぜひみなさんも手作りかんじきで、雪の上を歩いてみてください!
スノーブーツ: Sorel(ソレル)「ウィンターカーニバル」 http://www.sorel.jp/items/NL1495/
参考文献:萱野茂 1978「アイヌの民具」東京:すずさわ書店