2011年の震災を機に、食の安心安全を伝えるために大規模貸し農園の運営を手がけ、2016年春に独立、フリーランスの農園コンサルタントとして活動している。そのかたわら発酵クリエイターとして味噌作りなどの食農イベントも多数開催。農業、狩猟、釣りなど、オールラウンドに自然を楽しむ。千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。畑を通じて自然教育、食育を発信している。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
だんだん気温が低くなり、空は澄み渡り、焚き火が恋しい季節になってきましたね。そんな時大人気なのが、温かい食べ物。中でも焼きいもは、焚き火とセットの定番おやつ!昔は石焼きいも売りのトラックをよく見かけましたが、最近はスーパーでも見かけます。
アウトドアで気軽にチャレンジできる焼きいも、上手に作ろうとするとなかなか奥が深いもの。ちゃんと火が通っていない、思ったより甘くない、焦げてしまった、、、皆さんも苦い経験があるのではないでしょうか?
今回は、キャンプでは一般的な、ピラミッド型の焚火台を使って、美味しい焼きいもの作り方をご紹介します。さつまいもが甘くなる仕組みを理解すると、誰でも簡単に甘い焼きいもが作れるようになります!
科学の視点から芋を理解して、この冬、焼きいもマスターを目指しませんか?
※注意事項
・調理をする際は、やけどなどに十分注意して、必ず大人と一緒に作業するようにしましょう。
一口にサツマイモと言っても、スーパーに行くと様々な品種が売られています。ベニアズマ、蜜芋とも呼ばれる安納芋は、みなさんも聞いたことがある代表的な品種ですね。その他にも、シルクスイート、紅はるか、パープルスイートロード、クイックスイートなど、最近はスーパーでも多くの品種が見られるようになりました。これらはみんな、目的を持って改良された改良品種です。
昭和後期から近年まで、関東地方では主にベニアズマが好まれました。ホクホクした食感で芋の香りも強いベニアズマは、焼きいもから天ぷらまで様々な調理に使える万能な品種です。一方で最近は、しっとりした食感が好まれる傾向にあり、紅はるかをはじめとした新品種が多く出回るようになりました。
そこで今回は、数種類のサツマイモを手に入れて、食べ比べをしてみます!
皮の厚みや風味など、品種ごとに特徴に細かな違いがあります。品種名が書かれていないサツマイモを見つけたら、店員さんに品種名をぜひ聞いてみましょう。
アウトドアで焼きいもを作るとなると、実は想像以上に時間がかかります。加熱から焼き上げまで、約1時間半を目安にしましょう。はじめは、焼きやすい大きさや形のサツマイモでチャレンジ!熱を通しやすい、細長くて太すぎないものを選びましょう。
また、秋口は、同じ品種でも「新芋」「古芋」と分けて売られていることもあります。ついつい新芋を買いそうになりますが、ちょっと待った!新芋はその年の<秋>に収穫されたもの、古芋は前年に収穫され室に寝かされたものです。サツマイモは寝かせることで、含まれるショ糖が増えてより甘くなり、食感も粘質に近づきます。なので、甘みだけで言うなら古芋も侮れません。
今回は、写真左から、ベニアズマ、紅はるか、安納芋、パープルスイートロードの4種類の新芋で、味比べをしてみます。
ほくほくなら新芋、甘みと柔らかさを求めるなら古芋がオススメです。
生のサツマイモをかじると、甘みは感じるものの、焼きいもほどの甘さは感じないはず。これは芋を焼く過程で、デンプンが分解され糖が生み出されることによります。そう、この糖化は、甘酒やジャム作りでも利用した、アミラーゼの糖化作用を利用しています。
サツマイモは、ショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖など、元々いくつかの糖を持っています。その中でも特に多くを占めているのが、ショ糖と麦芽糖です。サツマイモの甘みは、この2つの糖の比率で変わります。
ショ糖は、生芋に含まれている糖で、室で寝かせることで少しずつ増えていきます。品種により含有量は違います。ショ糖が多い品種は、コクのあるしっかりとした甘味が特徴です。
麦芽糖は、主に芋に含まれる酵素=βアミラーゼの力で生まれます。アミラーゼの活性量は品種により違いますが、活性量が強いものは加熱することで甘味が増大します。麦芽糖が多い品種は、すっきりした柔らかい甘味が特徴です。
焼きいも作りで重要なのは、酵素を活性化させ麦芽糖を生み出すことです。デンプンが糊化し、アミラーゼが活性化する温度は60~70度。つまり、芋を焼くときこの温度帯をできる限り保つことがポイントです。(電子レンジの加熱で甘くならないのは、この温度帯をすぐに通り過ぎてしまうため)ただし、アミラーゼの作用には限界があり、上手に加熱すると60~90分ほどで全て作用します。
甘く美味しく焼くコツは、「糖化」と「焼き上げ」そして「水分」。これらを別に考えて調理してみましょう!
私たちが普段食べている野菜は、どれも「改良」された品種です。そして品種ごとにそれぞれ特徴があります。サツマイモにもまだたくさんの品種があります。品種を知って、技術を身につけて、この冬ぜひ焼きいもマスターになってくださいね!
さいごに、、、自然は実に壮大で、まだ出会えていない感動が沢山あります。知識と体験を利用して、新しい感動の扉をこれからも一緒に探していきましょう♪
世界が広がるということは、未知の驚きや喜び、幸福のチャンスも沢山あるはずです。