「人と自然をつなげる、伝える」ことがライフワーク。1977年東京生まれ。埼玉県入間市出身。幼い頃から、自然に親しんで育つ。私立自由学園で幼稚園から高校まで学び、日本大学森林資源科学科へ入学。卒業後、東京の造園会社へ就職。みどりのリサイクルや啓蒙事業に携わりながら、NPO法人「みどり環境ネットワーク!」を設立。都内の保育園や小学校、都立公園などで様々なみどりのイベントや環境学習講座を多数開催。結婚、出産を経て、2008年から愛知県犬山市で未就園児の親子が自然を楽しむ会「いぬやま自然とあそび隊!」を主催。身近な自然の素晴らしさや活用方法を伝えるため、五感を通して体験できる講座を愛知、岐阜で開催中。
野や畑で採れる自然の植物から、風味豊かで味わい深い「ワイルドコーヒー」が作れるのを知っていますか?
ワイルドコーヒーは、穀物やシイの実などのドングリでも作れますが、秋から冬にかけて旬なのが、タンポポコーヒー。使用するのは、主にタンポポの根っこ。春に向けて根っこに養分を蓄わえるこの季節は、採取するには最適です。「イヌリン(植物によって作られる多糖類)」が増え、甘味が出るため、滋味深いコーヒーを作ることができます。
またタンポポは、「蒲公英(ホコウエイ)」という生薬名があり、西洋ハーブでも「Dandelion(ダンデライオン)」と呼ばれる立派な薬草です。肝機能の改善や血糖値を下げる効果などがあることがわかっており、沢山飲んだり、食べたりするクリスマス、忘年会、お正月にぴったりです。焙煎するためコーヒーに似た風味がありますが、カフェインレスなので、カフェイン摂取を控えたい人にもおすすめ。
春に向けて、畑や庭の手入れをする時に、タンポポを抜く方も多いのではないでしょうか。丈の高い草も枯れて、タンポポも見つけやすい季節。ただ抜いてしまうのではなく、そのパワーを味わって見ませんか?
[採取に使うもの]
スコップ、又はシャベル
はさみ
収穫したタンポポを入れるもの
バケツや桶
たわし
古歯ブラシなど
ざる
[焙煎に使うもの]
ガスコンロ
フライパン
ミルサー
コーヒードリッパー
コーヒーフィルター
春に咲く花というイメージのあるタンポポですが、種類によっては春以外にも花を咲かせます。在来種であるニホンタンポポは3~5月が開花時期ですが、欧州から帰化したセイヨウタンポポは1年中花を咲かせます。見分け方としては、春以外に花が咲いていて、ガク(総苞片ソウホウヘン)が反り返っているのは、セイヨウタンポポです。コーヒーには、ニホンタンポポ、セイヨウタンポポ、どちらでも使えます。
タンポポの葉は、英名Dandelion「ライオンの歯」を意味しているように、猛獣の歯のようにギザギザしているのが特徴です。そのほか、色々な形状の葉があるので、まずは図鑑やインターネットなどで下調べしておきましょう。
外へ出かけ、柔らかい土が広がっている地面で、タンポポの生えていそうなところを探します。それらしい葉っぱを見つけたら、葉や茎、根をちぎってみます。タンポポであれば、ベタッとした苦みのある、白い液が出てきます。
ポイント
※あらかじめ、摘む場所が採ってよい場所か、草を食べてもよさそうな環境か必ず確認しましょう。排気ガスの多い道や犬の散歩道、除草剤などがかかっていないか、普段からチェックしておきます。
※私有地や公園など、管理された土地で採集する場合は、管理者に確認しましょう。
※よく見るだけではなく、必ず素手で触って、葉っぱをちぎったり匂いを嗅ぎます。種類の判断に絶対の自信が無いときは、採集物を口にしないでください。
※野生食材の採集と喫食には危険と責任が伴うことを忘れないようにして下さい。
タンポポを見つけたら、5cm~10cmほど離れ地面にシャベルを深く入れて、根っこを掘り起こして抜きます。根っこは下に長く伸びているので、シャベルの角で切ってしまわないように気をつけましょう。写真では、指の太さぐらいの、15cm~20cmほどの根っこが採取できました。葉っぱもお茶に使えるので、一緒に採取します。
ここでは、20本のタンポポを採取しました。目安としては、20本ほどのタンポポの根っこから、30gのタンポポコーヒーの粉が取れます。
採取したタンポポは、水ですすいでよく土を落とし、根っこと葉を分けます。根っこは、しばらく水に浸けてから、流し水でたわしなどを使って、ゴシゴシ土を洗い落とします。細かい隙間の汚れは、歯ブラシできれいにします。手間はかかりますが、美味しいコーヒーを作るためには欠かせない作業です!
