グレーティブ合同会社という小さな会社を経営。専門は動きのあるWebサイトの制作だが、ライフワークとしてWebデザインのリサーチをしている。長いことインドア人間であったが、子供の成長とともに自然に目覚め、キャンプに挑戦したり、水生生物の飼育をしたりなどアウトドア的なことにも関心がでてきている。twitterは @kara_d
アクアテラリウムというのは、アクアリウムとテラリウムが合わさったもので、水生生物と陸上生物の過ごす水辺を再現したものです。
前回、アクアテラリウムによる水生生物の飼育環境をつくってみました。これで完成! と言いたいところですが、アクアテラリウムに完成はありません。水槽の環境が悪くなると、たちまち自然の循環も機能しなくなり、みるみるうちに水質も悪化していきます。そして、生物も死んでしまうのです。
そこで今回は、アクアテラリウムの真骨頂ともいうべき、日々のメンテナンスについて解説します。小さな自然を作り上げることで、普段、循環している大自然への見方が変わるでしょう。
アクアテラリウムで暮らす生き物にとって、理想的な状態は何でしょうか?
常にピカピカの水槽が最高の環境かというと、必ずしもそうではないということが、水槽を観察していると見えてきます。
例えばエビを飼育したとします。エビは、水草についたコケを食べますが、それだけでなく、水槽のガラスに発生したコケも食べます。つまり、人間から見て汚れているように見える状態はエビにとって、それほど悪い環境ではないかもしれません。
しかし、水槽にコケがついて中が見えにくくなっている状態は、あまり見た目的によろしくありません。まことに人間都合な発想ではありますが、水槽のガラス部分はきれいにしましょう。
水槽のガラス面をキレイにする道具は、スポンジが棒についたようなものを使います。これはペットショップなどで売っています。買ってきて使ってもいいのですが、今回は手作りしてみましょう。すごく簡単に作れて、コストも低いです。
まず、割りばしを用意します。コンビニなどで余分にもらったもので構いません。これにティッシュペーパーを巻き付けて、輪ゴムで固定します。
これで完成。あとは、水槽のガラス面をきれいにするだけです。
水槽のガラス面にコケが付着し、一見汚れているような状態は、実はそれほど問題ではないことがわかりました。問題はもっと見えないところで発生しています。生物が食べ残したカスや糞などから発生するアンモニアの増加は、見た目にはわかりにくいですが、生き物にとって確実に悪い環境への道を進んでいきます。そして気づいたら生き物が全滅……なんてことも。自然の循環能力を信じる小さなアクアテラリウムには、一旦悪化した環境を立て直す手段はありません。
そこで重要なポイントとなるのは、定期的な水替え。時期については汚れたらということになるのですが、心配であれば定期的にアンモニア試薬
http://spectrumbrands.jp/aqua/fishkeeping/special/water/water03.html
などを使って水質検査をしてみるのもいいかもしれません。
水替えはなんだか放置状態で自然の循環を目指すアクアテラリウムと相反しそうですが、そうではありません。自然界は外から風が吹いたり、雨が降ったりと意外と環境の変化にさらされているものです。定期的に雨が降っているものだと仮定してちょっとずつの水替えを日々行っていくのが、水質を安定させ、生物を長生きさせる秘訣のひとつと言えるでしょう。
水替えは、少しずつ行い、スポイトのようなもので底から水を吸い取って、あらかじめ汲み置きしておいた水を補充するというやり方が楽なのでおすすめです。
実は、筆者は水槽で飼っているエビに対して餌をほとんどあげたことがありません。メダカを飼っていたころは、メダカ用に耳かき1杯ほどの餌をちょいちょいあげていましたが、それ以外にも発生したプランクトンをつまんだりしていたようです。
エビに関しては数週間に1回ごほうび程度にメダカの餌をあげたりしていますが、おそらくなくても平気だとは思います。実際、エビは常に何か藻をむしったり、底にある沈殿物を口の中に入れているようで、餌は豊富にあると思われます。ただし、水槽立ち上げ当初、コケやプランクトンが増えてくるまでは、ちょくちょくあげてみるといいかもしれません。ヤマトヌマエビは、水草に生える緑色の藻のようなものが好きなようでした。
