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2019.09.261046 views

地図を読む、そしてその先へ <前編>

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村越真

静岡大学教育学部教授
地図が読めれば、道に迷わない。そして、その先には、自然と向き合う新しいフェーズが待っている!

「登山に地図・コンパスは必須」と言われ続けていますが、本当でしょうか?最近ではスマホで現在地も分かります。スマホ・ICT機器時代の地図読みの意義を探りながら、地図とコンパスの基礎的な使い方を身につけてみませんか。
ポイントは、「等高線の読解」と「何のために地図を見るか?」という目的意識を明確に持つこと。野山に出て地図を使う経験を少しずつ積めば、暗号のような地図も、様々な情報をあなたに語りかけてくれます。コンパスもまた、使う目的を明確にし、シンプルな機能を使いこなすことで、アウトドアで役に立つ相棒としての機能が最大限に発揮できます。
地図やコンパスを使ってアウトドアに出ると、これまでと違った見方で自然を見ることもできます。見えなかった世界が見えてきます。そこから、山の新たな愉しみも生まれることでしょう。

前編では、準備(読図の楽しみを知る)から練習(机上読図、初歩の読図)までを、後編では、実践から応用(高度計やGPSの活用、ナビゲーションスポーツにチャレンジ)までを紹介します。

READY
準備するもの
  • 国土地理院 地形図 1:25000(二万五千分の一)

  • 筆記用具

  • コンパス(方位磁針)

  • スマートフォン(地図アプリ)

STEP 1

野山での地図の使い方・楽しみを知ろう

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    地図は新しい山の見方をもたらしてくれる
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    霧の中も不安なくルートを決める事を可能に

「野山で遭難しないためには地図・コンパス(方位磁針)は必須」と言われ続けていますが、地図・コンパスの適切な使い方を身につけている人は実は少数派。地図やコンパスが大事なことは分かっているが、どう使ったらいいの?それが分からないと、せっかく地図・コンパスを持っていても宝の持ち腐れです。加えて、最近ではスマホでも地図は見れるし、現在地も分かる。地図はほんとに必要なの?そんな疑問も浮かびます。でも、地図は永遠に不滅!それはなぜでしょうか?その答えを探りながら、野山での地図の使い方・楽しみを探求しましょう。

●地図vsスマホ・GPSから、地図andスマホ・GPSへ
GPSやスマホが発達したことで、山岳地域でも地図をディスプレイで見ることもできるし、現在地をほぼピンポイントで知ることもできます。そんな時代でも、地図と地図を読むスキルは必要なのでしょうか?答えは「YES」です。
その答えを知るには、なぜ野山で地図を使うかを整理しましょう。地図を使う目的は二つ。事前にルートを知り、行程管理をし、そのリスクに備えること、そしてナヴィゲーションです。
地図を使う目的を整理すると、地図の必要性が明確になります。第一に、スマホやGPSは画面の大きさが限られていて、山域全体の様子を把握できません。行程管理の道具としては不十分です。地図を見るからこそ、全体の距離やどこが大変かといったことも分かります。いざという時のエスケープルートを見つけられるのも、地図でルートの全体像を把握できていればこそです。
第二に、スマホやGPSは自分の現在地をほぼ正しく示してくれますが、カーナビと違ってルート誘導をしてくれません。効率よい移動のためには、地図から「どちらの方法に進めばよいのか?」を読み取ることが欠かせません。さらに、電子機器なので、故障やバッテリー切れの心配もあります。そんな時に備えて、地図が読めることが必要です。
一方で、せっかくスマホを持っているなら、それを活用しない手はありません。山での地図読みは、正直なところ一朝一夕で身に付くスキルではありません。スマホ+地図アプリがあれば、自分のいる場所が分かります。それを利用して地図読みの敷居を下げることができます。もしもの備えとしてスマホを活用することは、安全面からも推奨されます。

