ワイルドライフクリーターとして様々なメディアで活動中。ブッシュクラフトやサバイバル術、狩猟、DIYに造形が深い。フェールラーベン、Fedeca、ジールオプティクス、Bear tope等のアンバサダーやテスターをしている。著書にアウトドア刃物マニュアル、サバイバル猟師飯(誠文堂新光社)がある。アウトドア、ブッシュクラフトスクールも主催している。Youtubeチャンネル荒井裕介Youちゃんねる。Youtube https://www.youtube.com/channel/UC44o83YZz4HXFnp85V8u3nQ
「ノッチトップシェルター」とは、こん棒の様な「ノッチ(切り欠き)」を中心に、それぞれの木の梁(はり)が支え合う様に組み合わせてつくる、ティピー型のシェルターです。イメージは、柄の無い傘!
ロープなどで「ノット(結び)」を使わずにつくるので、刃物さえあれば設営できるシンプルな方法です。重力によって中心に向かって倒れようとする木が、互い支え合うことで頑丈に固定されるので、一度バランスが取れるとちょっとやそっとでは崩れません。
ただし、バランスを上手く取りながら設営するにはコツが必要。ここでは、そんなノッチトップシェルターをつくる方法をわかりやすく紹介します。一度コツを掴んでしまえは、ずっと役立つスキルになるので、ぜひ挑戦してみましょう!
まずはじめに、実際のフィールドへ出かけ、必要なものを準備します。準備するのは、1枚目の写真のような、4点(適当なヒモ、細い枝の先をナイフで削った杭2本、杭を打ち込むための少し太めの棒1本)です。ヒモ以外は、周辺に落ちている枝を活用して準備をすると良いでしょう。
次に、シェルターを設営するための平らな場所を決めます。出来るだけ平らな場所で地面がしっかりとした土の場所に立てる様にしましょう。砂地や岩場などでは梁が滑ってしまったり、必要以上に埋まってしまいバランスを崩しやすくなるので注意が必要です。
良い場所が見つかったら、シェルターのサイズを決めます。サイズは、横になった時に十分な広さが確保できるかが目安。今回はあくまでもソロ用としてつくります。
まず、先ほど準備した2本の杭を、3枚目の写真のようにヒモで繋げます。次に、シェルターを建てる中心あたりに、片方の杭を打ち込みます。この杭を中心に、シェルターをつくるための円を描いていきます。
4枚目の写真のように、ヒモの長さを適度に調整し、ヒモのたるみを張った状態で、地面に円を描きます。この円はあくまで目安なので、この円よりも小さくならない様に制作するのが快適なシェルターつくりのポイントです。
※キャンプ場や、管理された土地などでは、木などを伐採したり採取する行為は禁止されていることが多くあります。必ず事前に管理者に確認しましょう。
※設営したシェルターは、必ず分解し、可能な限り元の状態に戻して立ち去るようにしましょう。
次に、シェルターの上で支える、ノッチトップをつくります。はじめに、太めの丸太を25cm程度の長さで用意します。次に、1枚目の写真のように、端から指4本分くらいのところに、ノコギリで一周切れ込みを入れます。
次に、2枚目の写真のように、切り込みの長い方を上にして、ナイフをバトニングしながら丸太の周囲を割る様に、切り込みまで削ります。ある程度切り取ったら上部がテーパー(先細り)になる様に削って行きます。長いほうが横から見て台形になる様にノコギリの切り込みまで削ったら完成です。
ナイフでバトニングする場合は力を入れすぎず、バトンがナイフのポイント(先端)に当たらない様にしましょう。ポイントを叩いてしまうとナイフの先端が欠けてしまいます。ノッチは上側が細くなる様に写真の様に制作するのがポイントです。
次に、梁にする木を準備します。出来るだけ同じ長さで、曲がりが少ない木を選ぶのもポイントです。ステップ1で描いた円の中心に立ち、円の縁から中心にたった人の胸の高さ程を基準に梁の長さを決めるといいでしょう。長さが決まったら、全ての梁を同じ長さになる様に切りそろえます。
次に、2枚目の写真のように、梁のノッチと合わさる部分を斜めに切り落とします。こうすることで、ノッチにしっかりと面で当たる様になり、安定感が増します。
いよいよ、梁を立て掛けていきます。はじめに、1枚目の写真のように、ノッチトップを中心に4本の梁を立てます。バランスが取りにくいですが、4本を上から見た時、きれいな十字になる様にセットするのがポイントです。それぞれがバランス良くノッチにはまったら、下方向にノッチトップ部分に力を加え、梁を地面に食い込ませるとグラつきがなくなります。4本だけでもかなり安定します。
続いて、バランスを保ちながら、2枚目、3枚目の写真のように、梁を7~8本に増やしていきます。
次に、屋根をつくっていきます。ノッチトップのフレームだけでは、まだ隙間が大きすぎるので、1枚目の写真のように、フレームに適当な枝をクロスする様に立て掛けて、隙間を埋めていきます。そうすることで、次に乗せる材料を支える下地ができます。
さらに、落ち葉を支える下地をつくります。2枚目の写真のように、ヤブカラシやカラスウリなど、ツル科の植物を使うと絡み合った網状を生かし、少ない材料で落ち葉を保持できる下地がつくれます。特にヤブカラシなどのザラザラしたツルを持つ植物は、摩擦力があるので最適です。ただし、非常にザラザラしているので集める際は、革手袋を着用するようにしましょう。
下地の準備が整ったら、3枚目の写真のように、大量に集めた落ち葉をムラなく被せます。蔓状の植物が摩擦を生み、ずり落ちを軽減し網状になっているので、内側に落ち葉がこぼれ落ちることあはほとんどありません。最後に風で落ち葉が飛ばない様に、細い木や枝を重石として周囲に立てかければ完成です。
※落ち葉が入手しにくい場合のおすすめ
季節によって落ち葉が入手しにくい場合は、ススキなどで代用することも可能です。また、骨組みに直接タープやビニールシートなどをかけてつくることもできます。
※季節に合わせたおすすめ
落ち葉は暖かい空気の層をつくってくれますが、暑い季節であれば遮光性の高い生地などで覆うと涼しく過ごすことができます。シーズンごとに素材を活用して、快適に過ごせる工夫をしてみるのも良いでしょう。
※気温の上がる時期の落ち葉は要注意!
気温の上がる初夏から秋口は、落ち葉の中にダニなどの毒虫が潜んでいることが多いので大変危険です。夏場は落ち葉を使用することは避けましょう。
うまくノッチトップシェルターがつくれたら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう。苦労したことや工夫したこと、出来上がったシェルターの感想などあれば、コメントにも記載してください。
ノッチトップシェルターは空間が広く使えるのがメリットです。お互いが倒れようとする力を利用して支え合う構造が面白いシェルター。最初は難しく感じるかもしれませんが、コツを掴んでしまえば曲がりのキツイ枝でも出来るようになります。フィールドで木材が手に入らない場合は、ホームセンターの柱材の切れ端や園芸用の竹でも代用は可能です。
ロープなどの材料が無いときに、高さのあるシェルターをつくるには、ノッチトップシェルターがおすすめ!是非挑戦してみてください。