SFC TOUCH LAB( http://touchlab.sfc.keio.ac.jp/ )は、触感に関する基礎研究からデザイン応用までを取り扱う研究会です。幅広い興味を持つ学生が集まって週1回のゼミを中心に活動しています。本ワークショップの開発には、プロダクトから家具まで、手を動かしてモノづくりすることに興味を持つ、岡崎太祐が携わりました( http://t-okazaki.com )。研究会の主宰は仲谷正史(環境情報学部 准教授)。これまでに『触楽入門』(朝日出版社)、『触感をつくるー《テクタイル》という考え方―』(岩波科学ライブラリー)。
自然の中に入っていくと、風景に目を奪われるだけでなく、身体や足でもいろいろな心地を感じ取ります。砂利道や落ち葉道のような音が聞こえてくる道もあれば、芝生や砂地の沈み込み方、ぬかるみで体のバランスが不安定になるなど、全身でその土地を感じることができます。目に見える光景だけでなく、大地を踏みしめる感覚から、自然をより深く味わってみませんか?
実際に自然の中に足を運んで、身体で得たその土地の体験を、HapticScape(ハプティックスケープ)と呼んでいます。このHow toでは、自然を通して得られる多様な触感を視覚情報に置き換えて、主観的な感覚である「歩き心地」をHapticScapeとして描きます。自分の主観的な体験を俯瞰して眺めてみることや、他の人と共有することを目標に取り組んでみましょう。
HapticScapeをつくる手順は大きく3つに分かれます。第一に、自然の中に分け入って「歩き心地」をゆっくりと確かめます。そして、その体験を視覚的なハッチングで表現し、記録してゆきます。ここでいうハッチングとは、線画によるテクスチャのことを指しています。第二に、歩いた自然の中で、特に印象残った場所の風景をスケッチとして描きます。最後に、はじめに記録したハッチングを、描いたスケッチに書き込みます。
はじめにハッチングを記録する「ハッチングパレット」を以下からダウンロードし、A4用紙に印刷します。
https://d37eorbo3zl63f.cloudfront.net/public/images/howtos/159/hatchingpalettes.pdf
印刷した用紙は、上半分がスケッチをするエリア、下半分がハッチングパレットになっています。もっと大きなエリアが欲しい場合は、A3用紙に印刷するか、画用紙に線を引くなどしても構いません。スケッチする用紙、ハッチングを描く用紙の2枚に分けても構いません。
印刷した用紙は、画板に挟んでおきます。次に、ハッチングを描くための、色鉛筆(またはペン)を用意します。鉛筆やサインペンなどを使い、白黒で表現することもできます。
自然の中に分け入って、いろいろ歩きまわり、「歩き心地」をゆっくりと確かめます。目に見えたものに思わず心を奪われるかもしれませんが、足元にもたくさんの自然が隠れています。踏み心地や、そのときに聞こえてくる音、匂いなどにも気を配ってみましょう。
ゆっくりと歩みを進めて、どんな感覚がするのか、楽しみながら探索してみましょう。どんな触感のハッチングが描けるかを考えつつ、探索を進めてみましょう。STEP3のハッチングを描く作業と並行しながら進めると、微妙な感覚の違いに気づきやすくなります。
ひとしきり散策をしたら、気になった触感をハッチングパレットに、視覚的に表現してゆきます。また、そのハッチングに名前をつけてゆきます。
見た目を真似るだけでなく、身体で感じた第一印象も含めてハッチングで表現してみましょう。ハッチングを描く際には、見た目からだけでなく、<凸凹(デコボコ)><粗さ滑らかさ><乾湿><温冷>に代表される触感の要素にも注目すると、表現のアイディアが出やすいかもしれません。描いたハッチングには自分なりの名前をつけてあげましょう。STEP7での振り返りがさらに面白くなります。
少し時間をかけて、いろいろな触感のハッチングを集めましょう。
次に、用紙の上半分のエリアに、印象深い風景を下絵としてスケッチします。うまくなくても大丈夫。どんなところが気になったのか、触感が変わっていたところに気を配りながら、絵を描きます。
次に、スケッチした風景の下絵に、集めたハッチングで、塗り絵をしていきます。ハッチングを細かく書き込んでゆけるように、安定した台があると良いでしょう。
下絵にハッチングを描き終えたら完成です。もし仲間と一緒に散策していたら、どんな風景になったのか、お互いに見せ合ってみましょう。同じところを散策していても、集めたハッチングによって、風景の印象が違っているかもしれません。その差異を楽しみながら、どんなところに注目していたのか、ハッチングの名前も尋ねながら話し合ってみましょう。
完成したハッチングパレットと、ハッチングで描いた風景を写真に撮って、「やった!レポ」に投稿しましょう。How toを行った場所の情報や、面白かった感触、体験を通して気づいたことがあれば、コメントにも記載してみんなにシェアしましょう。
足からやってくる触感のように、普段あまり気持ちを向けない感覚を意識して、ハッチングのような記号に外在化するだけで、多様な自然の様子を浮かび上がらせることができます。何気なく歩いている道にも、たくさんの感覚が落ちていることに気づくことができたのならば、How toは成功です。一人で様々な場所を散策してみるのもよいですが、おすすめは複数の友達と一緒に歩いてみて、同じ風景がどれだけ多様に感じられているかを眺めることです。デコペンのような小道具を使って、立体的にハッチングを描いてみるのも楽しい試みです。ぜひ皆さんも挑戦してみてください。
このHow toに興味を持った方にオススメ書籍
『触楽入門 (仲谷正史/著, 筧康明/著, 三原聡一郎/著, 南澤孝太/著_, &1その他) 』朝日出版社
https://goo.gl/dM2jr4
参考文献:
諏訪正樹, 筧康明, 西原由実.(2014).Onomatopace:足触り触感を磨く感性ツールデバイス,人工知能学会第17回身体知研究会,SKL-17-02 (pp. 6-16).
( 諏訪研究室ホームページ:http://metacog.jp/masaki-suwa/ )