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2019.02.081309 views

イヌイットのように雪でイグルーを作ろう

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米山 悟

カメラマン/冒険登山愛好家
雪を知り寒さをしのぐスキルを身につけよう

北米の北極圏、地球上で最も寒さの厳しい地域に住む先住民族「イヌイット」が、古くから活用している「イグルー(igloo)」は、雪をブロック状にカットして積み上げて作るドーム型簡易住居。イグルーの中に入ってみると、そこは驚くほど静かで、想像以上に暖かく快適に過ごせる不思議な空間です。

森林限界より北の地域では、木材などは手に入らないため、雪は唯一で豊富な建築資材。魚やアザラシなどを捕りながら、定期的に移動し生活を続ける彼らには、時間や手間をかけずに周りにある雪で建てられるイグルーは、過酷な環境に順応するために編み出した手法のひとつ。

そんな便利なイグルーは、同じように過酷な環境に追いやられる雪山登山などでも、悪天候の際にテントよりも頼りになるシェルターとして役に立ちます。周りの雪を使って作れるため、テント無しで軽量の長期山行ができます。また怪我などのトラブルでメンバーがその場から動けなくなった時なども役立ちます。気象遭難、低体温症で疲労凍死という恐れがなくなり、大きな自信になります。また何より、自然の中で、自然の素材を使って作ることは、その素材と向き合い、観察し、特徴や性質を深く理解することに繋がります。

このHOW TOでは、イヌイットの作り方とは異なりますが、これまで30年あまりの雪山登山で、100以上のイグルーを作って習得した、誰でも簡単に作れるイグルーの作り方を紹介します。一度身につけておけば、いざという時に命を守る、確実で力強い生存技術になります。「雪山登山などは行わない…」という方でも、積雪が50cmを超え、ある程度気温が低い地域であれば、簡単に作ることができるので、挑戦してみてはいかがでしょう。

※近年、イヌイットの生活も定住化が進んでおり、イグルーに住む人々も減少しているようです。

READY
準備するもの
  • ノコギリ(剪定用・刃渡り30~40cm程度)

  • スコップ(なるべく平らなもの)

  • ゴム手袋(防寒テスレム ボア入り)

  • 防寒装備

STEP 1

必要な道具を準備する

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はじめに、イグルー作りには欠かせない3つの道具を準備します。

ノコギリ:ブロックを切り出すために欠かせない、刃渡り30~40cmのノコギリ(剪定用)。刃渡りは長いほどブロックの切り出しが楽になります。スノーソーは、氷を切るためのもので、ここで作るイグルーでは、氷のように硬い雪を切ることはないので、汎用性にも優れた(ヤブが出たら、枝も切れる)ノコギリがおすすめです。

スコップ:まっすぐなブロックを切り出すために、全体の形がなるべく平らなものが望ましいです。登山に持っていくのであれば、ジュラルミン製で組み立て式の軽いものがおすすめ。

ゴム手袋:透湿性があって蒸れにくく、防水性能の高い防寒テムレス(ボア入り)がおすすめです。インターネットやワークマンでも購入できます。薄手の手袋の上につけられるように、少し大きめのサイズが良いです。

そのほか、イグルー作りは、雪のなか気温の低いところで行うので、スキーや雪山登山を行うのと同様に、しっかりとした防寒装備で行ってください。

STEP 2

雪質を調べる

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    イグルーに適した雪質
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    雪の中へ踏み入って、雪質を調べる

イグルーは、積雪が50cmを超えるところであれば、どこでも作ることができます。ただし、雪質によって、作りやすさや効率が随分と異なるので、適切な雪の層を探し当てることが重要になります。

イグルーを作りやすい雪質は、程よく締まっていて、密度の低い雪の層、仮に「かるかた雪」と呼んでみます。風で叩かれてそこそこ硬いけど、氷のようには重くない雪。ふわふわの新雪を払いのけた下の層などにもあります。こうした雪は、気温が0度以上に上がらない、標高が高く、風が強いところほど容易に見つかります。雪にノコギリの刃を入れると、すっと通り抜けて、良いブロックが取れます。

