「人と自然をつなげる、伝える」ことがライフワーク。1977年東京生まれ。埼玉県入間市出身。幼い頃から、自然に親しんで育つ。私立自由学園で幼稚園から高校まで学び、日本大学森林資源科学科へ入学。卒業後、東京の造園会社へ就職。みどりのリサイクルや啓蒙事業に携わりながら、NPO法人「みどり環境ネットワーク!」を設立。都内の保育園や小学校、都立公園などで様々なみどりのイベントや環境学習講座を多数開催。結婚、出産を経て、2008年から愛知県犬山市で未就園児の親子が自然を楽しむ会「いぬやま自然とあそび隊!」を主催。身近な自然の素晴らしさや活用方法を伝えるため、五感を通して体験できる講座を愛知、岐阜で開催中。
夏にも食べられる、身近な野草や木の芽がたくさんあるのを知っていますか?春よりアクも苦みもありますが、その分、栄養価も高くなり、パワーみなぎる夏の野草たち。今回は、そんな野草だけを材料にして作る、おいしい魅惑のカレーを紹介します。見た目はいまいちですが、野草のアクも旨味になり、栄養抜群、食物繊維たっぷりで、なんともやみつきになるお味です。
庭や畑の草取りや、里山で元気な草たちに出会ったら、ちょっと若葉をいただいて、ぜひ作ってみてください。草を沢山摘んだり、長時間炒めたりと、手間暇がかかるので、何人かと一緒に作るとおいしさも楽しさも倍増します。蒸し暑く、ジメジメとして過ごしにくい日々も、力強く生長する野草からパワーをいただいて、元気にすごしましょう!
[採取に使うもの]
ザル、又は紙袋
[カレーの材料]
夏のおいしい野草(数種類)
大きなザル2~3杯
お好みのカレールー
1パック 約10皿分
カレー粉
20g
トマトペースト、又はピューレ
150 cc
圧搾菜種油、又は太白ごま油約
300~500 cc
[調理器具]
ボール
包丁
まな板
フードプロセッサー
木べら
フライパン、又は中華鍋
はじめに、食材となるおいしい夏の草を探しに出かけます。カレーに入れる野草は、アクがあっても大丈夫。春に採った野草が生長していても、先端の若葉が食べられることも多くあります。あらかじめインターネットや植物図鑑などで、身近で採れて食べられる野草を調べておきましょう。生えている場所や時期、葉っぱの特徴や香りなどを確認し、採取する植物と間違いやすい毒草がないかも、必ずチェックしましょう。
ここでは、カレーで楽しめそうな、オススメの夏の野草を紹介します(野草のとれる時期は、その年の気候・地域によって差があるので参考まで)。
- クワ
里山や森の中だけではなくで、道や田畑、空き地などにも生えているクワ。高木になりますが、剪定されて背の低い木も多いです。葉は、手の平大でざらっとしていて、切り口からは白い汁がでます。縁にはあらい鋸歯があり、大きく切れ込みの入ったものやハート型の葉などいろいろな形があります。
- アカメガシワ
林縁や道路脇などの明るいところに、生育するアカメガシワ。アントシアニンたっぷりの、赤い新芽が特徴です。高木になりますが、何度も切られるため、低くてヒョロヒョロした木も多いです。柏のように葉っぱが大きくなります。
- ヨモギ
春よりアクは強くなりますが、夏も先の若い部分は食べられます。羽状に裂け目の入った、キクの葉に似た緑白色の葉っぱで、柔らかい銀色の毛が生え、裏を返すと表よりも白くなっています。そしてちぎってみて、ヨモギの匂いがしたら大丈夫。
- ツユクサ
夏に、青いかわいい花を咲かせるツユクサ。アクが少なく食べやすい草で、花の時季まで食べられます。その後はかたくなるので、できるだけ花の咲く前、先の方10 cmぐらいの柔らかそうなところを採取しましょう。
- セイタカアワダチソウ
本当はアレルギー源ではないのですが、群生するためか、目の敵にされるセイタカアワダチソウ。実はハーブティーにもなる、おいしい有用植物です。里山だけでなく、空き地や道路際などにもに生えています。紫の茎とちぎった時に山菜の香りがするのが特徴です。
この他にも、イノコヅチ、イタドリ、オオアレチノギク、クズやクサギの新芽などもオススメです。植物を採取する時は、目に頼るだけでなく、よくさわること、よく香りをかぐこと。五感を使って確認しましょう!
