「つくらし=つくる×くらし」は、人々がくりかえし訪れ、訪れるたびに学びが深まっていくハードづくりを得意とする松原雅裕(マツバラマサヒロ)と、日々のくらしから環境や地域などを学んでいくプログラムや人材育成を得意とする金田裕子(カネダヒロコ)のユニットです。長年、国や自治体などの社会教育施設や地域づくりに携わってきましたが、市民が自立的に運営する持続的な学びの場の必要性を感じ、その実践として、つくらし@沖縄を2012年から主宰しています。http://tsukurashi.jp
赤、オレンジ、黄、グレー、茶、白、紫、ピンク、ベージュ、緑、‥‥。これ、何の色だと思いますか? 実は、私たちの足もとにある土の色。「えー、そんな色の土、見たことない!」と思うかもしれないけれど、よく見てみると、あなたの身近なところにもさまざまな色の土があるはず。小さなシャベルとビニール袋を持って、どんな色の土があるか見つけにいってみませんか?
そして、いくつかの色の土が集まったら、土絵の具をつくり、自由に絵を描いてみましょう。今までは、ただ「茶色」と一括りに見えていた土も、絵の具にして並べてみたら、色の違いに驚くはずです。さらに、土の色を手がかりに、さまざまな発見も得られるはず! さあ、挑戦してみましょう。
ビニール袋
5~10枚位
小さなシャベル(スプーンでも可)
乳鉢(ボールとすりこぎでも可)
茶こし(大きめのもの)
絵皿(耐水で内側が白色)
デンプン糊(木工用ボンドでも可)
水
画用紙
古新聞
5~10枚位
バケツ
雑巾
ロープ
洗濯バサミ
さまざまな色の土は、山奥や秘境などの特別な場所でなく、あなたのすぐ足もとにもあります。まずは、身近なところで見つけてみてください。そして、その後に、少し違った場所(雑木林や公園、畑や田んぼ、川や海の近くなど)に見つけにいってみましょう。地形や自然環境が違うと、土の色も違います。
また、同じ場所の土でも、深さによって色が違います。一番見つかりやすいのは、土手や斜面などの地層が見えているところ。地層をよく見てみると、同じ断面でも色の違う土が見つかるはず。自分たちが住んでいる地域だけでなく、夏休みなどの旅行先で見つけにいってもいいですね。見つけた土を地図に貼っていくと、地域による土の色の違いがわかったりします。
土探しは、こどもたちにとっては普段の遊びの延長ですが、大人にとっては土を探しているうちに、これまでの経験や知識と結びつき、土の色だけでなく、土地の記憶や暮らしなど、新たな発見につながっていきます。昔からその土地に住んでいる人と一緒にいくと、土と地域との関係がよくわかります。たとえば、その土を使ってつくっていたもの、育てていたもの、その地域の植物や生きものたちなど、思いがけないモノやコトと土が関係していたりするから、きっとビックリするはずです。
さあ、土を集めに出かけます!寒すぎたり暑すぎたりしなければ、季節はいつでもOKです。ただし、雨の日は土が乾かないので、事前に天気予報はチェックしましょう。
土がある場所に出たら、最初に自分の足もとの土を一握りとって、ビニール袋に入れ、その色をじっくり観察します。どんな色をしていますか? 次に、そのまわりにある土の色も観察しましょう。そのまま、土の色を見ながら少し歩いてみて、違う色の土を見つけたら、別のビニール袋に入れます。違う色の土は、どんなところにあるでしょう? 木の下、斜面、畑、雑木林など。土を少し掘ってみてもいいかもしれません。
絵の具に必要な土は、1色あたり一握りほど。土を集めるときは、環境を壊さないように必要最低限の量にしましょう。
集めた土は、古新聞の上に広げて乾かします。直射日光がよく当たる場所に、土をなるべく薄く広げると乾きやすくなります。新聞は風で飛びやすいので、四隅に石などを置いておくと良いでしょう。天気にもよりますが、大体1時間くらい乾かします。
どの土が、誰のものか、わからなくならないように、土を乾かしている間に、マジックで新聞紙に名前を書いておきましょう。そのときに、見つけた場所も書いておくといいですね。
