アウトドアをライフワークにするRADIO DJ。ラジオのパーソナリティー、テレビ番組のMC、モデル、ミュージシャンとしても活動中。特に好きな遊びは魚釣り、スノーボード、スケートボード、キャンプ、登山など。
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「砂金採り」と聞くとアメリカのゴールドラッシュや時代劇がイメージされますが「現代でもじゅうぶん採れる!」と言ったら、みなさんは驚くでしょうか。私も取り組んでみるまで半信半疑でしたが、今ではポイントに出かけるたびに必ず砂金を採っています。しかし、丸一日かけても採れるのは0コンマ数グラム程度。かける労力に対してまるで儲かりません。だけど、それがいいのです。儲からないからこそ、自然界から元素のひとつである金を探しだすことに純粋な喜びを見出せます。地球が川に隠した金をみなさんも探してみませんか?
パンニング皿
1個
砂金用ふるい
1個
バケツ
1個
シャベル
1本
スコップ
1本
カッチャ
1本
スナッファーボトル
1個
小瓶
1個
砂鉄用磁石
1個
ウエーダー
1足
砂金の採集道具で絶対に必要なのは4点。砂利をすくうスコップと砂と砂金を選り分けるためのパンニング皿、砂金を一時的に保管するスナッファーボトルと砂金を収納する小瓶です。そのほかの道具は砂利を効率よく採集したり、体の負担を減らすためのもの。必要に応じて買い揃えていけばよいでしょう。砂金を採る際の服装は、水温の高い時期であれば半袖にハーフパンツで十分ですが、水温が低い時期はウエーダー(胴までの長靴)があると体を冷やしにくくなります。
砂金採りのフィールドになりえるのは、上流に金の鉱脈がある川。いちから自分で開拓してもよいですが、最初のひと粒を手早く手にするなら、過去に鉱山があった場所の下流側がよいでしょう。自分の居住地の都道府県名と「金鉱山」といった言葉で検索すると、家から数十kmの場所に金鉱山の跡が見つかるはずです。
現地に着いたら川の様子を観察します。砂金は鉱脈が洗われると流れに乗って下流へ向かいますが、比重が大きいため砂粒よりも先に沈降します。川のなかのポイントでいうと、川のカーブのインコース側に集まることが多いと言われています。
川底の質も重要です。砂底の川だと、重たい砂金は砂粒の間を通って手の届かない場所に沈み込んでしまいます。しかし、川底に岩盤があると砂金は岩盤で止まります。
砂金を掘る前に注意したいのが環境への配慮です。一般に砂金を採って罰せられることはありませんが、大規模に川を改変するような掘り方は慎みましょう。もちろんレジャー客や釣り人など、ほかの川の利用者への配慮も忘れずに。
もうひとつ、忘れてはいけないのがポイントの秘匿。たとえ自分で開拓した場所であっても、必ずそのポイントを共有している他の愛好家がいるものです。誰かに教わったポイント、自分で開拓したポイントを問わず、場荒れを防ぐためにポイントは明かさないのが砂金採りのマナーです。
また、自分が採集しようと考えている場所が国立公園など鉱物の採集が規制されるエリアにかかっていないか事前に確認しましょう。
比重が大きい金は砂粒が流れるような状況でも沈降してそこに止まります。砂金を効率よく採るコツは、そんな砂金が溜まる場所を見つけること。具体的には、一度入り込むとなかなか出ていけない岩盤の割れ目や、流れが当たって澱む大きな岩の裏側・上流側、増水時に水に浸かる植物の根方などです。こんな場所の砂利をすくって、水のなかで選鉱してみましょう。
ポイントに目星をつけたら、スコップなどで砂利を採集します。小さなシャベルで砂利をすくって、そのままパンニング皿にのせてもよいですが、作業効率を高めるなら、大きなスコップで砂利をすくってバケツに入れ、まとめて川に運んでから選鉱すると往復の手間を省けます。
砂金を含む砂利の状況も千差万別です。大きくすくえるスコップ、小場所で活躍するシャベル、狭い岩盤を掘りやすいカッチャなど何種類かあるとよいでしょう。
