北海道苫小牧の山菜料理店に生まれる。幼いころから北の原野で山菜採りを手伝い、調理場で刃物を握って遊んでいた。その記憶を辿るように、自然と刃物と共にあるアウトドアと暮らしを実践。自然素材やリユース材でアウトドアツールから暮らしの道具までも作り、その醍醐味と奥底にあるメッセージを国内外のイベントやワークショップ、SNSや雑誌連載などで伝える。近年はツリーハウスも作るビルダーユニットHAMMERSを立上げ、雑誌連載、物作りイベントWORKERS CAMPをプロデュースするなど活動の幅を広げる。
現在はステンドグラス作家の妻とダウン症の娘を含む4人、自ら開拓中の里山で暮らす。
NATURE WORKS 代表。スウェーデンMORAKNIVアジア唯一のアンバサーダーを務めるほか複数のアウトドアブランドのアンバサダーやプロダクトにも関わる。著書「東京発スローライフ」オレンジページ、「里山ライフのごちそう帳」実業之日本社、「焚火大辞典」成美堂出版、監修「食べられる野草」成美堂出版
現在は東北地方にまで分布しているヤシ科のシュロ。本来は南九州原産と言われていますが、シュロの木の皮が暮らしの素材としてとても優秀だったために庭先などに植えられ、その種子を鳥が食べて運んだことから分布が広がったと考えられています。近年は山で増え過ぎて、除伐の対象にもなっていたりします。そんなシュロの木ですが、その幹はたくさんの繊維が不織布のように絡みあう皮に覆われています。それを剥がしたものは鉄鍋を洗う布タワシとして使われたり、また皮の繊維をほぐして縄にしたり、さらには棒に巻きつけて箒としても使われてきました。シュロを使った道具は古くから日用品として重宝され、今日でも職人が数十年使える箒やはたきを1本ずつ丁寧に仕上げています。シュロの皮の繊維は油分を多く含み水に強く、腐りにくく、驚くほど丈夫。そんな天然繊維の力を活用するミニ箒のつくりかたを解説します。
シュロ皮
必要量
木の枝
必要量
直径9㎜の銅線
1m
釘
6本
真鍮のタイコ鋲
2本
ナイフ
1本
木槌
1丁
ワイヤーブラシ
1本
鋸
1丁
園芸はさみ
1丁
ペンチ
1丁





シュロの幹から不織布のシートにも似た皮を1枚ずつはがしていきます。シュロの皮は幹に筒状に巻きついているのでそれをナイフと園芸はさみで幹元から切り取ります。まだ皮を剥がされたことのない木の場合、地面近くの皮を何枚か取り除き、きれいに取れそうなところから丁寧に採取していきましょう。まず刃物で皮の幹元へ1周切り込みを入れます。カマが使いやすいですがナイフやカッターなどでも大丈夫です。皮の中心には葉茎だった硬い軸があるので、その脇を園芸はさみで縦に切ります。すると筒がシート状のまま剥がれます。今回は2枚使います。採った皮には落ち葉などのゴミが付いているので水洗いしておきます。
※私有地や公園などで勝手に皮を剥がすことはできません。自分で採取する場合は、必ず許可を得て、万全の安全対策の上で行いましょう。シュロ皮は園芸用やメダカの産卵用、工芸用などとしても販売されています。サイズや品質などは商品によって多少の差がありますが、入手したらその素材に合わせて活用しましょう。





剥がした皮から硬い軸の部分を園芸はさみで切って除き、50℃くらいのお湯に20分ほど浸します。柔らかくなったら皮をお湯から引き上げ、縦方向に丸めて木槌などで叩きます。叩くことで幹側の硬い皮膜部分がほぐれやすくなります。その硬い部分を中心に真鍮ワイヤーブラシで縦方向に擦ると繊維以外の膜やカスが浮いて取れてきます。それをお湯の中で揉み洗いして繊維だけにしていきます。最後に不織布状になった皮の幹側の部分(「鬼毛」と呼ばれています)と先端側の細い毛先6cmほどをフォークですいて毛先をまっすぐに整えます。
※シュロの皮は網目状に絡んだ繊維と繊維についた皮膜でできています。皮は幹側の「鬼毛」部分と外側へ広がる先端側で性質が異なり、幹側は太く丈夫で先端側へ行くに従って細く繊細になります。ほうきに仕立てる際は、皮の中ほど(幹側と先端部の間の部分)は網目を残し、幹側と先端側の数センチの毛をまっすぐにしたシート状に仕上げます。





