フリーの編集者。実用書をメインに活動。趣味は物作りと、生き物観察、釣りや登山などアウトドア。釣り好きが高じて、築地に通い魚食普及を推進するおさかなマイスターの資格を取得。HP:http://funfun-design.com/
耳石とは、脊椎動物すべてに備わっている平衡感覚を司る器官です。平衡感覚は、たとえば頭や体を傾けたら体が傾いたと脳が認識する感覚のこと。平衡感覚がなくなると、まっすぐに立てなかったり、歩けなくなってしまうため、生きていくためには重要な器官です。
魚の耳石は、木の年輪のようにできる模様が特徴です。この模様から年齢を推定したり、過ごしてきた環境の水温や、餌の量などを調べることができ、実際に1980年代からは放流後のサケやマスの生態の研究に役立ています。
この「耳石」は、自宅の食卓でも簡単に耳石を採取することができます。研究者のようにチャレンジしてみましょう!
耳石は魚の目や脳の近くにあります。頭がついている魚を用意しましょう。写真は煮付けにしたもの。食べ終わったら、頭だけ残しておきます。
キンメダイのほか、イシモチ(シログチ)や、カサゴなども耳石が大きく取り出しやすいためおすすめです。
頭部の身を骨からそっと手でほぐします。指で取りにくい身は、お箸の先など先端が細いものでかき出しましょう。顎などは破棄し、目のまわりの骨だけにします。水道水で軽く水洗いし、キッチンペーパーで水分を拭います。準備ができたら、手で頭の骨を左右に割ってみましょう。とても小さな脳が現れているのがわかります。この写真には、すでに耳石が見えています。どこにあるかわかるでしょうか。答えは、3枚目の写真をクリックしてましょう。
魚の骨はとってももろく弱いので、やさしく取り扱いましょう。魚によって耳石の場所は異なります。
耳石を見つけたら、お箸またはピンセットでそっと取り出します(耳石は頭部の左右に一枚ずつあります)。取り出した耳石は、さっと水洗いをしてキッチンペーパーなどで水分をとりましょう。
水洗いをする時に、耳石をなくさないように注意しましょう。魚によっては耳石が脆く、壊れやすいので強くつまむと割れることがあります。
耳石を色の濃い台紙の上に乗せてスマホで撮影してみましょう。またはデジカメのマクロモード(接写モード)で撮影して、拡大すると、耳石の模様が見えるのがわかります。この模様が年輪。魚の年齢がわかる模様です。顕微鏡で見ると、魚が1日に成長した過程を耳石に残した「日輪」を調べることができます。この日輪のようすから、さまざまな情報を得ることができます。この写真のキンメダイの耳石は大きく目でも年輪が見やすいですが、魚によっては大型でも耳石が小さかったり、年輪の模様がほとんど見えなかったり魚種によってさまざまあります。
年齢や成長過程、環境の情報が詰まった耳石。耳石採集は、生き物のひとかけらのパーツから多くの情報を調べて分析をするということの体験ができるでしょう。耳石の採集方法は、今回紹介した方法のほかさまざまなやり方があります。耳石は脳や目のそばにある、ということを意識していると、魚種によって耳石がある場所のパターンがわかってくるはずです。
また、魚の頭は、食べるところが少ないため破棄されがちですが、頭部や頬には特においしい肉がある部分です。破棄せずに美味しいくいただいたあとに、魚の研究をしてみてはいかがでしょうか。
ときときさん
質問ありがとうございました。耳石から判断する場合は、準備と設備が揃えば可能ですよ。
ちなみに、マダイの年齢を推測するには透明で見やすいウロコの方がよいとされていたそうです。ですが、耳石をグリセリン水溶液に浸すことで、透明にして調べることでより正確な年齢が推定できるという考えもあるようです。
井上さん 素敵な耳石ですね。赤の紙の背景が縁起の良さを増してます。
ところで耳石から推測して、この睨み鯛は何歳ぐらいかわかるのでしょうか?
なんでもしりたいガネさん
同じような疑問を持った多くの研究者が、実際に環境が異なるものとそうでないものの耳石を調べています。
耳石の模様(輪紋)の形成には、魚の過ごした環境(水温など)も影響するそう。ただし、確認しやすい魚種とそうでないものがあるようです。
ですので、夢見心地で過ごした魚と、冒険心たくましく過ごした魚とでは耳石の模様は異なるでしょう。
模様から過ごしてきた環境や、どれだけエサを食べたかなんてことがわかるというところが体の中にまるでその生き様が刻まれた遺跡があるようでとてもロマンチックと思いました。さてその耳石の模様というのは冒険心たくましく生きたお魚や、夢見がちに過ごしたお魚やらでは模様が変わったりするのでしょうか