狩猟採集、野外活動、自然科学を主なテーマに執筆・編集するフリーランスのエディター、ライター。川遊びチーム「雑魚党」の一員として、水辺での遊び方のワークショップも展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。twitterアカウントは@y_fomalhaut。
アユは北海道南部より南の川に生息する淡水魚。その香りの良さで古い時代から日本人に愛されてきました。このアユには面白い習性があり、大型の個体はナワバリをもってそこに入る他の個体を排除します。ところが小型の個体はナワバリをもたずに群れを作って川のなかを回遊します。体のサイズによって、とる行動がまるで変わるのです。その習性を利用するのがアユのルアー釣り。アユに似せたルアーをアユがいる場所に送り込んで、ルアーに寄ってきたアユを掛けるのです。夏の川に浸かって、アユとの駆け引きを楽しんでみませんか?
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ルアーロッド )
1本
リール
1機
PEライン(0.6号)
1巻
リーダー(1.5号)
1巻
アユ用ルアー
数個
チラシバリ、イカリバリ
10個程度
PFD(ライフジャケット)
1着
偏光グラス
1本
タモ
1本
この数年で人気が高まってきたアユのルアー釣り。「アユイング」や「キャスティングアユ」といった名称で、各メーカーが普及に力を入れており、専用品も作られるようになりました。しかし、ルアーを使ったアユ釣り自体は20年以上前から楽しまれていました。専用品は感度や取り回しに優れますが、別の釣りに使っている道具の流用でも十分楽しめます。
基本となる道具は1.8~2.4m程度のルアー用のロッドとリール、ルアー、ハリ類。ロッドはある程度柔軟性があり、先端側が柔らかいものがアユに向いています。システムはベイトタックル、スピニングタックルのどちらでも同じように楽しめます。
リールにはしなやかで強度が高いPEラインを50mほど巻き、その先に透明なフロロカーボンのリーダーを1.5mほどつけてからルアーを結びます。
ルアーはアユを模したフローティングタイプであれば、ほかの釣りで使われるものを流用可能です。しかし、初めて挑戦する人はアユのルアー釣り向けの専用品を購入するとストレスがありません。アユ用のルアーは、ルアー後部にアユを掛けるためのハリを簡単につけられる構造になっており、ここに市販のチラシバリやイカリバリをつけて使用します。
ロッド、リール、仕掛けが基本のセットとなりますが、このほかに掛けたアユをすばやく受けるためのタモ(アユ用のハリにはカエシがないので簡単に外れてしまう)と、水面のギラつきをカットして水中を見えやすくする偏光グラスがあるとよいでしょう。
川に入るときは「そこで起きるかもしれない事故」を見越して支度をします。滑って転ぶこと、水に流されること、水に体温を奪われること、石などで肌を切ること……。こういった事態を想定して、身ごしらえをしていきます。滑りにくい靴と水切れの良い衣類を身につけ、深みもある川ではPFD(ライフジャケット)も装備に加えましょう。水に濡れることを見越して、着替えを用意することも忘れずに。
川に入る前には法令のチェックも必要です。アユは漁業権の対象魚種になっていることが多いので、採捕の際には入漁券の購入が必要です。また、アユを釣る方法として、ルアーを認めていない川もあるので事前に確認しましょう。
アユが主食とするのは川底の石についた藻類。アユは石に口を擦り付けて藻類を剥ぎ取りそれを餌とします。そのため、大型のアユは藻類がつく大きな石が点在する瀬を好みます。瀬のなかは常に流れに揉まれるので新鮮な藻類が育ち、石が大きいとひと口あたりの採餌量が増えて効率良く餌を取れるからです。大型のアユはこんな場所にナワバリをつくって、中に入ってくる他の個体に体当たりして排除します。ルアーを使ったアユ釣りではこの習性を逆手にとって、ルアーに体当たりしたアユをハリに掛けます。