POINT

スマホvs地図と対立的に捉えるのではなく、双方のメリットを知った上で、うまく組み合わせて安全を確保することを考えたいものです。

●地図が読める愉しみ
自動車ができた今、速く走れることに実用上の価値はありません。悪筆でもワープロがあれば、全く気にすることはありません。それでも、毛筆で端正な字が書けたら・・・そう思う人は少なくないのではないでしょう。かくいう私もその一人。もし地図に実用上の意味がないとしても、地図が読めれば山の楽しみが広がります。
等高線から地形が読み取れれば、スマホで瞬時に現在地が分かる時には気付かなかった周囲の様子にも敏感になれます。それがいざという時に身を守ることにつながると同時に、「なぜこんな地形ができたんだろう?」といった疑問も生まれます。能動的に山と関わることができます。それが山の愉しみを増やしてくれることでしょう。

STEP 2

まずは机上読図からはじめよう①

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    ハイマツやガレ場の多い高山帯はリスク多い
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    図2A(地図でリスクを表す記号)
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    図2B(図2Aの記号を写真にしたもの)
  • Sp 8d3cd057 18e7 462c a406 f0461d9dc5aa
    図2C
  • Sp 804d0099 86d8 4634 852d fb56903eae61
    図2D

最終的には現地で地図を読めるようになりたいものですが、敷居も高い。まずは机上で地図を読み、活用する方法を身につけましょう。地図は多くの情報から成り立っています。特に地形図は汎用図といって、様々な用途のために作られているので、含まれている情報の全てが登山に必要な訳ではありません。どんな情報に注目すればよいのか、机上での練習のポイントはそこにあります。

●机上で行程を把握しよう:縮尺と標高
野山に出かける前に大事なことは行程を把握すること。山岳遭難の中には、自分で歩ける距離以上の行程を計画し、日没で救助要請したケースも少なからずあります。どれくらいの距離を歩くのか、累積標高差(登り)はどれくらいなのか、これらを把握することが、安全で快適な登山につながります。
距離を把握するためには、縮尺を理解する必要があります。一般的な地形図は1:25000(二万五千分の一)といって、地図の長さは実際の1/25000です。逆に地図上の1cmは実際には25000cm、つまり250mです。これを利用してコース距離を把握できます。また隣り合う等高線は標高が10m違います(これを等高線間隔と呼びます)。また、標高点といって、その点の場所の高さが記されている場所があります。これらを利用すると、標高差やどれくらい登るのかを読み取ることができます。

●机上でリスクマネジメントをしてみよう
地図記号の中には地面の様子を表す記号があります。等高線も、間隔の広狭で傾斜の緩急を表しているので、地面の様子を表していると言えます。それらの記号は、ルート近辺にあるリスクを教えてくれます。たとえば、岩の記号が多くあれば、ガレ場であり、転倒等のリスクがあります。また、ハイマツの記号があれば、そこは高山(概ね2500m以上)であり、背の低いハイマツが生えることで、眺めはよいが悪天候に直接さらされるリスクがあります。事前にリスクが分かれば、それに備えることができます。つまり、地図はリスクマネジメントに役立つのです。

●地図でリスクを表す記号と写真
図2Aは地図でリスクを表す記号、図2Bは図2Aの記号をそれぞれ写真にしたものです。
a:土がけ、b:岩がけ、c:雨裂(雨でできたき裂)、d:岩、e:砂れき地、f:ハイマツ地(2500mを超える高山に生え、眺めがいい代わりに悪天候時に影響を受けやすい)

POINT

縮尺と標高差の把握(図2C参照、出典:国土地理院1:25000地形図「人穴」)
【問題1】地図上に500m相当のスケールが示されています。これを利用して△からaの○を通って毛無山山頂付近の三角点(○b)までの道のりと標高差を求めてみましょう。(通常の紙地図の場合、紙の上での長さに縮尺を使ってかけ算をして、実際の道のりを求めます)
解答:道のりは約23cmなので、約2.9km。また標高差はスタート地点が付近の数字を使って840mと読めるので、目的地1945mから引き算して1105m(1100mでもよい)です。

