狩猟採集、野外活動、自然科学を主なテーマに執筆・編集するフリーランスのエディター、ライター。川遊びチーム「雑魚党」の一員として、水辺での遊び方のワークショップも展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。twitterアカウントは@y_fomalhaut。
日々の生活のなかで生み出される家庭ゴミのうち、全体の3~4割にも及ぶ生ゴミ。そして、生ゴミの8割を占めるのが水分です。収集されたゴミは焼却場で灰にされますが、燃えることのない水を蒸発させつつゴミを焼却するのは、とても非効率です。
自治体によっては生ゴミを減量するために電気式のコンポスターの購入に補助金を出すところもありますが、生ゴミの軽量化や分解のために電気を使うのは、焼却場とは別の場所に負荷をかけかえるようなもの。
生ゴミの元は命ある食材です。灰にして埋め立ててしまえば命の循環から外されてしまいますが、ある処理方法を行なえば、生ゴミはもう一度命の環のなかへ戻っていきます。
焼却場の負担を減らし、収集日までに発する悪臭を防ぎ、処理にエネルギーを使わず、生ゴミを再び生かすその方法とは……土に埋めること!自然界には生き物の亡骸を土に戻すシステムが働いています。この力を使って庭先で生ゴミを分解してみましょう。
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【生ゴミ処理器の素材例】
ポリカーボネート製波板(665×455mm)
2枚
杉板(24×170×1200mm)
2枚
杉板(24×170×370mm)
2枚
杉板(16×40×1200mm)
3本
杉板(16×35×370mm)
6本
ステンレス製蝶番
2セット
ステンレス製掛け金
1個
ステンレス製かめ座
6個
ステンレス製木ネジ
各サイズを数十本
黒土(14L)
4袋
【ミミズコンポスターの素材例】
杉板(24×170×350mm)
4枚
ステンレス製木ネジ
12本
家庭で実践できる土を使った生ゴミの処理は、大きく分けて2とおり。ひとつは「なくすこと」に重きを置いて、微生物によって短時間で小さくする方法。もうひとつは、堆肥として再利用する方法です。
土に埋めた生ゴミは、土中の生物の力によって最終的には水とガスと少しの土となりますが、用いる処理の方法によって分解の速度と土中に残る栄養分が変わります。この記事では、黒土を使った「生ゴミ処理器」とミミズの力を借りる「ミミズコンポスター」の2種を紹介します。
黒土を基材にする生ゴミ処理器は、省スペースで処理の速度が速く、においも少なく、使い続けても土のかさが増えにくいのが利点です。その反面、投入した生ゴミの大部分をガスと水に分解してしまうので、堆肥としての力は小さくなります。
落ち葉などと土と生ゴミを合わせ、生物の力を借りながらゆっくり分解するミミズコンポスターは、処理にやや時間がかかってスペースも必要ですが、処理後の糞を堆肥として活用できます。
どちらも一長一短あるので、併用するか運用しやすい方法に挑戦してください。
生ゴミ処理器の基本となるのは、もちろん土。砂や小石、腐葉土の含まれていない黒土が処理器に向いています。黒土は市販もされていますが、自宅の敷地でそのような性質を備えた土が手に入る場合は、市販品を買う必要はありません。
処理器は、黒土が持つ分解能力を引き出して管理するためのものです。①生活で出るゴミの分解に必要な量の土を保持し、②適度な水分量と熱を保ち、③においが漏れないように生ゴミを覆い、④分解後の水分とガスを放出し、⑤光を透過し、雨を遮る屋根を持っていること。こんな構造になっていれば、どんな材質、形でも機能します。
しかし、考えたいのは自然への負荷です。処理器の性能を向上させようとするあまり、分解しない素材を多用しては本末転倒です。処理器そのものもいつかはゴミになることを見越して、分解する素材やできるだけ長寿命な素材、再利用できる素材を選び、少ない部材で作れる構造を意識しましょう。
この記事では作りやすい据え置き式の枠型タイプを紹介していますが、底面を設けた箱型タイプであれば、ベランダへの設置や移動が行なえます。