いっぽう、ナワバリをもてない小型の個体は群れをつくって川のなかを回遊して餌を取ります。ほかの魚に体当たりをすることは稀です。では小型のアユが釣れないかというとそんなことはありません。小型には「群れたい」という気持ちがあるので、群れが通りそうな場所でルアーを定位させていると、アユのほうからルアーに寄り添ってきてその結果ハリ掛かりします。
大型のいそうな場所と小型が通りそうな場所。川を観察しているうちに自然とアユの居場所がわかるようになるはずです。
くるぶしほどの水深から背の立たない深い淵まで、アユは川の全体を利用していますが、ルアーでアユを狙いやすいのは水深が脛のなかほど程度の場所。これくらいの水深だと川底の状況が把握しやすくルアーのコントロールも容易です。
アユがいそうな場所をみつけたら15~30mほど上流側に入り、ルアーを流れに乗せて送り込んでいきます。基本的に、アユ釣り用のルアーは水に浮かぶタイプなので、ルアーは水面を下流へと流れていきます。ポイントをルアーが通り過ぎたら、糸を送り出すのをストップ。するとルアーの頭部にある「リップ(水を受ける板)」が流れを受け、ルアーは水の抵抗で川底へと潜り込みます。水を受けたルアーは左右に細かく揺れてキラキラと光を反射します。その様子を見たアユが体当たりしたり、寄り添ったりしてハリに掛かります。
ナワバリをもつ大物を狙うときは、水底に点在する大岩の近くにルアーを数分定位させ、体当たりを待ちます。アタリがなければ数十cm糸を巻き取ってさらにアタリを待ちます。ルアーを流した場所よりももっと左側や右側をさぐりたい場合は、自分が川のなかを左右方向に移動して狙った場所にルアーを送り込みます。
小型の群れは流心か川底のいちばん深い場所を通ることが多いので、目立った岩がない場所では深みにルアーを定位させるとよいでしょう。
ときおり、ルアー本体やハリが川底の石に引っかかりますが、そのときは糸にかかるテンションを緩めたり、軽くあおることでほとんどの場合は回収することができます。
流れのなかでルアーを定位させていると、ルアーが左右に震えるブルブルした感触とルアーが川底にあたるコツコツした感触が常に伝わってきます。それらとは異質の「コツ、グイーン!」あるいは「ガン!」といった生命感のある感触があれば、糸の先ではハリにアユがかかっているはず。糸が緩まないように一定のペースで巻き上げ、アユが近づいたところをタモで受けます。
アユ用のハリはカエシがついておらず、ハリ先は非常に鋭利です。魚が触れただけで刺さりますが、その反面抜けやすくもあります。ハリが外れたり身切れ(身が切れてハリが外れること)しないようゆっくりと引き寄せタモに入れましょう。タモの中でハリを外したら、活かしビクなどに入れて川を去るときまで保持します。持ち帰る際は〆てから氷とともにクーラーに入れて保冷します。
アユは自身の消化酵素で自分を溶かしてしまうため、〆たあとの保冷と調理までの時間が食味を大きく左右します。釣った後はなるべく早く食べることがアユの香気を楽しむコツです。スイカにも似た、爽やかなアユの香りを楽しむなら塩焼きがいちばん。数がそろったときには塩焼きしたアユを出汁と醤油で炊いた米と合わせてアユ飯にするのもよいでしょう。炊きあわせたあとは頭と骨を外し、大葉やミョウガと一緒に混ぜ合わせます。薬味をたっぷり盛ったアユ飯は夏そのもののような味わいです。
体験したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
体当たりでナワバリから他の個体を排除するアユ。日本にはこの習性を利用した「友釣り」と呼ばれる伝統釣法があります。「釣り好きが最後にたどりつく釣り」といわれるほど友釣りは奥深い釣りですが、釣りの入門者には敷居が高いこともまた事実。その点で、ルアーを使ったアユ釣りは子供が買える道具でもアユの習性に寄り添った釣りを楽しめます。魚を観察して生態を理解し、釣果につなげるアユ釣りには釣りの喜びが凝縮されています。