川までバケツで砂利を運んだら、川岸でふるいとパンニング皿を使って大まかに選鉱します。まずはパンニング皿にふるいを重ね、そこにバケツのなかの砂利を入れます。重ねた状態のふるいとパンニング皿を水面に浸け、砂利をゆすって通水するとパンニング皿に細かい砂利だけが残ります。砂金が含まれていれば、パンニング皿に入った砂利の底近くにトラップされているはずです。
ふるったあとに残る大きな石は、もともとあった場所に戻して穴を埋めておきましょう。
パンニング皿に残った砂利をさらに選り分けていきます。このステップで重要なのが砂利の粒の大きさと金の比重を意識すること。水中に沈めたパンニング皿を細かくゆすって砂利のなかに水を含ませると、小さくて重たい金は砂利の間を通ってパンニング皿の底のほうに溜まります。つまり、皿の上のほうは軽くて大きいもの、底側に小さくて重たいものが集まります。上側にある軽くて大きいものだけを流していけば、最後に金だけが残るわけです。
ですから、細かく選鉱するときは皿のなかの砂利の天地が入れ替わる動き(チャーハンを炒めるような動作)は避け、皿の底に金を残したまま上層部だけ流すような動きが必要です。ここで活躍するのが、パンニング皿に付けられた階段状の突起。水中で細かくゆすりながら砂を捨てていくと、階段状の突起の底に金がトラップされます。金をこの窪みにとどめたまま、金の上に載った砂だけをサラサラと流すイメージでゆすりましょう。
砂を洗い流していくと、やがてパンニング皿の底には比重の大きい砂鉄(黒くて重い砂)だけが残ります。私の通う場所では、金が採れるときは必ず砂鉄が皿の底に残ります。砂より比重の大きい砂鉄が残る場所は、同じく比重の大きい金も溜まっているというわけです。そのため、皿に砂鉄も残らないときは金が含まれていることは稀です。川砂に砂鉄が含まれる川では、皿に砂鉄が残るかどうかで有望な場所かどうかがわかります。
比重の大きい砂鉄だけが皿に残ったら、いよいよそのなかから砂金を選り分けます。パンニング皿に少量の水を取り、皿をゆすって皿のなかに円を描く水流を作ります。すると比重の小さい砂が先に流され、その次に砂鉄が流されます。そして、砂鉄よりも重い金だけが、皿の底にポツンと残ります。言葉で説明すると難解ですが、実際にやってみれば一目瞭然。砂と砂鉄と金は、目で見てわかるほど重さが違います。
皿の底に残った金は、スナッファーボトルで吸い込んで保存します。砂鉄は捨ててもよいのですが、私は砂鉄も収集しています(いつか鉄の塊をつくってみたい)。
なお、よく砂金と間違われる金色の鉱物に雲母がありますが、雲母はとても軽いので、このステップにくるまでに洗い流されているでしょう。
砂金採りを終えたら、その日スナッファーボトルに集めた砂金をきれいに洗ったパンニング皿に出し、スポイトなどで吸って小瓶に収納します。小瓶に水を貯めると、瓶の側面がレンズの効果を生み、なかの砂金をよく観察できます。小瓶には採集日と採集地などを書き込んでおいてもよいでしょう。
実践したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
金のもつゴージャスなイメージからはほど遠い砂金採り。砂金が多い川で砂を洗う作業を1日繰り返しても、数十粒の砂金しか得られません。現金に換算するととても労力に見合うものではありません。しかし、天然の元素である金の塊を自然河川から得るのは何にも変えられない喜びと驚きがあります。数万年、あるいは数億年を岩のなかですごした金が、自分の手の中にやってきた、と考えるととても不思議な気持ちになります。私は砂金採りを始めてから、川や地面がちょっと違って見えてきました。この川ならどこに金が溜まるだろう、この砂粒はなんという石だろう、と金以外のものにもセンサーが働くようになったのです。砂金採りの本当の魅力は自然や石への解像度が高まることにあるかもしれません。