【問題2】図2Cのルートを歩く時のリスクを読み取ってみましょう。どこで、どんなリスクがありますか?
解答(図2D参照):cでは、茶色の点々のある沢を横切っています。このような場所ではルートがわかりにくく、まちがって沢の方に入ってしまう危険性がある。dでは崖の記号が迫っており、登山道脇に崖がある可能性があり、滑落に繋がるかもしれない。また下りのaでは道を間違える可能性がある。全体的に、傾斜が急(等高線の間隔が詰まっている)ので、転倒や膝の故障等に注意する必要があります。

STEP 3

まずは机上読図からはじめよう②

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    図3A  
  • Sp 1ab599fc 4229 482f 97fd c8a35d16f8bb
    図3B
  • Sp 12a79e41 1d0f 41c8 a76c a4bb55f483dc
    図3C
  • Sp 217b1ad9 f6f4 4a0d 8fa1 286ac1f214e2
    図3D
  • Sp 4bf4c457 bc0b 4336 a781 aee01eaadfc0
    図3E

等高線は難しいと言われる地図記号の代表です。しかし、山で目印になるのは地形です。等高線の読解は、山の読図では避けて通ることはできません。等高線から自由自在に地形がイメージできることは理想ですが、必ずしも誰もがそれができるわけではありません。基本的な地形の単位が理解できるレベルを目指したいものです。

●等高線で分かること
・標高と標高差
等高線に付記された標高や標高点と等高線間隔を利用することで、全ての等高線の高さが分かります。これらを利用することで場所の高さが分かります。場所の高さが分かれば2点間の標高差が分かります。どのくらい登らなければならないか、下りなのかもこれで分かります。

・傾斜とその変化
隣り合う等高線の標高差は全て同じですから、等高線の間隔が広いほど傾斜が緩く、狭いほど傾斜が急です。

・尾根・谷・ピーク・鞍部といった地形の単位
等高線読み取りの基礎は、尾根・谷・ピーク・鞍部といった基本的な地形の単位を読み取ること。こぶしを思い浮かべてみましょう。高いところが連なっているのが尾根、低いところが連なっているのが谷です。また尾根の中には周囲より高い場所であるピーク、周囲より低い場所である鞍部があります。鞍部は登山用語ではコルとも呼ばれ、道が通っていると峠になります。まずはここまで読み取れるようになりたいもの。

・斜面の方向
北斜面、南斜面という言い方をしますね。等高線の直角方向が、斜面が向いている方向ですので、それを読み取ると斜面の方向が分かります。斜面の方向が分かると、迷い始めた時に、自分のいる位置を推測しやすくなります。

●手を使って、地形と等高線の関係を理解してみよう
水平に高さ等間隔で線を引く(図3A)、それを上からみたものが等高線(図3B)、斜め上からみると地形と等高線の関係がよく分かります。低い方に凸状になっている指の部分が尾根、その間の低い部分が谷。尾根の最上部にはピークが、谷最上部にはたいてい鞍部があります(図3C)。
等高線からは、上に記したような地形上の特徴を読み取ることができます(図3D)。

POINT

ここで、等高線読みの実際に関する出題です。図3Dを参考にしながら、図3Eの×a~gの各点の標高、地形名、斜面の方向を読み取ってみましょう。

解答例:
a:谷・北西向き・1750m、b:地形名無し・西向き斜面・1850m、c:尾根・南東向き・1800m、d:尾根:北西向き・1910m、e:鞍部・方向無し・1935m、f:地名名無し・南東向き・1930m、g:ピーク・方向なし・1964m(標高点がある)

MATOME
まとめ

「地図読み、難しいと思ったけど、少し道筋が見えた」そう思っていただければ幸いです。筆者の読図講習会に来るほとんどの方は、実は基礎的な地図の読み取りはできています。でも、あらゆる場所で、揺るぎないナヴィゲーションができるには、時間が掛かります。ボールを蹴ることができるようになっても、すぐには試合には出られませんね。安全な登山道で地図読みを経験し、少しづつステップアップしてください。
「地図ってこんな意味を持っていたんだ」そう思う瞬間があればしめたもの。
次回後編では、実際の山での読図や読図・ナヴィゲーションスキルをアップし、愉しむスポーツを紹介します。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性4
5知性
4感性
アクティビティ
その他
環境
山 ・ その他
季節
春 ・ 夏 ・ 秋
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
中学生以上
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