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2019.11.01212 views

地図を読む、そしてその先へ <後編>

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村越真

静岡大学教育学部教授
地図が読めれば、道に迷わない。そして、その先には、自然と向き合う新しいフェーズが待っている!

「登山に地図・コンパスは必須」と言われ続けていますが、本当でしょうか?最近ではスマホで現在地も分かります。スマホ・ICT機器時代の地図読みの意義を探りながら、地図とコンパスの基礎的な使い方を身につけてみませんか。
ポイントは、「等高線の読解」と「何のために地図を見るか?」という目的意識を明確に持つこと。野山に出て地図を使う経験を少しずつ積めば、暗号のような地図も、様々な情報をあなたに語りかけてくれます。コンパスもまた、使う目的を明確にし、シンプルな機能を使いこなすことで、アウトドアで役に立つ相棒としての機能が最大限に発揮できます。
地図やコンパスを使ってアウトドアに出ると、これまでと違った見方で自然を見ることもできます。見えなかった世界が見えてきます。そこから、山の新たな愉しみも生まれることでしょう。

前編では、準備(図読の楽しみを知る)から練習(机上読図、初歩の読図)までを紹介しました。後編では、実践から応用(GPSや高度計の活用、ナヴィゲーションスポーツ)を紹介します。

「地図を読む、そしてその先へ <前編>」
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/195

READY
準備するもの
  • 国土地理院 地形図 1:25000(二万五千分の一)

  • 筆記用具

  • コンパス(方位磁針)

  • スマートフォン(地図アプリ)

STEP 1

実際の登山で読んでみよう(現在地把握の方法)

  • Sp 724e1547 748c 43bb ab77 ce61b6ddf050
    図1A
  • Sp 91c1edf5 5856 4d70 85c3 78f0ff7023e9
    図1B
  • Sp a25036bc b023 49ab 9b68 0a7d31cef21e
    図1C
  • Sp c595a5f0 ef0b 4cd1 b209 8bf1b18612e6
    図1D
  • Sp 271a0a20 ed8e 46d1 a506 d9f08da4c597
    図1E

登山で地図を読む目的は、大きく二つに分かれます。一つは現在地の把握、もう一つはルート維持です。自分の居る場所が分からなければ地図があっても目的地に進めません。そのために、自分の居る場所が地図上でどこかを知る必要があります。これが現在地の把握です。地図で考えた通りに進めればよいですが、自然の中では道が分かりにくくなったりしているため、思った通りに進めないことがあります。そうならないためにルート維持が必要です。
現在地が分かっているからこそルート維持ができ、ルート維持ができているからこそ、今どこにいるか分かります。従ってこの二つを交互にうまくやり続けること、それがナヴィゲーションの秘訣となります。そのためには、地図を予め読み取っておくこと(先読み)も必要になります。これをナヴィゲーションサイクルと呼びます。

図1Aはナヴィゲーション中に行っていることを図式化したもの。動き出す前にはプランニング(前編・STEP1参照)、先読みを行っている。動いている最中には、ルート維持(正しい進路を進んでいるか)、現在地把握(今いる場所はどこか)を絶えず自問し、その答えを得るために地図やコンパスが使われる。それができないと、道を間違え現在地が分からなくなり、道迷いに陥ります。

●現在地把握の方法
自分の居場所が地図で「ここ」と分かること、すなわち現在地の把握が地図読みの「基本のキ」です。例えば図1Bの風景が見えている時、私は図1Cのどこにいるでしょうか(ただし、地図は写真と方向が合わせてあります。つまり、写真の奥が地図の上の方になります)。これに答えを出すこと、それが現在地の把握です。
答えは「写真から尾根上で奥側が高くなっている場所にいる」です。地図の範囲は基本的に上が低くなっているので、この場所は鞍部だと思われます。そこで道はピークに上がる道と左に水平に進む道(巻き道と呼ばれる)に分かれます。このような場所は、図1Dの○しかないので、そこにいると思われます。

いきなり風景の写真で判断するのは難しく感じますが、実際には進むごとに、地図と風景を対応させ、様々な情報を使って現在地を確定していきます。山の中で目立つ電波塔や送電線、建物は現在地把握のよい目印になります。地形が読めるようになると、大きなピークや鞍部、尾根・谷が方向を変えるところは、現在地の把握をしやすい場所です。

POINT

【問題】図1Eを参照に、御岳山から、日の出山に至るまでの登山道で現在地が分かりやすいのはどこでしょうか?
解答例:a:建物群が一回途切れた後、再び建物が表れる。b:鞍部、畑のある。c:はっきりした鞍部、道の方向も変わる。d:鞍部・道の分岐がある。e:巻き道が南東方向からほぼ北向きに大きく方向を変える。f:建物がある。

よく目立ち、他のものと取り違えのない特徴を捉えることが、現在地把握の秘訣です。「ここだ!」と思っても、一瞬立ち止まり、「ほんとかな?他の可能性はないのかな?」と考えることで、道迷いのリスクが格段に減ります。日常にも役立つ、そんな発想を身につけることができるのも、ナヴィゲーションの奥深さ。また、地形が読めるようになると、分かりやすい特徴が増え、現在地把握が容易になります。