きれいになった根っこは、ざるなどにあげて、しっかり水気を切ります。
葉っぱは、生でサラダやチヂミに入れて食べることも、干してお茶にすることもできます。ここでは、お茶にするため、きれいに洗って水気を切ります。
水気の切れた根っこは、あとで粉にしやすいように、ハサミか包丁で細かくします。干してから切ろうとすると、硬くて切れないので、柔らかいうちに作業を行うのがポイントです。
細かく切った根っこは、そのままカラカラに乾燥するまで日干しします。
水気を切った葉は、乾燥ネットなどの上に置き、屋内で干します。
根っこがパキッと折れるぐらいまで乾燥したら、フライパンなどで5分~10分ほど空炒りします。全体的に黒くなり、煙が出てくるぐらいまで炒ったらできあがり。コーヒーと同じで、焙煎する時間はお好みです。炒る時間が短いと少し土臭い仕上がりになります。お好みに合わせて、調整しましょう。
焙煎した根っこは、ミルサーにかけて粉にしたら、タンポポコーヒーの完成です。粉の細かさもお好みに合わせて調整しましょう。
コーヒーと同じように、好きな方法で淹れて飲んでみましょう。焙煎の仕方や淹れ方で、コーヒーの味は変わります。色々試して、お気に入りの味を見つけてください。ミルクを入れて、カフェオレ風にして飲むのもおすすめです。
タンポポコーヒーは、ちょっと味が濃いという方は、ティーポットに乾燥させた葉や茎を一緒に入れて、タンポポ茶にすると、コーヒーとはちがった味が楽しめます。
タンポポコーヒーが楽しめたら、写真を撮って、ぜひ『やった!レポ』にも投稿してみてください。どんな味がしたか、おすすめの飲み方などあればコメントに書き込んでください。
タンポポより手間暇かからないのが、ドングリで作るワイルドコーヒー。炒ってそのままでも食べられるドングリのひとつ、シイの実(マテバシイ、スダジイ、ツブラジイ)。拾ったその場で、炒って殻を割り、中身を焙煎すると、野外でも簡単にドングリのワイルドコーヒーを作ることができます。
タンポポコーヒーは、ポルトガルでコーヒーが高価だった頃、コーヒーの代用品として作られたのが発祥だとか。今では、豆のコーヒーよりもタンポポコーヒーの方が高くなりましたが、自分で作ってみると、手間暇かかる大変さから、その価値も納得です。また、大地からいただいた恵みで手間暇かけて作った、風味豊かで味わい深いワイルドコーヒーは、簡単に飲んでしまうのがもったいないぐらいです。
出産後に催乳作用があるためにタンポポコーヒー(茶)を飲まれる方がいますが、そのほかにも健胃、利尿、解熱、解毒、消炎、など、女性だけでなく男性にもうれしい作用があります。いつもはただ抜いてしまう雑草も、草取りついでに活用することで楽しみが増えたり、自然や季節を味わうきっかけにもなります。
冬にもたくましく元気に生きている植物のパワーを感じられる、ワイルドコーヒー。冬だからこその楽しみ。寒さに耐える、生き生きとした植物に目を向け、新しい世界に触れる機会にもなりますように。