グレーティブ合同会社という小さな会社を経営。専門は動きのあるWebサイトの制作だが、ライフワークとしてWebデザインのリサーチをしている。長いことインドア人間であったが、子供の成長とともに自然に目覚め、キャンプに挑戦したり、水生生物の飼育をしたりなどアウトドア的なことにも関心がでてきている。twitterは @kara_d
アクアテラリウムというのは、アクアリウムとテラリウムが合わさったもので、水生生物と陸上生物の過ごす水辺を再現したものです。
身近な水辺というと、川と川辺ということになります。近くに川がある方もない方もいるでしょう。ひょっとしたら、身近にあるものは観葉植物という方もいるかもしれません。
アクアテラリウムをうまく作ると、生き物がそれぞれ生活に必要な活動をしている結果として、ほかの生物にとって必要なものが供給できている状態になり、小さな自然を生み出すことができます。さあ、さっそくやってみましょう。
アクアテラリウムを作る場合、陸上部分に必要なものは土と植物、そして水生エリアでは水と底砂、少々の水草と生き物たちです。
動物にとって必要な餌は微生物の活動によって作り出されます。そして微生物の活動によって、植物の生育に必要な栄養分が発生します。この循環が、全体として幸せな空間になるという構図です。
つまり、毎日餌をあげたり肥料をやったりという手間をかけるタイプの「飼う」とは正反対の「飼う」を目指します。目標はほとんど手間をかけずに、中の生き物たちがいい感じに生きていけるように整備してあげます。
水槽は大きなものでも小さなものでも構いません。筆者は、20センチ四方の小さな水槽を愛用しています。下半分が水生生物などを飼育可能なエリアで、上半分(正確には上部の1/2)が陸上エリアということが可能な作りにしています。
陸上エリアには、ハイドロカルチャー(水耕栽培)による植物の栽培を可能にする容器をセットしています。この容器の下には穴が開いていて、下半分エリアの水がひたひたになると、自動的に上部にあるハイドロカルチャーエリアにも水が行き届く仕組みです。
今回利用しているのは、水生部分と陸地部分を分けることができる専用の水槽を使っていますが、普通の水槽でも、水のエリアに石などで高さを作り、その上に浅めの鉢を置くことで同様の仕組みを実現できます。
まずは、水生エリアから作っていきましょう。
水槽によく洗った底砂を敷きます。2~3センチくらいでよいでしょう。そのあと、水槽にあらかじめ用意しておいた水をそっと注いでいきます。
一気にドバっと入れると砂が舞い上がってしまうのでゆっくり入れましょう。
ただ、水で暮らす生き物を飼う上で、水道水をいきなり水槽に入れてしまうのは問題があります。水道水には塩素が含まれており、水の中で暮らす生き物にとっては有害な物質です。そこで、汲み置きして一晩おいたものを使うか、市販のカルキ抜き剤を利用するということになるのですが、筆者のおすすめの方法を書いておきます。
筆者は、2Lのペットボトルいっぱいに水を入れ、そこへカルキ抜き剤を入れて一晩置いておきます。これで完成です。水槽の大きさが小さく、加えてそんなに多くの水を一度に必要としないので、必要なときにペットボトルから注ぐという程度の利用方法だからです。
底砂は、珪砂と呼ばれている種類のもので、水槽のセットについてきたものを洗って使っています。その辺の砂利でもよいでしょう。いずれにしても、よく洗い、ゴミを取り除いておきます。極端な話、底砂はなくてもいいのかもしれませんが、水草の安定のためや、ろ過装置を使わないのでバクテリアのための棲み処として用意しています。
水槽に底砂と水を入れたら、続いて水草をセットします。浮いてしまうような水草は、針金で巻いたり、石で固定しましょう。逆に浮草を使う場合は固定を気にする必要はありません。水草を入れないという選択肢もありますが、水草は水生生物に酸素を供給する役割もあるので、入れておきましょう。
水草は淡水に生息するものであればなんでも OK。ただし、水温の変化に強く丈夫なものがよいでしょう。
筆者のおすすめは以下の3点です。
- ウィローモス
- アヌビアス
- 金魚藻
いずれも丈夫で光を当たる環境だと、ぐんぐん増えます。特にウィローモスは、放っておくと水槽を埋め尽くすほどになってしまうので、定期的な剪定が必要です。水草に関しては最初に飼育を始めたときのものをずっとそのまま使っているくらい長持ちします。
水草を購入したり、川で採取したときは一旦洗うと思いますが、それでも小さな微生物や藻のたぐいは葉に付着しており、水槽を棲み処として活動を始めます。これら微生物がろ過装置の役割を果たしたり、餌になったりします。