イグルーに向いていないのは、ふわふわの柔らかい新雪「ふわ雪」や、温度が高く少し溶けて、重く柔らかい雪「シャビ雪」などです。また、ノコギリでギコギコしないと切れないような硬くて重い雪「おも雪」は、1段目・2段目の土台にはいいけれど、3段目以上に積むと安定が悪く滑り落ちます。

まずは、雪が積もっているところへ出かけたら、足で踏み入って、雪質を調べます。写真は、少し標高が高く、積雪が1m以上あるところです。

POINT

※スキー場や公園などの管理された施設では、安全を守る為にルールが設けられています。実施する前には、必ず管理者に問い合わせましょう。
※雪が積もっていると地形がわかりにくくなります。踏み固められていない雪の中へ入る際は、崖や沢がないかなど、必ず地形を確認してから踏み入るようにしましょう。
※雪山などでは雪崩の危険性も高くなります。危険な場所では絶対に行わないようにしましょう。
※中学生以下のお子さんは、必ず大人と一緒に行いましょう。
※ノコギリ(刃物)を扱います。怪我をしない為にも必ず手袋をはめて作業を行いましょう。

STEP 3

場所を決める

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    少し傾斜のあるところ

良質の「かるかた雪」が見つかったら、イグルーを作る場所を決めます。イグルー作りに適した場所は、風によって雪が吹き溜まりになり、周囲より少し小高くなっている「雪庇(せっぴ)」のようなところ。また、平地よりも少し傾斜のあるところが最適です。

吹き溜まりになっている場所は堆雪量が多いので、下の雪が適度に圧縮され、良い「かるかた雪」にありつけます。傾斜がある方が良いのは、入口を斜面側に作ると、最後にイグルーの中に余った雪をかき出す作業が楽になります。

MATOME
まとめ

雪の状態や性質は、実に多様です!天候や気温によっても異なり、それを表す適切な単語もありません。一度イグルーを作っただけでも「あの雪は作りやすい・あの雪はダメだ!」と、感じてもらえると思います。

極寒の地で雪とともに生きてきたイヌイットには、色々な雪を表す言葉があると言われています。それは、雪の状態によって、イグルーの作りやすさ、ソリの滑りやすさ、歩くときの潜り具合など、暮らしにとっての雪の性質がさまざまな言葉を必要としたのかもしれません。言葉はそれを共有する人があってはじめて流通するもの。ここでは、私が普段使っている言葉「かるかた雪」などで紹介しましたが、このような言葉があると、説明も早いかもしれません。

また、イグルーを作ると、足で踏みしめた雪の音、ノコギリで切り込んだ雪の触感、切り出した雪の断面の縞模様など、雪と向き合うことになります。縞模様と粒の形からは、初雪からそれまでの積雪と気温変化の履歴を読み取ることができ、雪崩の滑り面となる層もわかりますし、雪の下では凍り付きもせず案外さまざまな植物が眠っていることも知ります。それまで雪の上で眺めているだけではわからなかったものが見えるようになります。

皆さんも、イグルー作りを体験し、雪に対する解像度を高め、イヌイットの感覚に想いを馳せてみてはいかがでしょう。

※手軽に体験してみたい方におすすめイベント
雪国体験イベント「かまくらぶ」石打丸山スキー場(新潟県南魚沼市)
http://ishiuchi.or.jp/topics/27669
実際にイグルーを作るとなると環境や装備を整えるのも大変という方には、イグルー作りが体験できるイベントなどもあるので、参加されてみてはいかがでしょう。石打丸山スキー場では、1~3月の毎週日曜日に、特殊なツールを使ってイグルーを作って楽しむ体験イベントが開催されています。

※撮影協力
石打丸山スキー場(新潟県南魚沼市) http://ishiuchi.or.jp
今回は、石打丸山スキー場様にご協力いただき、許可を得て撮影を行いました。

※参考文献
「冒険登山のすすめ: 最低限の装備で自然を楽しむ(著:米山 悟 出版: 筑摩書房)」
https://www.amazon.co.jp/dp/4480689656

GROW CHART
成長スコアチャート
野性5
5知性
4感性
アクティビティ
つくる
環境
山 ・ 森 ・ 街 ・ 田畑
季節
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
小学校低学年以上
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