黒土を使った生ゴミ処理器の技術を確立したのは、神奈川県の松本信夫さん。処理器を「キエーロ」と命名し、情報を発信しています。検索すると全国でキエーロを使った生ゴミ処理を実践する人たちの情報がみつかります。庭が狭い、ベランダでしか使えない、住むのが寒冷地である、地面が湿っている……それぞれの条件をクリアする方法を先達が公開しているので、自分に合った方式を探してみてください。
STEP2で書いたとおり、生ゴミ処理器としての条件を満たすものであれば、どんな素材・形で作っても構いません。この記事では道具としての寿命と使い勝手、素材の入手のしやすさから、光を透過する素材としては比較的長寿命なポリカーボネート製波板(寿命はおよそ10年)を使った処理器を紹介します。
【使用する素材】
・ポリカーボネート製波板(665×455mm)2枚
・杉板(24×170×1200mm)2枚
・杉板(24×170×370mm)2枚
・杉板(16×40×1200mm)3本
・杉板(16×35×370mm)6本
・ステンレス製蝶番 2セット
・ステンレス製掛け金 1個
・ステンレス製かめ座 6個
・ステンレス製木ネジ 各サイズを数十本
・黒土(14L)4袋
市販されるポリカ波板の規格で、最小のものは3尺(665×910mm)の大きさ。この板を波の目に対して直交する向きで両断し、665×455mmの板を2枚作り出します。波板を連結するときの重ねしろは2.5山以上とされていますから、この2枚を横方向に連結して使うと、およそ1200×455mmの広さの光を通す屋根が生み出せます。
ポリカだけでは屋根としての強度が足りないので、細い板で枠を作り、そこに波板を貼り付けます。この屋根の下に収まる木枠を作り、木枠と屋根をつなぐパーツをつければ完成です。
重要なのは、「光を透過し雨を遮る屋根」と「その屋根に収まる木枠」という条件です。上記で紹介した素材や寸法は参考にとどめ、入手できる素材で工夫してください。ただし、容量が小さいと生ゴミを処理しきれないので、3~4人家族であれば1200×400mm程度の屋根とそれに覆われるまとまった土は必須の条件となります。
まずは波板をカットします。専用の波板切りハサミがあると作業がラクで素材を傷めませんが、金切りバサミ等でもカットは可能です。3尺の板を波と直交する向きに切って2枚の板を作り出しますが、ポリカ波板を使うとき、注意したいのは表裏です。ポリカ波板の表面には耐候加工が施されており、表と裏のどちらを太陽に向けるかによって寿命が大きく変わります。表裏はシール等で表記されているので、必ず太陽に向けるべき面を確認してください。
ポリカ波板を木の枠につけたら、続けて土を保持する升形の木枠を作ります。これも波板の屋根に収まり、ある程度の土をとどめておける大きさならどんなものでも大丈夫ですが、屋根よりひとまわり小さく設計しましょう。土を止める木枠の寸法を屋根と同一にすると、雨を流す勾配を屋根につけたときに屋根が寸足らずになり、雨が木枠の中へ流れ込んでしまいます。
屋根と土を溜める木枠は、3本の板を立ち上げて蝶番で連結します。風に煽られてもバタつかないよう、屋根と木枠のロックは簡単に外れないタイプの掛け金を使いましょう。
設置場所は、1日のうちに数時間は陽が当たる乾いた場所が理想的。太陽光によって地温が高まると、微生物の活動が活発になります。また、処理器に光が当たることによって土が乾き、生ゴミから吸湿します。湿り気が多すぎる場所や陽が当たらない場所では、空気を使わない嫌気性の分解が起き、分解の速度が遅くなったり、悪臭を発したりします。
木枠を設置したら、枠の8分目の高さまで黒土を投入します。土を入れたらすぐに使えますが、生ゴミを分解する微生物がある程度増えるまでは数週間かかります。処理器内が安定すると、分解能も高まります。
黒土を使った生ゴミの分解時間は季節によって異なります。投入するゴミの量と種類にもよりますが、微生物が活発な夏場で4~5日、気温の下がる冬場で10日前後かかります。紹介した処理器では全体を12ブロックに区切り、12日間で最初に使った区画まで一巡するように設定しました。
