虫系ナチュラリスト。身近な自然にひそむ昆虫たちを中心に、いきもの愛あふれる生態写真を撮り続けている。小蛾や蠅、葉虫、蜻蛉などのマイナー昆虫はもちろん、蜘蛛、蜥蜴、蛙、蝸牛、蛞蝓など昆虫以外の「虫偏」の生き物たちに至るまで、広くあまねく愛を注いでいる。ウェブサイト「昆虫エクスプローラ」、ブログ「むし探検広場」管理人。著書「昆虫探検図鑑1600」(全国農村教育協会刊) 。
一見、何もいないように思える公園の木々にも、実は、たくさんのイモムシ(チョウやガ、ハバチなどの幼虫)がひっそりと暮らしています。虫たちは鳥などの天敵から身を守るのに必死なので、とても上手に隠れていますが、幼虫が好みそうな木を選び、幼虫が残している手がかりを見つけ、宝探しをするつもりで根気よく探せばきっと見つかります。うまく幼虫が見つかったら、その見事なデザインや顔つきの面白さを楽しみましょう。食べて育つのが仕事の幼虫たちは、しばらく観察していると、たいてい葉っぱを食べ始めますが、そのしぐさはたいへん可愛いらしいものです。「腹ぺこイモムシを見つけて、顔や食事シーンを観察する」ことを目標に、公園に出かけましょう。
樹木図鑑やインターネットを用いて、イモムシが好む木をおぼえましょう。最もたくさんのイモムシが集まるのはコナラやクヌギ、クリです。サクラ、カエデ、エノキ、ミカンなどでも、さまざまなイモムシが見つかります。それぞれの木の特徴や葉っぱの形をおぼえましょう。
公園に出向いて、おぼえた木をさがしましょう。美しく整備された公園より、ところどころにやぶが残っているようなちょっとワイルドな公園のほうが、イモムシの好む木がたくさん見つかります。木に名札がついている公園だと目当ての木をさがすのにとても便利です。
イモムシの好む木が見つかったら、いよいよ探索開始です。いきなりイモムシを探してもかまいませんが、うまく隠れているつもりのイモムシたちが、どうしても残してしまう手がかりがあるので、それを利用するのが効率的です。その手がかりとは、葉っぱの食べ跡と、毎日たくさん出してしまうフン。
まだあまり変色していない新しい食べ跡や、しっとり湿った新鮮なフンが見つかったら、まず間違いなく近くにイモムシが潜んでいます。
イモムシは、食べあとから少し離れた場所で休んでいたり、フンを出すときに遠くに飛ばしたりするので、手がかりが見つかったら、その周辺も含めて探しましょう。葉や幹に擬態しているイモムシも多いので、だまされないようにしましょう(毛虫や、棘がたくさんはえたイモムシは、毒をもっていることがあるので、見つけても触らないように注意しましょう)。
イモムシが見つかったら、ルーペや虫メガネで観察しましょう。見つかってしまったイモムシは、身を守るために頭をすぼめていることが多いので、イモムシがとまっている葉を折り曲げたりして、顔をじっくり見せてもらいましょう。
胴体の模様も、拡大してみるとたいへん美しいものです。このようにいじくっていると、多くのイモムシは、空腹に我慢できず、葉っぱを食べ始めます。いったん食事を始めると、イモムシの警戒心はうすれてしまうので、もりもり食べる様子をゆっくり観察することができます。
見つけたイモムシは、写真を撮ったり、ノートにスケッチしたりして記録し、帰宅後に、図鑑やインターネットで種類を調べてみましょう。種類がわかれば、そのイモムシがやがてどんな成虫になるのかを知ることもできます。イモムシが成長すると、チョウやガになることが多いですが、時には、ハバチ(蜂の仲間ですが、刺すことはありません)の幼虫がまざっていることもあります。
ともするとキモチワルイと嫌われがちなイモムシたち。でも、ゆっくりじっくり観察すると、誰もがそのかわいらしさの虜になります。一口に「イモムシ」といっても、公園など身近な自然にも数えきれないほどの種類がいて、植物によって見つかる種類が違っています。また、それぞれが個性的な姿をしているのも大きな魅力です。見つけるのはちょっと難しいけれど、飛んで逃げるわけではないので、見つけてしまえばこちらのもの。誰でも簡単にその魅力に浸ることができます。慣れてくれば、見つけたイモムシを飼育してみるのも楽しみです。蛹を経て成虫になる姿を見守ると、自然の神秘を肌で感じることができます。