餌は、水質の安定という観点から最も気を付けるべきものの一つと言えます。食べ残した餌がプランクトンの餌食になればまだいいのですが、放置され、腐敗が始まると、水槽にいい影響を与えない存在になります。もし食べ残しの餌が発生したらスポイトで吸い取るなどして除去しておきましょう。
長いこと飼育を続けてきた水槽の水面付近をよーく見てみると、たまにチッチッと動く小さな粒が見えることがあります。これはミジンコなど動物性プランクトンです。おそらく水草に卵がついてきて、それが繁殖したのでしょう。放っておくと少しずつ増殖していきます。
水槽内でメダカを飼育していたころは、このミジンコのようなプランクトンをメダカが食べていたりしました。エビについては観察していますが、ミジンコをつまんで食べたという現象はいまのところ起きていないので、生きているものを食べたりはしないのかもしれません。
水槽の底に貼りついて、地面にあるものをもぐもぐと食べるので、プランクトンの死骸を食べているだろうと推測します。
例えば田んぼなどエビがいるような場所では、プランクトンもいるというケースは普通にあることなので、あまり心配する必要はないと思われます。
水槽に発生する微生物のうち、最も嫌われるものの一つは糸のような微生物のミズミミズではないでしょうか。
5mmほどの長さで細くてうねうね泳ぎます。メダカはミズミミズが好きなので食べてしまいますがエビのみを飼育している水槽で発生すると、いつまでもいることになります。
ミズミミズが発生したイコール水質が悪化したというわけでは必ずしもないと思いますが、スポイトで吸い取って、新鮮な水を追加する時期がきたバロメータととらえて筆者は水替えなどを行っています。
水槽の中にいる水生生物にばかり気を取られていると陸上の植物がとんでもなく成長していることがあります。水は天然の肥料により養分が豊富にあるため、ハイドロカルチャーで生育させている植物はぐんぐん育っていきます。アクアテラリウムでは植物の育成と水生生物を共存させているため、植物が増えすぎると水槽が狭くなります。
そこで、1年か2年かに1辺くらいは、取り出して剪定や植え替えなどをすることをおすすめします。ある程度育った植物を卒業させて鉢植えしてもいいかもしれません。新しい観葉植物を100円均一などで仕入れてきて植えてもいいでしょう。
今回記事執筆にあたり、植物を植えているハイドロボールの取り換えも行いました。すると水槽立ち上げ当時のフレッシュな状態に戻り、水槽内も広くなりました。
水槽の上に生えている植物の葉が枯れ、水面に落ちてしまったものを放っておいたのですが、しばらくするとエビが表面を食べ始め、葉脈だけになってしまいました。こういうイベントを見ていると自然の分解力というもののすごさを感じます。
死はある日、突然訪れます。いままでうまくいっていた水槽が、ある日の生き物の死をきっかけに次々に死亡していく。
そんな時も飼っていれば起きるかもしれません。亡くなった生き物は土に埋めるなどして供養しましょう。
振り返れば、最近ちょっと水替えを怠っていたかもしれないとか、異常な動きをしているときがあったなど前兆が思い出されるかもしれません。しかし、ここもまた一つの自然。水槽を綺麗にしたらまた次の生き物を飼い始めましょう。
アクアテラリウムの立ち上げはワクワク楽しいもの。さらに継続させるテクニックや考え方を身につけるとより面白いはずです。一度立ち上げたら、メンテナンスの方法や結果などをメモしていくこともアクアテラリウムの記録として楽しめるでしょう。
立ち上げまでの構想や自然の循環を構築したアクアテラリウム、やってみたら写真に撮って「やった!レポ」に投稿してみましょう!
今回紹介したアクアテラリウムは、小さいながらも自然の循環システムを作るということをテーマにお届けしました。しかし、ろ過装置などの科学機材を使わない環境づくりは意外にも難しいということが理解できると思います。
そこで、今度は近くの自然に目を向けてみましょう。小さな道端のどぶ川は、汚いながらも何故いつも生き物が生きているのでしょうか。雨や川の支流から新鮮な水が流れてきているおかげかもしれないですし、ひょっとしたら生活排水がうまいこと栄養を運んできてくれるのかもしれません。
そんな風に意思のない天才によって作られた、かなり長持ちする小さな自然をじっくりと観察してみると、アクアテラリウムの運用ノウハウがたっぷり詰まっていることに気づくかもしれません。自然はよくできていますね。