ゴミを埋めた後は次に使う場所にスコップで目印を立てておくと、誤って分解中のゴミを掘り起こすことがありません。
生ゴミを埋めるときは、20cmほど掘り下げて生ゴミを入れ、スコップで土とよく攪拌(かくはん)します。土とよく混ぜることで通気性を高め、土中の微生物も生ゴミに触れさせることができます。土と生ゴミが直接触れていると、土が生ゴミの水分を吸って周囲に放出する効果も働きます。
分解において重要なのが水分です。効果的な処理には生ゴミから水分を飛ばす働きも必要ですが、土が乾きすぎていると微生物が分解の力を発揮できません。土が乾いているときは水や米のとぎ汁などを合わせて攪拌すると分解能が高まります。処理器全体としてはやや乾き気味で、ゴミを投入した場所には微生物の活動に必要な水分がある状態が理想です。
生ゴミと土を攪拌したら表面を土で覆います。土はある程度の厚みがあったほうが分解中のにおいが外に漏れにくく、動物にも荒らされにくくなります。
生ゴミ処理器が得意とするのが植物質の残渣の分解。ゴミのサイズが小さく、薄く、柔らかいものほど早く分解します。しかし、植物質でもタマネギの皮などの硬い部位や野菜の芯や芽などの成長点は分解に時間がかかります。とくに根や芽を出す力をもつ部位を塊のまま埋めると、なかなか分解されません。埋める前に細かく刻むとよいでしょう。
魚や肉、内臓の塊などもやや分解に時間がかかります。捨てる場合は細かくしたり、湯通しをして、よく土と混ぜると分解が早まります。
不得意なのは卵の殻や魚や動物の骨、大きな種子など。これらが土のなかに目立つようになったら、粗いふるいにかけて取り除きましょう。
生ゴミのほか、使い古した食用油なども少量ずつであれば分解可能です。
処理器を置く場所が自由に選べるなら、1~2年運用したら別の場所に移し、もとあった場所に野菜などを植えることもできます。そのときに注意したいのが土中の塩分濃度です。調理済みの食べ残しや調味料を一緒に埋めていると、土中の塩分濃度が高くなりがちです。生育に負担のないレベルなら使った土に植物を植えることができますが、土を菜園に使うつもりなら、処理器の運用中の生ゴミの塩分には注意が必要です。
ミミズコンポスターも基本の構造は生ゴミ処理器と同じです。基材をとどめておける枠に蓋をつけるだけでOK。あとは処理したい生ゴミの量に応じて、容量とミミズの数を調整していきます。しかし、最初に考えたいのがミミズコンポスターの運用の仕方。丁寧に世話をするか、ある程度放任するかで設計が変わってきます。
ミミズコンポスターで活躍するシマミミズは、15~25℃前後のほどよく湿った餌の多い環境を好みます。温度が上がりすぎたり、乾燥しすぎたり、過度に湿ったり、餌がなくなると新天地を求めて移動します。
底面をもつ箱型のミミズコンポスターはミミズの逃走を防げるのですが、環境が悪化したときにミミズが安全圏へ脱出できないので、全滅させてしまう可能性があります。また、地面と分離しているので外気温や日照の影響を大きく受けます。その反面、できた堆肥や液肥の回収がしやすいという利点もあります。
木枠を地面に据え置くタイプは、地面と一体なので急激な温度変化を避けられ、高温や乾燥、餌不足になったときにもミミズが土中や枠の外へ自力で逃避できます。しかし、住環境が悪くなると枠の中からいなくなってしまうことも。また、モグラが侵入できる環境ではミミズが食べられる場合もあります。
丁寧な世話が必要な箱型とラフな運用ができる枠型。設置する環境とかけられる労力に合わせて、自分に合った方式を選んでください。
【ミミズコンポスターで使用する素材】
・杉板(24×170×350mm)4枚
・ステンレス製木ネジ 12本
ミミズコンポスターのいちばんの弱点が、処理能力が低く分解に時間がかかること。ミミズの1日あたりの生ゴミの処理能力は体重の半分ほど。上記のサイズの板で作った枠式コンポスター(内容積が16Lほど)で飼育できるミミズは200g程度なので、処理できる生ゴミは100g程度が上限となります。一般家庭では1日に500gほどの生ゴミが出るので、数を増やすかサイズを大きくする必要があります。
