大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
WILD MIND GO!GO!アンバサダー
キャンプなどのアウトドアシーンで、どんな灯りを使っていますか?最近はLEDのランタンが増えてきましたが、雰囲気があるのはやっぱり昔ながらのオイルランタンではないでしょうか。その燃料、多くはホワイトガソリンなどの石油燃料です。
では、こうした石油燃料がない大昔はどうやって灯りをとっていたのでしょうか。江戸時代には自然から抽出した油に芯を立て、灯りをともしていたと言われます。その原料は、椿、菜種、エゴマなど植物の種子が用いられ、庶民はより簡単に油が取れる魚油(イワシなど)を使っていたそうです。
今回のHow toは、身近な種子を使い、煮出し法という原始的なやり方で油を取り出し、オイルランプを作る方法をご紹介します。
ツバキの種子(もしくは、ひまわりの種子)
約1kg
ペンチ
はかり
すり鉢
すりこぎ棒
鍋
おたま
容器(コップなど)
茶こし
スプーン
スポイト
フライパン
小瓶
ワインのコルク栓
カッターナイフ
アルミホイル
タコ糸
油脂を多く含んだ種子(油糧種子)は、自然のなかに沢山あります。そのなかでも、昔から油糧種子として利用されてきたのはヤブツバキの実。採集の時期で言えば秋が良いですが、春は赤い花を咲かせているので見つけるのが簡単。木の根元に茶色い種子が沢山落ちていると思います。この種子をできる限り沢山集めましょう!
ツバキの搾油率は10%程度なので、1kgほど頑張って集められると良いです。穴が空いていたり軽い種子は、中を虫に食べられているので使えません。
今回の煮出し法でツバキの他にうまく油が取れたのは、ひまわりの実でした。
ツバキの実を採取するときは、その土地の地権者、管理者などの許可を得て行いましょう。
ここから頑張りが必要です!ツバキの実は硬い殻で覆われています。ひとつひとつペンチで割り、中身の種子を取り分けます。ひまわりの場合も、殻を取り中身の種子だけを使います。この時点で500gくらいあると、このあとの抽出が楽になります。
種子を取り出したら、すり鉢に入れ細かく砕きます。ミキサーなどを使っても良いでしょう。細かく砕いた種子を鍋に入れ、たっぷりの水で1時間ほど煮出します。噴きこぼさないよう火加減に注意しましょう。
煮続けると、表面のアクに黄色味が強い成分が浮き出し、次第に水と分離した油分が玉になって現れます。これをオタマなどで丁寧にすくい、コップなどの容器に分けましょう。
この液体には、アク、残りかす、油分、水などが混じっています。茶こしなどの目が細かい網を使って、アクや残りかすを取り除きましょう。この時、残りかすに油分が付着してしまうので、スプーンの背などでしっかり押し出し水分が抜けるようにしましょう。
こした液体を一晩置くと、表面に油滴と乳化した油分が残ります。油分だけを取り出すには、残りの水分を抜く必要があります。表面の油分をすくってもよいですが、スポイトを使い、下の水分を直接抜く方法が簡単です。底に沈んだカスを抜くために、水を足して抜く、という作業を行いましょう。
煮出す時、熱に強いこし布に包んでもOKです。
さあ最終作業です。取り出した油滴を小さめのフライパンに移します。加熱して水分だけを飛ばしましょう。油がはねないよう、弱火、遠火を調節しながらじっくり水分を飛ばします。
水分が抜けてくると、乳白色だった液体が少しずつ透明に変わります。水分より油分が多くなるとさらに油がはねやすくなるので、ゆっくり慎重に加熱しましょう。しだいに油はねが収まって、除ききれなかった油以外の成分は固まります。
水分が飛んだら、熱いうちに瓶に移しましょう。網などを使ってこしても良いですが、そっと注げば不純物の混入を最小限に抑えられます。
圧搾機があるとゴマや、ナタネ、柑橘の種など、いろいろなものから油を取り出すことができます。
・火傷に注意しましょう。
・油滴の量が少ない時は、アウトドア用のクッカーを使うとよいでしょう。
・取れる油の量はほんの少量。うまくすくう方法を自分なりに工夫してみましょう。
いよいよオイルランプ作りです。抽出した油は、そのままだと燃えにくく、芯などに含ませることで初めて火がつきます。芯に火をつけると、含まれた油が燃え、下の油が吸われて燃え続ける仕組みです。
ワインのコルク栓をカッターナイフで5~10mmほどの輪切りにします。次に中心に向かって切り込みを入れます。平行にもう一本切り込みを入れて小さな隙間を作りましょう。
小さく切ったアルミホイルをぴったりと貼り付け、切り込みの部分を切り離します。コブをつくった芯糸を用意し、切り込みに挟みます。コルク栓より下の糸は短く、上の糸は1cmほどにします。上に出る糸の長さ、太さで火力は変わります。
芯糸は、木綿の布やティッシュペーパーを使ったこよりでも代用できます。何セットか作って試してみましょう。
オイルを入れた瓶を、お気に入りの場所にセットしましょう。密封できるガラス容器を使うと良いでしょう。
さぁ点火です!瓶を開けて、オイルの上にコルク芯を浮かべます。オイルが芯に沁みるのを待って着火します。ライターよりマッチの方が適してます。
芯に含まれたオイルの温度が上がらないと着火しないので、数秒かかります。火をつけると、最初は不安定だった炎もしだいに安定します。植物油には粘りがあり、炎で温めることでサラサラになってオイルを吸い上げる力が安定します。
電気を使った明かりと違い、ゆらゆらと揺れながら『頑張って燃えている』感じがします!
使用する瓶も、写真のょうな角があるものを使うと、光に屈折が生まれ、きれいな模様が生まれるでしょう。
苦労して絞ったオイルは、数時間で使い切ってしまいます。オイルが減ると土台のコルクが焦げてしまうので、火は早めに消しましょう。
夜の撮影にはISO感度の高いカメラがオススメです。今回は夜の撮影に強いカシオのデジタルカメラ・EX-FR110Hで写真と動画を撮影しました。
EX-FR110H:http://casio.jp/dc/products/ex_fr110h/
芯糸が燃え尽きてしまう場合は、1)油が沁みていない2)油面から芯糸が遠く油分が上に吸えていない可能性があります。チェックしてみましょう。
オイルランプを作ったら、記念に写真を撮りましょう!『やった!レポ』に投稿して、みんなと体験をシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
記録に残したら、炎を眺めながらゆっくりとした時間を過ごしましょう。
オイルランプ作り、いかがでしたか?実際にやってみると、油を取り出すのがこんなに大変だということに気が付くと思います。
私たちの身の回りにあるものは、実はさまざまな苦労の結晶で出来ています。今回のオイルランプ作りのように、物作りの原点を体験すると、今この手にある有り難さを感じ、感謝の気持ちがうまれるのではないでしょうか。
また、いざという時、例えば災害時など物資がない状況の際に、自分で考え生き抜く知恵=WILD MINDが、こうした体験には含まれています。
油を搾れるようになると、キャンドルやハンドクリームを作るなど応用がきくようになります。自然から得たもので、真の豊かな生活を過ごしてみませんか。