手頃な木の枝を選び、太さ1.5cmほどの細い枝が分かれた部分を切り出して箒の柄にします。細い枝は収納時に引っ掛けるためのフックになります。箒の柄にする際、枝の先端側にシュロの皮を巻きとめ、小枝がある側を逆さV字に残して引っ掛けフックにします。柄の長さは自由です。今回は40cmで切り出しました。箒の皮を巻きとめる枝の先6cmほどはナイフなどで樹皮を削り、切り口は全てナイフで面取りします。
※私有地や公園などで勝手に木の枝を切ることはできません。自分で採取する場合は、必ず許可を得て、万全の安全対策の上で行いましょう。地面に落ちている枝は虫が入っている可能性が高いので、立木や地面に接していない枝が良いでしょう。木には棘があったりかぶれたりするものもあります。安全であると判る木を必ず使いましょう。今回は庭のコウゾの木を使用。他にカエデ類や椿、ケヤキ、ヤマザクラなどを私はよく使います。





鬼毛(幹についていた側)を左にして皮を広げ、左から1/3のところに皮を巻きとめる柄の先端を合わせて横向きに置きます。次に柄へ皮をふんわりと巻き、皮をとめる位置の周囲へ長さ1cmの釘を6本、少し釘頭が残る程度に打ち付けます。釘の位置を目安に柄下側の皮(細毛の先端側)を箒先側へ折り返します。
※柄に皮をキツく巻かないのがコツ。また折り返す際は切り端から少しずつ返していくと綺麗に簡単に折り返しやすいです。





太さ9mmの銅線を1m強切り出します。銅線の先端から5cmのところに楕円の輪を作って釘を打った辺りにのせ、そのまま残った銅線で楕円の上から皮に銅線を巻きつけていきます。銅線を膝などで押さえつけ、箒を回転させるようにするとやりやすいでしょう。銅線の結束部分の幅は1.5cm程度、15~16周ほどできるだけキツく巻きます。最後に残った銅線の端は、最初につくった輪へくぐらせます。銅線がゆるまないように保持しながら、ラジオペンチを手にして楕円の輪をつくった側の末端を引き、巻きつけてきた銅線の残りを結束部の中心くらいまで引き込みます。最後に結束部の両側に出た銅線の末端を数㎝残して切り落とします。
※銅線を扱う際は鋭くなる切り口で怪我をしないように注意しましょう。銅線を巻く際、できるだけ折り曲げず真っ直ぐのまま扱うのが綺麗に巻くためのコツ。銅線巻きが難しい場合は凧糸で同様に巻いても良いです。


銅線のふたつの末端をU字に曲げて、巻いた部分の下へ押し込めば巻きつけが完了。続けて、巻き終えた銅線の真ん中へ真鍮タイコ鋲を表裏の2ヶ所へ打ち付けます。皮を突き抜けて枝にしっかりと固定されるように打ってください。この鋲には銅線の緩みを防止するとともに見た目の飾りとしての役目もあります。




最後に箒の皮から飛び出した毛をハサミで切って綺麗にしてから毛先をストレートにカットし、再度ブラシで毛並みを整えて完成です。
シュロ箒を丈夫かつ美しく仕上げるコツは、銅線を巻き付けるあたりに網目のままの布状の皮がくるようにして、ブラシで真っ直ぐに仕立てた部分が箒の毛先になるようにすること。これにより箒の束が暴れにくく長く使えます。
使ううちに毛先が短くなってきたら、フォークや金串などで網目部分を徐々に真っ直ぐにすることで更に長く使えるようにもなっています。


油分を多く含むシュロ皮は時折スプレーなどで水を吹きかけて毛並みを真っ直ぐにして吊るして干すと毛並みが揃いより使いやすく、また付着したほこりも取れます。保存する時もフック部分で吊るしておきましょう。そして何より、使えば使うほど手入れをすればするほど毛先がより柔らかく真っ直ぐになり手放せない箒になっていきます。
体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください
里山に暮らす我が家の周囲には、草木竹などの暮らしを楽しく豊かにしてくれる素材がたくさんあります。摘み草料理やお茶になる植物や食べられる木の実、花瓶に生けたり飾ったりする季節の草花実、器やカトラリーになる木や竹などなど。今回は家の周囲に何本か自生していたシュロの木の皮と木の枝を素材に箒を作りました。ちなみにシュロの木は葉で籠や箒もつくれたりします。またシュロの幹は丈夫です。我が家では裏山に登る階段の土留めに活用していますが、実はお寺の鐘を突く棒としてとても優秀な丸太でもあります。
そしてそんな暮らしを豊かにしてくれる素材を毎日愛でながら、日常で何か道具が必要になったら「あれを使って作ってみよう」なんていうのが僕の理想というか目指すところでもあります。みなさんもこのシュロの箒づくりをはじめ自然素材での暮らしの道具づくりに是非チャレンジしてみてほしい。買った道具よりちょっと不便かもしれないけれど、これ以上ない愛着が湧いてくるはずです。
ときとき