フリーの編集者。実用書をメインに活動。趣味は物作りと、生き物観察、釣りや登山などアウトドア。釣り好きが高じて、築地に通い魚食普及を推進するおさかなマイスターの資格を取得。HP:http://funfun-design.com/
スーパーで売られている魚は、切り身の状態か調理しやすいように魚のウロコが取られている状態です。しかし、本来魚はウロコをびっしりと体に備えています。
魚のウロコは、水の浸透圧の調整を助ける役割をしたり、保護の役割を持っています。観察の材料としては成長のようすや環境、魚種を判別するなど、魚を研究する上で役立つデータのひとつです。ウロコという小さなパーツから、大海原で暮らしていた魚を想像してみましょう。
スーパーではウロコつきの魚など、加工されていない魚は「丸魚」という表示されて売られています。ただし、丸魚でもウロコの処理がされて販売されているお店であれば、店員さんにウロコつきの魚を売ってもらえるか聞いてみましょう。
町のお魚屋さんや、海が近ければ漁港の直売所は、ウロコつきのものが入手しやすいでしょう。また、魚を専門に売るお店や漁港の直売所はスーパーなどでは取り扱いづらい、旬の魚や、獲れる数が少ない魚が売られていて、魚選びにおすすめです。
入手する魚を選ぶことも面白さのひとつです。観察しやすいウロコがある魚を選ぶのも喜寿のひとつですが、それと同時にウロコの観察したあとに食べたい魚を選びましょう。
写真の魚はキダイ(連子鯛)。
入手する魚を選ぶことも面白さのひとつ。体表にヌメリがあるものや、小さくトゲトゲしたものなど、さまざまなウロコがあることを知ることができるでしょう。丸魚は内臓もそのままです。内臓の生臭さが台所に残るのが心配なら、アルコール除菌スプレーを活用したり、内臓は捨てるまでビニール袋に入れて冷凍庫で凍らせておくとよいでしょう。
魚の体にあるウロコを取ってみましょう。取り方は、カンタン。観察用では指でつまんで数枚引っ張ってみましょう。※食べるために残りは一気にウロコおろしで、または包丁の刃を立てて尾から頭にかけて動かしてウロコをとりましょう。尾から頭へと、ウロコを逆立てるイメージで行います。このとき、ウロコは飛び散りやすいので、ビニール袋に魚を入れてビニール袋の中でウロコを落とすと台所が汚れにくくなります。
魚の体を上からみると、一本線が入っているのが確認できます。これは側線といって、実は感覚器。人間でいえば「耳」のような役割を果たすとされています。この側線の上にもウロコがあり、ここには側線鱗(そくせんりん)というものがあります。このウロコには孔が空いているものがあり、孔が空いているウロコを数え、種類の特定に役立てたりします。※年成長が確認できる耳石の輪紋と合わせて調べることもあるようです。
ウロコを一枚採集したら、空にかざしたり、ライトがあるところで観察してみましょう。カメラで撮影するとあとあとじっくりと観察することができます。
私たちが普段、食べている魚の種類は硬骨魚類がほとんどで、硬骨魚類のウロコは櫛鱗(しつりん)と円鱗(えんりん)に分けられます。上の写真はキダイの櫛鱗。円鱗と違って、櫛鱗は、小さなトゲが備わっています(写真では親指に隠れている部分)。
ウロコの模様を「鱗紋(りんもん)」と呼び、樹木の年輪のように、年齢と成長具合をチェックすることができるデータ部分になります。
高性能の顕微鏡があれば、より鱗紋がはっきりと見ることができます。魚を研究する人たちはこの鱗紋や耳石などを顕微鏡で観察します。
家庭でもできるウロコの採取。夕飯の食材にウロコつきの魚を選ぶだけ。もちろん自分で釣ってもよいでしょう。その場合は堤防でよく釣れるメジナなどがおすすめ!大きければ大きいほど、ウロコもしっかりしていて観察しやすいでしょう。採取したらスマホで撮影するなどして『やった!レポ』に投稿してみましょう!
同じ生き物でも、我々はウロコを持ちません。多くの哺乳類には体毛に覆われ、鳥には羽が、魚にはウロコが備わっています。それは環境に対応するための生物の進化の結果。私たち人間が他の生物を知ろうとするときに、生物の体の小さなひとかけらに注目することが、大きなヒントになります。複数の魚種を入手(または購入)できるようなら、それぞれのウロコの形を見比べてみましょう。ウロコの形と魚の生態の関係や系統がだんだんわかってくるはずです。週末など時間がとれる時に食材(生き物)をさばいて調理して食べる、というチャレンジも日常の中でできるちょっとしたイベントにしてみましょう。
鱗の美しさと体を守る柔軟性を再認識しました