現職は国立大学法人 東京学芸大学・教授/学長補佐。主な研究分野は、ホリスティック理論を基盤とした野外環境教育、サステイナビリティ教育、体験学。東京学芸大学学部・大学院を修了後、カナダに留学。サスカッチュワン大学にて修士号、ブリティッシュ・コロンビア大学にて博士号を取得し、2008年4月より現職。日本野外教育学会常任理事、NPO法人 東京学芸大こども未来研究所(理事)、(公社)日本キャンプ協会運営委員、(一社)教育支援人材認証協会(事務局長)、青少年体験活動奨励制度<文科省委託事業>運営委員(委員長)などを兼任。主な執筆に「野外教育の理論と実践」(責任編集/分担執筆:杏林書院)などがある。
最近の脳科学や心理学の研究成果から、「今ここ」に意識を向けることで、リラックス効果を高め、ひいてはその人のもつポジティブ度を上げることが分かっています。その、「今ここ」を意識する方法として、自分がしている呼吸に集中するというやり方があります。また、意識的に身近にある自然に目を向け味わうこともリラックス感を引き出し、さらにポジティビティを高める効果があります。ポジティビティを向上させることは、その人の視野を広げてより創造的にし、知的能力、身体的能力、社会的能力(人間関係などのソーシャルスキル、等)を高めることにつながることも実証されています。
その呼吸と周囲自然に意識を向けるという二つをミックスさせたアクティビティをここで紹介します。特別なものは必要ありません。あなた自身が、身近にある心地よい自然を感じられる場所(スペース)でちょっと立ち止まって行います。またはゆっくり歩きながらやってみても良いでしょう。
どこか気持ち良く自然を感じられる場所で、まずは意識して腹式呼吸をしてみます。普段、無意識にしている呼吸の吐く・吸うのプロセスを意識的にやります。呼吸を意識するために、目を閉じてやると良いでしょう。
具体的には、
①鼻から大きく空気を吸って(約5秒:お腹をふくらます)
②取り入れた空気をゆっくり吐き出していきます(約7秒:お腹をへこます)。
③先の①吸うと②吐くの各プロセスをよく意識しながら3~5回くらい繰り返します。
回数は目安なので、自分にとってその時々で適当だと思う数でかまいません。
ステップ1を終えて次に大きく空気を吸う時に、目を閉じて、以下を行います。
①身の回りの自然の匂いをかぐことに意識して、実際に匂いを感じてみましょう。味わったらゆっくりと息を吐き出します。
②次に空気を吸うときは(深く吸う)、口から吸って取り入れた空気を口内で味わうイメージをしてみましょう(実際には味はしませんが)。
③続けてまた空気を吸うときに(深く吸う)、今度は周囲の自然の音に意識を集中して耳を傾けてみます。鳥や虫などの声、木や草花の葉ずれの音、水の流れや海の波の音、風の音、空の音など身を置くところによってそれぞれ聞こえてくる音は違うと思いますが、できるだけ多くの自然の営みの音を聞き出してみましょう(音に集中している時は、呼吸は自然にするのでかまいせん)。
続けて、今度は目を開けて、以下を行います。
④空気を大きく吸う時に、自然を織りなすさまざまな色を見ることに意識を向けます。樹木・花・動物などの動植物、木漏れ日、空や雲、大地、海・川・湖の水の色など多様な色があることと思います。自然を構成する個々の要素の色を見ることに加えて、前方に広がる景観を全体的にとらえて、どんな色をしているのかということを感じてみるのも良いでしょう。
⑤また空気を意識的に深く吸うのと同時に、次は自分を取り巻く自然を肌で感じてみます。手足や顔の肌に意識を集中して、そこにあたる空気や風などを感じてみます。天気がよければ、太陽の晄を肌に感じることもできるでしょう。
⑥最後に、自分を取り巻く自然を総体的にとらえて、これまで使ってきた五感(匂・味・聴・見・触)のすべてを使い味わうように試みてみます。周囲で息づいている自然の営みを全体として見ながら、もう一度、匂いをかいでみたり、空気を口に入れてみて味わってみたり(実際には味はしませんが・・・)、自然が奏でる音を聴き、肌で光や空気の感触を確かめてみます。
ステップ2の周囲の自然とシンクロするアクティビティを通じて、自分が地球の生態系の一部であり密接につながっていて、いつもその大地の営みに生かされていることを思い出しましょう。そして、周りの自然~地球に対して心の中で「(いつも)ありがとう」と語りかけててみます(自然の美しさや優しさ、癒やし、大地の恵みや水・空気・エネルギーなど、地球が私たちにもたらしてくれる無償のサポートに対して感謝を伝えてみます)。
「感謝」の気持ちを持つことも、ポジティビティを向上させる有効な方法であることが分かっています。
上のステップ1~4を、公園や並木道、水辺などをウォーキングしながら、またトレッキングや登山中にするのも効果的です。ただし、止まってやる時の様に目を閉じるのは危ないので、安全上、目は開けながらするのが良いでしょう。
人は座っている時よりも、ほんの10分位だけでも歩くことで脳は活性化され、またポジティビティが高まることも実証されています。自然を感じながらそれを実施することで、相乗的な効果が期待されます。
ここで紹介したシンプルなアクティビティを通して、地球/自然につながり、そのリズムに自らの生命の営みを同調させることになります。そして、あなたのポジティビティを意識的にも無意識的にも引き出すことにつながります。その心身への効果は冒頭で紹介した通りです。
より創造的な日々を送るための、また疲れやストレスを感じているような時に、生きる上での活力を得る種として試してみて下さい。
Nwalkerさん 気持ち良さそうな場所ですね。心のストレッチみたいな感じですよね。