虫系ナチュラリスト。身近な自然にひそむ昆虫たちを中心に、いきもの愛あふれる生態写真を撮り続けている。小蛾や蠅、葉虫、蜻蛉などのマイナー昆虫はもちろん、蜘蛛、蜥蜴、蛙、蝸牛、蛞蝓など昆虫以外の「虫偏」の生き物たちに至るまで、広くあまねく愛を注いでいる。ウェブサイト「昆虫エクスプローラ」、ブログ「むし探検広場」管理人。著書「昆虫探検図鑑1600」(全国農村教育協会刊) 。
自然公園に設置されているフェンス、つまり「柵」や「手すり」は、知る人ぞ知る昆虫観察の穴場です。昆虫採集の道具は何も持っていないし、草むらや雑木林の中に入り込むのはちょっと苦手…というあなたも大丈夫。昆虫の集まりそうなフェンスを見つけ、そこをじっくり見て回るだけで、とても手軽に、刺激的で楽しい昆虫観察ができてしまいます。見つけた昆虫は、デジカメやスマホで撮影し、図鑑やインターネットで調べてみましょう。名前や生態を知ることによって昆虫たちへの親しみが湧き、また、どんな種類がフェンスに集まりやすいのか、なぜ虫たちはフェンスが好きなのかなど、フェンスで見られる昆虫たちのことを深く考えるきっかけにもなります。
郊外の自然公園で、池や谷沿いに遊歩道が整備されているところには、たいていフェンスが設置されています。フェンスは、金属製などいかにも人工的なものより、樹木の幹に似せて作られたもの(擬木柵)のほうが成果が期待できます。
フェンスの端から端まで、そして、裏側も含めて、じっくり見て回りましょう。とくに、雑木林と草原の境目など、日向と日陰が混在した適度に明るい場所には、昆虫たちがよく集まります。なぜかはわかりませんが、男性よりも女性のほうが、そして、大人よりも子供のほうが虫を見つけるのが上手なようです。
フェンスにいる昆虫を発見したら、あわてず騒がず、慎重に行動しましょう。危険を察した昆虫たちは、すぐに飛んで逃げたり、地面に落下して姿を隠してしまいます。そうならないためには、こちらの存在を相手に悟られないことが大切です。急な動きを避け、ゆっくりとカメラを構え、慎重に撮影しましょう。できれば、昆虫の横から、上から、前からなど、アングルを変えて撮影しておくと、名前を調べるときに役立ちます。
写真が撮れたら、次は少し大胆になり、もっと顔を近づけて、昆虫がどんな姿をしているか、また、どんな動きをしているか、じっくり観察してみましょう。じっとしたままいつまでも動かなかったり、逆に延々と歩き回っていたり、何かを食べていたり、ほかの虫とニアミスしたり… 虫たちのさまざまな行動を観察できることでしょう。
昆虫の姿や行動を十分に観察したら、さきほど撮影した写真を再生して、図鑑やインターネットで名前を調べてみましょう。名前だけでなく、その昆虫がどんなところに住み、どんな食べ物を食べているかといったことを含めて調べると、なぜその虫がフェンスにいたのかという謎を解き明かすヒントが得られるかもしれません。
著者のサイトで、色や大きさなど昆虫の見た目から種類を調べられるコーナーを用意していますのでご活用ください。
「虫マトリックス」 http://www.insects.jp/konmit.htm
たくさんの昆虫を見つけるには、高い山に登ったり、森の奥深くに分け入らないといけない、と思いがちですが、実はそんなことはありません。家族で気軽に出かけられる自然公園や、田んぼや畑のまわりなど、少し人の手の入った場所でこそ、たくさんの昆虫たちに出会うことができます。今回紹介したフェンス・ウォッチングは、そもそも人工物を利用するということで、その最たるものと言えるでしょう。フェンス・ウォッチングに慣れてきたら、「次はこの虫を見つけたい!」という「お目当て昆虫」を決め、作戦を練ってチャレンジするのもいいでしょう。たとえば、冬に出現する蛾(が)、フユシャクのメスは、翅(はね)が退化していて飛ばないので、ふつうに探していてもまず見つかりませんが、フェンスではいともたやすく発見できてしまいます。今まで見たこともないような虫たちに、手軽に出会うために、さあ、フェンスで遊びましょう!
選んで頂きありがとうございます。庭のフェンス脇のブロックで見つけました。川邊さんに迫力あるとコメント頂き嬉しいです。