土が乾いたら、1色ずつ乳鉢に入れて土を砕いていきます。乳鉢がなかったら、ボールとすりこぎでも良いです。土が細かくなったら、茶こしで土をふるってゴミや木片などを取り除き、粒の大きさを揃えます。
茶こしでふるった土は、絵皿(内側が白く耐水性のもの)に入れると色が鮮やかに見えて、それぞれの土の色の違いがよくわかります。みんなが見つけた土を並べて比べてみましょう。色だけじゃなくて、触り心地も確認します。サラサラ、ふわふわ、ざらざらなど、見ただけじゃわからない感触の違いに気づくはず。
市販の絵の具は、何でつくられているか知っていますか? 絵の具の種類によって材料は違いますが、基本的には、色の素(顔料)と、紙に色を固定するためのもの(接着剤)と、その2つを混ぜるもの(溶剤)でできています。土絵の具も同じで、色の素となる土(顔料)に、糊(接着剤)と水(溶剤)を混ぜてつくります。ここでは、接着剤に「デンプン糊(木工用ボンドでも可)」を使います。デンプン糊は、主に植物などのデンプンからつくられているので、こどもたちでも使いやすく、手に入りやすいです。
絵の具をつくる際、砕いた土の入った絵皿に、デンプン糊と水を混ぜていきます。水の量によって描き心地が変わるので、少しずつ様子を見ながら、好みの固さになるまで混ぜていくと良いでしょう。絵の具ができたら、画用紙に絵を描いていきます。
土絵の具は、普通の絵の具よりも色の粒が大きいので、筆ではなく素手(指や掌全体)で描くのがおすすめ。上手く描こうと思うより、土絵の具の感触を楽しみながら、大地の色の豊かさを感じましょう。
土と糊と水を混ぜるといっても、描き方はいろいろ。紙に水で薄めた糊を垂らして、そこにパラパラと土絵の具をふりかけるという手法もあります。自由に画法を試してみましょう。
描いた絵は、洗濯バサミで挟んでロープに吊していきます。吊るすことで、絵が乾きやすくなるだけでなく、屋外だととっても気持ちがいい青空ギャラリーに早変わり! 通りがかった人たちも見ていってくれるかもしれません。みんなが描いた絵を見ながら、気づいたことを発表して、次に土を集めにいく場所を決めてもいいですね。教えてください。
集めた土や、土絵の具、または土絵の具で描いた絵などを、写真に撮って「やった!レポ」にシェアしましょう。土を見つけたときのことや、描きながら気づいたことなどあれば、コメントなどに書いてください。
そうそう、土にはいろいろな色があると言いましたが、実はなかなか見つからない色もあります。その色は、みんながよく知っている色。さて、何色でしょう? いろんな場所に土を見つけにいって、それでも見つからない色があったら、きっとその色。何色かわかったら、ぜひ教えてください。
あなたの家や学校のまわりには、どんな色の土がありましたか? 土の色が違うと、育ちやすい植物が違ったり(沖縄では、北部にある鮮やかな赤土は果物が育ちやすく、南部に多いベージュの土は野菜がよく育ちます)、つくれるものが違ったり(陶磁器や瓦や土壁など)、その土ができた年代や気候が違うことがわかったりします。
また、同じような色の土しかないと思っていても、実はすぐそばにまったく違う色の土があることも多いのです。色の違う土がすぐ近くにあるのは、植生や気候の変化、地殻変動や火山の噴火など、その場所や地球の記憶が土の色に刻まれているから。土の色を手がかりに、歴史をたどっていくこともできるかもしれません。
見つけた土は、絵の具だけじゃなく、土クレヨンをつくったり、土で布を染めたり、土のコレクションボックスをつくったり、土の地図にまとめるなど、楽しみ方はたくさんあります。自分なりの楽しみ方を見つけましょう。私たちのホームページでも紹介しているので、いろいろ試してみてください!
2002年から私たちが各地でおこなっている「土で絵を描くプロジェクト」
http://www.digitalium.co.jp/clay/
※私有地や公共の場所で土を採取する場合、持ち主などに許可をもらってください。
※土探しは、ケガや事故に十分注意し、こどもたちだけでなく、大人も一緒にいきましょう。
※暑い時期は、帽子と水分補給を忘れずに、熱射病に注意しましょう。