農林水産省の外郭団体において約10年、農業・農村の多面的機能を活用した環境教育「田んぼの学校」の普及・推進を担当。平成22年6月に同センターを退職。平成22年7月より、NPO法人くまの木里の暮らし事務局長。農村地域の現場で、廃校を活用した宿泊型体験学習施設の運営に携っている。NPO法人日本エコツーリズムセンター世話人、栃木県グリーン・ツーリズムネットワーク副代表、塩谷町教育委員など。
わたしたちが毎日のように口にしているお米。黄金色の田んぼを車窓から眺めることはあっても、穂が垂れた稲を間近に見る機会は案外少ないものです。豊かに実った稲のまわりには、たくさんの生きものが集まってきます。生きものとの出会いから収穫体験まで、この秋田んぼに出かけてみませんか?
刈取り前の田んぼは水を落としているので、泥んこになるのはちょっと・・・という人も大丈夫ですよ。
お米が生産されている田んぼは、農家の方の私有地でありお仕事の場。近くで眺めるだけならよいですが、自由に入ってよいところではありません。
「収穫体験」や「農業体験」などのキーワードで、見学や体験ができる田んぼをインターネットで検索してみましょう。ミニ田んぼがある公園などもあります。親戚、知人などで稲作をしている人がいればぜひアプローチしてみましょう。
田んぼまわりの様子を楽しみながらよく観察してみましょう。秋の田んぼと言えば、なんと言ってもトンボ!じっとしていると帽子や洋服の上に止まります。全体の色、羽や胸の模様の違いなど、そっと捕まえて、種類の違いをよく観察してみましょう。
イナゴやカマキリ、クモやカエルにも出会えるはずです。空を見上げると電線にスズメがたくさん並んで稲穂を狙っているかもしれませんよ。
畔(あぜ)にはどんな草花が咲いているでしょうか。彼岸花(ヒガンバナ)がたくさん植えられている田んぼもあります。なぜ田んぼの畔でヒガンバナがたくさん見られるのか、調べてみましょう。
田んぼまわりで農家の人に会ったらあいさつをしましょう。地域をよく知る人と一緒に楽しめるとよいですね。
わたしたちが毎日のように口にしている白いお米は、どこにどんなふうについているのか、稲穂をよく観察してみましょう。
稲穂をとらせてもらえたら、一粒の種から育った一本の稲に、何粒くらいのお米がついているのか、数えてみましょう。
では、お茶碗一杯分のお米は、稲が何束くらい必要?収穫を年に一回する場合、一年分のお米を確保するには、田んぼの広さはどのくらい必要?小学校高学年になると、そんなことを考えられるようになるかもしれませんね。
収穫体験ができる機会があれば、ぜひ参加してみましょう。
刃がギザギザになったのこ鎌を利き手に持ち、空いている手で一掴みにした稲をざくっと刈ります。のこ鎌は手前に引くように使います。ざくざくざくざく、素早くテンポよく刈っていく農家の方の手わざは必見!
刈った稲は両手で持てるくらいの量を束ねて、根元の方を藁や麻紐などで縛って干します。刈った稲がバラバラになるとあとの作業がしづらいので、指導してくれる方のお話をよく聞いて、丁寧に作業しましょう。
稲刈りのあとも、わたしたちが見慣れた白いお米の姿になるまでには、乾燥・脱穀、もみすり、精米という作業があります。どんな作業をするのか調べてみるのもよいですね。
稲穂や稲の葉が肌に触れて、ちくちくしたりかぶれることがあるので、長袖・長ズボンの服装で、首元もタオルなどで覆っておきましょう。のこ鎌を握る手にはすべらない軍手がよいです。
わたしたちが毎日のように口にしているお米がどんな様子で育っているのか、実際田んぼに出かけるとたくさんのことが分かります。
全身で田んぼの空気やにおいをたっぷり感じたり、のんびり散歩したり、写真を撮ったり、スケッチをするのもお勧めです。また、田んぼはたくさんの生きものが集まるにぎやかな場所でもあり、虫捕りや観察も楽しめます。
そして、田んぼのことをよく知っているのは何と言っても農家さん。農家の方のお話を聞くことで、たくさんの気づきや発見があるでしょう。