人類をちょっとワイルドにする自然体験を集めた、体験メディア「WILD MIND GO! GO!」編集部。
自然の中の体験を通して、普段の自分がちょっとワイルドに変わって行く、そんなステキなアイディアを集め毎週皆さんへお届けしています。
近年の国際情勢の不安定化は、日本が海外からのさまざまな物資に支えられていることを浮き彫りにしました。石油、レアアース、肥料、食糧……。現代の暮らしは、国際的な協調なしには営めません。しかし、鎖国の時代にも日本人は生活を営み、生きながらえてきました。その気になれば、日本の国土にあるものだけでも生活は成り立つはずです。もちろん、当時よりも日本の人口は格段に増え、自然界の生産力は衰えています。そのかわり、科学が発達しました。進んだ化学と知識を駆使して自然界の生産力を生かしながら生活をつくると、それはいったいどんな暮らしになるでしょうか。ライフラインが途絶したときに個人では何ができるのでしょうか。WILD MIND GO!GO!の過去の記事からそのエッセンスを集めてみましょう。



「生活必需品」とひと口に言っても、快適さを求めればどこまでも際限なく膨らんでいきます。衣食住だけではなくエアコンや車、家をそれに含める人もいるでしょう。大きくするのはキリがないので、最小単位を考えてみます。起点となるのは人体。生身の自身を生かし続けるには何が必要か考えてみましょう。
ヒントになるのは災害への備えです。生活を支えるインフラが壊れたときに「何があれば生きながらえられるか」を考える。もっといえば「何を欠かすと死んでしまうか」を考えると、生存のラインが明確になります。
サバイバル的状況で最も重要視されるのは体温の維持です。体温が維持できれば、人はすぐには死にません。体温を適切に保つ衣類とシェルターの確保が第一です。その次が水と食料。これらを安定的に確保できれば人は生命を維持できます。体温の維持と基本的な補給については以下の記事で解説しています。
「保温」と「補給」を意識して、防災キャンプをはじめよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/201
体温を維持できれば、数十時間は命が確保されます。体温の維持の次に必要なのが水。水を確保できれば、人は数日間生きられます。徒歩や自転車でアクセスできる距離に、水源はあるでしょうか? 安全な水の調達については、以下の記事が参考になります。
街なかにもある水源「湧水」を探しに行こう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/325
井戸探検!地形と地下水の行方を探ってみよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/222





水の確保の次に必要なのが食料の調達です。食料を自力で得る方法は大きく分けてふたつ。「狩猟採集」と「栽培」と「飼養」です。狩猟採集とひと口に言っても、その対象は庭や河川敷での摘み草や魚釣りのようなすぐに始められるものから、大型の哺乳類の狩猟までさまざま。場合によっては昆虫も獲物になりえます。
採集によってタンパク質を賄うのは難しい、と感じるかもしれませんが、生活圏に海山川があって、投網や罠猟などのいくつかの採集技術を身につければ、それほど難しくはありません。
生物多様性を食べる。野生食材を採って味わおう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/273
身近な水辺で食料を得る!生活技術としての投網をマスターしよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/291
昆虫は食材だ!身近な虫を採って食べよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/210
ザリガニは食材だ! 湧水で獲ったザリガニを食べよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/168
秋の河口で「モクズガニ」を釣ろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/55
動物のサインを読んで裏山の自然から肉を得よう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/307



タンパク質に比べて、意外と手に入れにくいのがデンプンと糖。これらは脳のエネルギー源になるので身体に欠かせませんが、自然界から必要量を得るのが少々難しい栄養素です。大量に入手するチャンスは晩秋。ブナ科の木々がドングリを落としたら、それらを集めて砕いて水にさらすことでデンプンを得られます。ドングリの盛期から少しくだった時期には、クズの根を掘り上げてこれからもデンプンを得ることができます。
デンプンと比べると、糖を得るのはだいぶ簡単です。その供給源はニホンミツバチ。庭先でニホンミツバチを飼えば、ひとつの巣箱から年間5kgから10kgの蜂蜜を得られます。
ドングリからデンプンをとって「ドングリもち」をつくろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/51
葛粉を取り、芽と花を食べ、繊維を取る。美味しい厄介者「クズ」を楽しむ
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/302
ミツバチを飼って生き物の営みに加わってみよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/305





魚や鳥獣、デンプンや糖と比べると採集のハードルが低いのが山菜や食べられる野草。高原に出かけなくても、食べられる植物は身近な場所に生えています。ドクダミ、カラシナ、そのほかのアブラナ科の野草などは採集しやすく、食べやすくておいしい野草の筆頭。山芋(ヤマノイモや野生化したナガイモ)も都市近郊から低山まで広く分布しています。春に大量に収穫できるタケノコやそれを使ったメンマは、保存食として備蓄することもできます。
「越年草」で冬の野草料理!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/75
身近でおいしい野生食材「セイヨウカラシナ」を食べてみよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/322
旬の野草をおいしくいただこう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/231
アジアで人気の香草!ドクダミの葉っぱや根っこでドクダミ料理をつくろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/270
伸びすぎたタケノコを発酵させてメンマをつくってみよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/306
掘って食べよう!山芋掘り入門
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/199