続いて、陸上部分を構築しましょう。
陸上部分は、植物を植えます。植え方はハイドロカルチャーといってハイドロボールという人工培土を使った水耕栽培をします。なぜそうするかというと、水槽の水につけることで、動物にとって有害ですが、植物にとっては肥料となる物質を吸い取ってくれるからです。
陸地部分に植える観葉植物を用意する必要がありますが、すでに家でハイドロカルチャーとして栽培しているものがあれば、それでも構いません。筆者は100円均一ショップで購入した小さな植物を植えていたのですが、2年が経過してみると全長40cmほどの大きさに成長しています。きっと栄養環境がよいのでしょう。
ハイドロカルチャーで植物を栽培するので、土に相当するのはハイドロボールのみ。念入りに洗って容器に入れ、水につかるようにしましょう。ここでは、肥料などは与えません。植物に関しても通常の鉢植えに植えるような感じで容器に植えます。
水槽にある程度水に陸上部分がつかるような形で配置をしたら、一旦は終了です。落ち着くのを待ちましょう。
ハイドロボールはしっかりと洗いましょう。というのも、普通のハイドロカルチャーと違って、植物を育てる水と生き物が住む水を共有するので、ちょっとデリケートに考える必要があるのです。
例えば農薬などが入っている人工培土ですと、虫だけでなく、エビも一緒に駆除してしまうかもしれません。
植物を人工培土に植え、底砂を敷き、水草を入れて水をはったら、数日置いておきましょう。
水がなじんで、おそらくは水草についていたであろうバクテリアが繁殖し、生き物が住みやすい状態になっている必要があるからです。
筆者は最初は1週間後くらいに、メダカを入れ始めました。
さて、1週間が経過するころには、水も落ち着き、ひょっとしたら1日目よりも水草がわずかに育っているのが確認できるかもしれません。
そしてよく目を凝らすと、水草に卵がついていたのかもしれない、ミジンコのような小さな微生物が活動しているのが見えるかもしれません。こうなってきたら、エビを入れるタイミングといえます。生物が生活可能な酸素があり、それなりの水質になっていることが確認できたからです。
水槽は特に生物はまだ入っていませんが、水草や植物はいるので、自然と同じように朝ライトをつけて、夜ライトを消すという形で飼育を続けましょう。
水槽に入れる生き物は何がよいのでしょうか。
水の中で暮らす生き物は、大きく分けると2つ。淡水で暮らす生き物と、海水で暮らす生き物がいます。海水と淡水が混じり合う汽水域で暮らすものを入れれば3種でしょう。
今回は淡水で暮らす生き物に絞っています。海水で暮らす生物をほとんど放置に近いスタイルで飼育するのは並大抵のことではありません。子供のころ、磯でとってきた生き物を水槽に入れておいたら、次の日には全滅していたなどという経験をした方もいるのではないでしょうか。
加えて、今回のようなアクアテラリウムを作成する場合は、水温のコントロールも行わないため、淡水の生き物である点に加えて、水温の変化にも対応しやすい生き物であることが重要条件となります。
そうなると、一番よいのは、日常生活に近い環境で生息する生物だろうと推測します。日本の水生生物で身近なのは、メダカやドジョウ、淡水のエビなどに絞られます。
今回は
- レッドチェリーシュリンプ
を入れました。台湾産のエビですが、ヤマトヌマエビでもミナミヌマエビでも構いません。エビは3匹程度としました。
エビを水槽へ放流したら、アクアテラリウムづくりの作業は完了です。
熱帯魚屋などでエビを購入するのですが、おそらく一緒に小さな藻と水を入れた状態で渡されるはずです。この水は捨ててしまわないで、水槽に全部入れましょう。エビが最も慣れている水だからです。
アクアテラリウムは、容器や観葉植物、底砂の選び方で自分好みの世界観を作ることができます。自分で作ったら写真にとって、『やった!レポ』で紹介してみましょう。
完成させて、生き物のエビを入れた後は、日々のメンテナンスを行っていくのみ。基本的にはほとんど放置でいいはずです。いい流れができれば、水槽の藻をエビが食べ、その糞によって水草や植物が育つという理想的な循環システムを体験できます。
水は蒸発していってしまうので、減ったら足しましょう。その程度で運用ができます。
最初は水槽内の藻も少ないので、メダカの餌を耳かきいっぱい程度を、1週間に1度ほど入れてあげてもいいかもしれません。
アクアテラリウムは、作るのは簡単ですが、難しいのはその環境の継続にあります。バランスが崩れてしまえば、すぐに水質が悪くなり、生き物は死んでしまいます。
毎日観察して、小さな自然を長生きさせましょう!