板はロの字型に組み、板どうしの接着面をネジ留めに。上側を解放すると土が乾きやすく、ミミズ意外の虫も繁殖しやすいので蓋で覆いましょう。ミミズの嫌がる太陽光を遮り、ハエなどの侵入が防げれば蓋の材質は問いません。
コンポスターに向くシマミミズは地表近くを好むので、基材となる落ち葉と土はそれほど深くなくても大丈夫ですが、枠の地上高が低過ぎると枠の下をくぐってミミズが逃走します。ミミズを枠内に留めたい場合は、段数を増やして土を深くすると逃げにくくなります。
日本に数百種類生息するミミズ類のうち、コンポスターに向いているのは生ゴミを好み、地表近くで暮らすシマミミズ。釣具店やミミズコンポスターの販売店からも購入できますが、本来の生息地でない場所で逸出させると、病気を広げたり遺伝子汚染につながる可能性があります。可能なら、コンポスターを使う場所の近くで採集したほうがよいでしょう。
探すのは、刈られた草が積まれている場所や堆肥置き場。身近にそんな場所がなければ、手近な土に浅く生ゴミを埋めてみましょう。シマミミズがいる場所なら2~3日後に掘り返すと生ゴミを好むシマミミズが集まっているはずです。採集したミミズをコンポスターに入れておけば、コンポスターのなかで繁殖して数を増やし、処理能力も高まっていきます。
ミミズを調達できたらコンポスターを設置して基材を入れます。設置する場所は直射日光が当たらず、雨が降ってもぬかるまない場所が理想的です。ミミズコンポスターの基材となるのは、落ち葉や細い枯れ枝と黒土をブレンドしたもの。この基材はミミズに隠れ家を提供し、生ゴミが足りないときの餌にもなります。落ち葉の入手が難しい場合は、園芸店などで売られているヤシがらを主体とする園芸土も使えます。
基材の用意ができたら軽く湿らせてからミミズを入れて数日寝かせ、ミミズを基材に慣らします。ミミズが土と馴染んだら生ゴミを投入。上から軽く土をかけ、幅広な葉っぱや濡らした新聞紙などで覆い、保湿しつつ光を遮ります。
生ゴミの処理能力はミミズの数に比例するので、立ち上げ直後は少なめに生ゴミを入れ、ミミズが投入した生ゴミを食べ切りそうなタイミングで新たな生ゴミを追加していきます。
食べられた生ゴミは糞として排出され、小さな粒状の土へと変換されていきます。コンポスターの縁まで基材のかさが上がったら、枠を隣へ移動させてミミズと上部の土をお引越し。新たな基材を追加して再度コンポスターを立ち上げます。コンポスターの下層は分解されているので、野菜や花の堆肥として活用できます。
植物質の生ゴミは得意なシマミミズですが、肉や魚などの動物質と塩分の高い食材、柑橘類は苦手。これらのゴミは生ゴミ処理器か別の方法で処理しましょう。
いかがでしたか?黒土を使った「生ゴミ処理器」、またはミミズの力を借りる「ミミズコンポスター」が完成したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
現代の環境問題の多くは、地下から採掘した資源を濫費するために引き起こされています。採掘した地下資源で分解しないものをつくるからゴミが問題になり、化石燃料を燃やすから温暖化ガスが生まれています。
これらの問題の根本的な解決策は、地下にあるものを燃やさず、地上にある資源と命を循環させながら利用すること。すでに地上にあって、利用したのちに分解・再生するものを使っていれば、環境を大きく壊すことはありません。
生活に循環を簡単に取り入れる方法はたくさんありますが、社会にも自分にもメリットが多く、取り組みやすいのがコンポスターです。土に入れたゴミが、10日ほどで分解されるのはまるで魔法のよう。家庭から出るゴミの量が大きく減ることにもきっと驚くでしょう。そして、生ゴミを庭先で分解しているうちに、そのほかのゴミの捨て方やリサイクルにも興味が湧いてくるはず。コンポスターは、循環型のライフスタイルへと背中を押してくれる道具です。
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