採集よりも簡単で取り付きやすいのが野菜の栽培です。あらかじめ食べられるとわかっている苗や種子を植え付けるので、植物の食毒の判別ができなくても大丈夫です。必要なのは、土や地面。栄養のバランスが取れた土をつくって、野菜を植え付けると当たった光と与えた水の分だけ野菜は成長します。
用土は使ったらそれっきりではなく、堆肥や肥料を新たに追加することで再生可能です。野菜をローテーションしながら(野菜ごとにほしがる養分やかかりやすい病気が異なるため、収穫ごとに科の違う野菜に交代したほうがいい)、土を利用すれば、何度でも同じ土を使うことができます。台所から出た生ゴミは、コンポスターを介することで再び土にすることもできます。
光と土の力で育てる!ベランダ菜園から始める土の循環
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/309
虫や雑草と畑をシェアする「虫草農法」で、生き物と遊びながら野菜をつくろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/245
自然の力で生ゴミを分解!庭にコンポスターをつくろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/243



衣食住の調達のイメージがついたら、次にほしいのは火。都市ガスやプロパンガスがないときにもっとも簡単に頼れて、使ってもなかなか尽きないエネルギー源は薪です。焚き火を使っても良いですが、風の中でもあおられにくく、少ない薪から高火力を得られるウッドガスストーブをつくると、調理が格段に楽になります。その能力は見た目以上。150gの小枝があれば、1合の生米を15分で炊き上げることができます。
【連載】野生児育成計画#7 空き缶でウッドガスストーブを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/112





衣食住と火の算段がついたら、あとは必要なものといえば……電気。個人がいちばん取り組みやすい発電方法は、今のところ太陽光発電です。地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、1秒あたりで40兆キロカロリー以上もあるそう。これを発電所に換算すると、100万キロワットの発電所の2億個分とのこと。しかも、太陽エネルギーは基本的にタダです。また、化石燃料を用いる発電と違って使っても炭酸ガスを排出しないので地球温暖化にも悪影響を及ぼしません。
パネルを必要量敷地に広げれば、家の中を照らしたり、エアコンを動かしたり、家族が家の周囲を車で数十km移動できる電気を得られます。
太陽光は電気に変換することもできますが、そのまま熱に変換することもできます。段ボールなどにアルミ箔を貼って凹面の構造をつくれば、太陽光を一点に集中させて対象物を熱することができます。光を集めるだけで焦点の温度は200°近くなることも。工夫次第で調理や湯沸かしをすることができます。
もっとも身近な自然エネルギー 「太陽光」で生活をつくってみよう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/264
ソーラークッカーを作って太陽光で料理しよう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/238

さて、ここまでのステップを読んで、オフグリッド的生活のイメージが湧いてきたでしょうか? タンパク質や糖、山菜を野山から集め、庭では野菜をつくり、屋根では太陽光発電。なんだか実践できそうな気がしませんか?
最後に考えておきたいのが、構築するシステムの持続可能性です。数週間、数ヶ月を超えて年単位でオフグリッドで暮らすとなると、食料や薪も使いっぱなしというわけにはいきません。自然が1年のなかで再生産する余剰のなかに自分の生活をおさめなくてはいつか破綻がやってきます。
自分の生活のサイズ感を知るものさしとなるのが庭です。庭に野菜や果樹を植えて育ててみると、ひとつの作物が収穫までに必要とする水と光の量がイメージできるようになります。また、野菜や果樹は地域に暮らす生き物との仲立ちもしてくれます。
いちばんよいのが、ミツバチと野菜を同時に育てること。野菜を育てると当然害虫がやってきます。野菜や果樹を食い荒らす害虫に腹を立てたあなたは、農薬をかけたくなるでしょうが、それをするとかわいがっているミツバチも死んでしまいます。ミツバチは人よりも害虫側に近い生き物です。
ミツバチも生かしつつ野菜もほしい……と思って農薬を使いあぐねるうちに、野菜を害する幼虫を狩りにアシナガバチがやってきます。害虫の幼虫、アシナガバチ、ミツバチ……それらを見ていると、きっとあなたは豊かさの最大化について考え始めるはずです。害虫に少し野菜を分け与えるけれど、害虫を残すことで益虫を養い、次の防除係として頼る。農薬を使わないので、ほかの関係ない虫も死なない。生かした虫は食って食われてを繰り返すうちにあるステージで人が食物として利用できるものに変わる……。野菜や蜂蜜だけにとらわれず、生き物の営みが生み出す富を最大化して利用することを考えると、家や庭の周囲が豊かになっていきます。
自他共栄!里山のような庭をつくっていろんな生き物を呼ぼう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/32
体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
全地球的な物流と科学が急速に発達した昨今、手にする道具やサービスは個人がコントロールできるレベルを離れつつあります。テクノロジーは便利で快適な暮らしを提供してくれましたが、システムが高度かつ複雑になったことで綻びが生じたときに個人や地域レベルでの修正が難しくなりました。それと同時に現代人の多くは自然界から糧を得る技術からも離れています。私たちはローテクとハイテクが急速に乖離するはざまで、宙ぶらりんになりつつあるのかもしれません。
WILD MIND GO!GO!は「生き物としての力を取り戻す」というテーマをもって記事をつくってきました。個々の記事は動植物、天体、工作、野外活動……と多岐にわたりますが、すべての記事において、世界に働く物理を理解して利用すること、自然界を観察して動植物を持続的に利用することのどちらかの視点が盛り込まれています。生身の自身を生かし続ける基礎的な生活技術と、個人の指先で維持できる科学技術。加えて、生きる糧を生み出す生態系を壊さないための視点。これらを融合したものが、ますます大事になる時代が来そうです。