ワイルドライフクリーターとして様々なメディアで活動中。ブッシュクラフトやサバイバル術、狩猟、DIYに造形が深い。フェールラーベン、Fedeca、ジールオプティクス、Bear tope等のアンバサダーやテスターをしている。著書にアウトドア刃物マニュアル、サバイバル猟師飯(誠文堂新光社)がある。アウトドア、ブッシュクラフトスクールも主催している。Youtubeチャンネル荒井裕介Youちゃんねる。Youtube https://www.youtube.com/channel/UC44o83YZz4HXFnp85V8u3nQ
人間が生きていく上で必要不可欠な「水」。健康な大人は、1日に体重1kgにつき約35ミリリットルの水が必要と言われています。これは体重50kgであれば約1.7リットルにもなり、山や森の中など、数日間野外で生活するとなると、持ち運ぶのもひと苦労です。
サバイバル技術の中には、河川や湧水から水を採る方法がありますが、もし近くに水源がない場合にはおすすめの方法があります。それは、地面に穴を掘って、草木や地面が持つ水分を気温差を利用して集める方法です。集めた水は濾過や蒸留、煮沸が必要ないので、そのまま飲むことも可能です。
ここでは、実際に森の中で気温差を利用して水を集める方法を紹介します。必要なのは、マグカップと大きめのポリ袋、そして穴を掘るためのシャベルのみ!簡単なので、ぜひ挑戦してみてください。
注意
※野外での飲料水の採取には危険と責任が伴います。安全に自信が無いときは口にしないでください。
※この記事は、水の採取方法をご紹介するもので、安全性を保障するものではありません。
※気温が氷点下を下回ると水が凍って使えない手法なので、氷点下を上回る環境で挑戦しましょう。
はじめに穴を掘る適当な場所を探します。できれば、湿度のある樹林帯などの地面がおすすめです。柔らかそうな地面を見つけたら、シャベル、又スコップで深さ20~30cm、幅40~60cm程度の穴を掘ります。目安は、マグカップより5~10cmほど深く掘るのがポイントです。
表面が乾いていても、少し掘って湿気がある地面であれば採集できるので、少し掘って確認すると良いでしょう。
※小学生以下のお子さんは、必ず大人と一緒にでかけましょう。
※私有地や公園など、管理された土地で採集する場合は、管理者に確認しましょう。
※採集場所の環境を必ず確認しましょう。排気ガスの多い道沿いや、工事現場・工場の側、農薬や除草剤などがかかっていそうなエリアは避けましょう。
適度な穴が掘れたら、穴のまわりに草や笹の葉などを入れます。このとき、枯れたものは避け、できるだけ青々と水々しい草や葉っぱを選ぶようにしましょう。木の葉でも採集可能ですが、草や笹の方が水分を多く含んでいるので、より多くの水が得られる可能性があります。草や笹が入手できる場合には、それらを使うようにするとよいでしょう。
次に、写真のように、穴の中心に倒れないようにマグカップをセットします。
次に、大きめのポリ袋を広げ、穴を塞ぐように張ります。このとき、穴とポリ袋の間に、できるだけ隙間ができないように、またシワを少なく張るのがポイントです。はじめはポリ袋の四隅を石などで固定して、位置が決まれば枝などでペグダウンしてたるみを取ると、きれいに張れます。必要であれば、4辺の中央にもペグダウンを追加します。
ポリ袋が張れたら、穴に設置したマグカップの真上あたりに小石を乗せます。小石はポリ袋がすり鉢状にたわむ位の重さを選ぶといいです。結露がポリ袋の傾斜をつたって、マグカップの上に滴るイメージを持っておくと良いでしょう。
設置できたら、そのまま翌朝まで放置します。ちなみに、設置は気温の高い日中に行うようにしましょう。太陽で暖められた草や地面から蒸散する水分をポリ袋が受け止め、夜間に気温が下がることで結露として付着します。それらが、傾斜をつたい一晩かけてマグカップに溜まります。時間はかかりますが、植物や地面が持つ水分を自然の仕組みを利用して集めることができる方法です。
翌朝になったら、ポリ袋をめくりマグカップに溜まった水を確認します。画像のマグカップはおよそ600ミリリットル入るので、250~300ミリリットル採集できました。穴を広くして草の量を増やすと、より多くの水が採集できるようになります。
この方法では、水蒸気となった水を集めているので蒸留や濾過の必要はなく、そのまま飲んでも問題ありません。臭みなどもなく即飲料水として飲める水が採集できるのは、嬉しいですね。
きれいな水が採取できたら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう。苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、コメントにも記載してください。
まわりに水源が発見できない場合や水質が悪く取水できない場合に、自然の仕組みを利用して植物や地面から水を採取する方法を知っておくことは、大切なサバイバルスキルになります。濾過や蒸留、煮沸が必要のない水が手に入ることは、いざというときでも、心強い安心感につながるので、ぜひ身につけておくと良いでしょう。
またこの手法は、都会の公園から山岳地帯でも利用可能なので、遊びの中で学ぶ災害対策として家族や友人と取り組んでみても良いでしょう。自然の生命力を自らの命に変える化学の実験にもなります。
※写真提供:笠倉出版社 Feilder