※あらかじめ、摘む場所が採ってよい場所か、草を食べてもよさそうな環境か必ず確認しましょう。排気ガスの多い道や犬の散歩道、除草剤などがかかっていないか、普段からチェックしておきます。
※私有地や公園など、管理された土地で採集する場合は、管理者に確認しましょう。
※よく見るだけではなく、必ず素手で触って、葉っぱをちぎったり匂いを嗅ぎます。香りがしない時は、見た目がその植物でも摘むのはやめましょう。
※種類の判断に絶対の自信が無いときは、採集物を口にしないでください。
※野生食材の採集と喫食には危険と責任が伴うことを忘れないようにして下さい。
※はじめは、地域のことや、野草・山菜に詳しい人と採集に行きましょう。
食べられる野草が確認できたら、いざ摘んでみましょう! 葉っぱの裏に、虫や虫の卵などがついていないか?葉っぱは痛んでいないか?などチェックしながら、指で汚れを落としながら、きれいな葉を摘んでいきます。
目安としては、うまく折れるところが、食べてもおいしいところ。切れない部分は、硬かったり、筋っぽかったりするので、無理矢理おらず、ポキッとパキッととれやすい場所から採りましょう。
また、料理用に草を摘む時は、汚れているところや、料理に使えない葉や、根、ほかの草などは、採ったその場に置いてくるのがポイント。家に帰ってからゴミにならず、自然に土にかえっていきます。また、摘んでいる時は楽しいですが、長時間外にいると疲れることも多く、帰ってから料理する気がなくなる……なんてことも。洗えばすぐ料理できる状態で摘んでおくと楽です。
持ち帰った野草を洗います。洗い方は、ながしや洗い桶、ボールに水を張った中に草を入れ、ザバザバと草を動かして洗います。最初から流水で洗うと、葉が閉じてしまい、虫や汚れが落ちないので、貯めた水で洗ってから、最後に流水で洗います。
きれいに洗えたら、ザルにあけて水を切ります。草がピンとするまで少しの間、乾かします。乾かす時間の無い場合は、布巾などで水分をとります。
野草の水気が切れたら、包丁で切っていきます。夏の野草は繊維が強いので、しっかり細かめに、千切りにしていきます。次のStepでは、切った野草をフードプロセッサーにかけます。ここで、繊維をしっかり切っておかないと、フードプロセッサーにからまってしまうので注意が必要です。
切った野草をフードプロセッサーに入れ、その中に油を入れていきます。油は、沢山使うので、圧搾法で採られた質のいい油をオススメ。また油は、草全体がなじむぐらい、フードプロセッサーが円滑に周るぐらいの量を目安に入れます。
野草と油が入ったら、フードプロセッサーをかけます。草がペースト状になるぐらいまで、しっかりまわします(なめらかにならず、多少粗くても大丈夫です)。
野草と油をペースト状態にしたものに、ココナッツミルクやカレースパイスを入れると、グリーンカレーのベースにすることもできます。また、ニンニクやオリーブオイル、塩や味噌、くるみやゴマなどを加えて、ジェノバ風ペーストにすることもできます。
ペースト状にした野草をフライパンか中華鍋に入れ、ひたひたになるぐらい油を入れます。そのまま火にかけて、約30分 中火~弱火にかけながら、木べらで下の方から混ぜながら炒めていきます。炒めるといっても油たっぷりなので、油で煮る感じになります。表面が少し、ブクブクしているぐらいがちょうどいい火加減の目安です。様子を見ながら火を調節して下さい。
時間が経つにつれ、段々と黒くなっていきます。
緑色の状態から、15分ごとぐらいに味見してみると、味の変化がわかり面白いです。
炒めはじめてから30分ほどして、ペーストの色が濃くなってきたら、味をつけていきます。はじめにカレー粉を加え、よく混ぜ合わせます。次に、トマトペースト(又はトマトピューレ)と、お好みのカレールーを加え、引き続きよく混ぜていきます。
カレー粉も、カレールーも、お好みのもので大丈夫です。ここでは、フェアトレードのカレールーを使っていますが、普通のスーパーで売っている固形のパックでも、フレーク状のタイプでも、自家製のルーでもかまいません。
黒っぽくなるまで、さらに30分ほど炒め、味見をして、おいしくできたら完成です!
完成した野草カレーは、ご飯にかけて食べるのはもちろん、パンと一緒に食べるのもオススメ! また、出来上がったカレーペーストは、夏野菜の炒め物の隠し味に入れたり、焼いたお肉や魚にのせたり、おにぎりの具として入れてもおいしいです。
冷蔵庫で1か月ほど、冷凍庫では半年ほど保存できるので、常備菜として瓶詰にしておくのも良いですよ。何もおかずが無い時に、海苔の佃煮のように、ちょっとご飯にのせるだけで、ご飯がすすむこと請け合いです。
おいしい野草カレーが作れたら、写真を撮って、ぜひ『やった!レポ』にも投稿してみてください。こんな草を入れたらおいしかった!という情報や野草カレーのアレンジ方法なども、コメントに書き込んでもらえるとうれしいです。
これまで、雑草にしか見えていなかった、身近な草や木の芽で作る、魅惑の野草カレー。野草の旨味や苦味、アクなどがアクセントになって、今まで食べたことの無い味についつい癖になってしまいます。また、油に抽出された栄養ごと全部いただけるので、野草の薬効やエネルギーがギュッとつまっています。
春の草より、みどりが濃くなり、アクや苦みが強くなる夏の草たち。それは、ポリフェノールやタンニンなど、菌や虫、紫外線から身を守るため成分が増えるため。その栄養分は、同じ生き物の人間にも、抗酸化作用や整腸作用、殺菌、美容効果などがあり、私たちの健康も支えてくれます。ビタミンもミネラルもみんな植物からいただいている人間。あたりまえのようですが、自然の環はうまくできていますよね。
自然の循環を考えると、四里四方で採れる季節のものを頂くことが自然で、身体にもよく、自然環境にも負担が少ないのではないかなと思います。また、身近な野草を頂けるのは、除草剤が撒かれず、排気ガスも多くなく、地域の人とのつながりもあるなど環境がよい証拠です。
野草摘みや野草料理を楽しくすることで、にっくき雑草たちへの視点が変わり、身のまわりの環境や生き物にも目を向けるきっかけになることを願っています。