STEP 2

実際の登山で読んでみよう(ルート維持の方法)

  • Sp 9316fa3a bf36 4b75 a091 88788e8bf92f
    図2A
  • Sp 9b28865b b3f8 43e4 8928 5f08ab3e04a6
    ベースプレートコンパス
  • Sp a5b96588 fb61 4664 aaf9 b19fdbbc18b6
    図2B
  • Sp 78c0856d 8e36 4cdc b976 0536298815d9
    図2C
  • Sp b88edd37 2749 4b01 837a aa6764ff407d
    図2D

決めたとおりのルートに必ず進めるなら、道迷いなど起きようがありません。道がわかりにくくなったり、新しい道ができていたり、あるいはぼやっとしているから、道間違いが起き、それが道迷いに発展するのです。決めたとおりのルートに進むためにルート維持の考え方と技術が必要です。ルート維持は、「地図からルートの特徴を読み取る」→「その特徴を確認しながら進む」ことが基本です。

ルート維持に使える特徴は、①地形、②方向です。たとえば、図2A日の出山からd733mのピークに進みたいと考えてみます。しかし、日の出山からは多くの道が四方八方に伸びています。道を外さず歩いたとしてもa~eのどこに行ってもおかしくありません。そこでdの方に向かうルート、そしてその他の場所にいく場合の①地形、②方向を考えてみます。
a:東北東、尾根、b:最初南東へ、その後東向き、尾根、c:最初南東の尾根、その後南東向きの谷、d:一貫して南東向き、尾根、e:尾根から下り気味の巻き道へ。
つまり、dに向かう尾根だけが南東向きであり、もし道を間違えていれば、尾根でなくなるか、南東方向でなくなることになります。

地形は、前編・STEP3,5で尾根と谷の区別を学んだことが活用できます。方向については、コンパスが役立ちます。アウトドア用のコンパスは、シルバコンパスを代名詞とするベースプレートコンパスが推奨されています。しかし、地形がはっきりした日本の山では、まず磁針を使って方向を知ること、特に自分が進んでいる方向を知ることを第一に考えた方が、効率的にコンパスが活用できます。この際、図2Bや2Cのような指や手の甲に付けられるタイプのものが、方向を確認したい時に即座に確認できるので便利です。これを図2Cのように身体の前に構え、自分が進む方向を見通します。赤い針の方向を向いていれば北向きですが、少し東にそれているので、北北東というところでしょう。風景の特徴も含めて考えると、この道は北北東に向かう尾根上の道だということが分かります。このようにコンパスを進もうとする方向に向けた身体の前に構えることで、それがどちら向きになっているかを確認することができます。こうして方向によるルート維持が可能になります。

POINT

【問題】図2Dを参照に、この谷はどちら向きでしょうか?
解答:左側が磁針の赤、右が白となっていることから、ほぼ東にむいている。

STEP 3

GPS(GNSS)を活用してみよう

  • Sp d1710897 ac83 41c8 8e99 d4913b7ddc8b
    GPSあればこそ視界の悪い所に入れる

1990年代から一般に普及し始めたGPSは、天気が悪かろうが、見通しの利かない複雑な地形だろうが、どんなところでも自分のいる位置を確実に教えてくれる便利な道具です。特に最近では、スマートフォンにもGPSが搭載されているので、地図アプリを利用すると、自分の現在地を容易に知ることができます。GPSよりも自分で地図を読むことが大事だという人もいますが、GPSと紙地図にはそれぞれに一長一短があります。それぞれの特性を踏まえて、使うことが大事です。

注意が必要なのは、スマホのGPS機能はカーナビとは違うということです。カーナビは現在地が分かるだけでなくルート検索やルート誘導をしてくれます。これはカーナビのコンピュータにルート情報が入っているからです。アウトドアでは登山道がデータとして蓄えられている訳ではありませんので、ルート誘導機能がありません。
例外的に、来た道を引き返す場合には、移動の軌跡であるログを予め利用することで、自分が正しく逆戻りをしているのかを把握することができます。これは、道迷いから復帰する時には強力な機能ですので、アプリも含めてGPSを使うなら、ログを取れるモードにしておくとよいでしょう。

なお、GPS(global positioning system)はアメリカがもともとは軍事的利用のために構築したシステムであり、現在ではそれ以外にも日本やヨーロッパ、ロシアで位置把握のための人工衛星が運用されています。これらを総称する時にはGNSS(Global Navigation Satellite System)と呼ぶのが正式です。

●スマホ・GPSの利用
地図アプリを使うと、現在地は分かります。それを利用して、自分の周囲にある地形を確認してみましょう。日本の山では尾根や谷がはっきりしています。自分の周りが尾根なのか谷なのかを確認し、それが地図でどう表現されているかを確認するところから始めてみましょう。

POINT

●GNSSと紙地図の、メリットとデメリット比較
<GNSS>
メリット:衛星の電波が届けばどんな環境でもほとんど誤差なく、高い精度で現在地が分かる
・山行記録としても有用
・スマホ等では遭難時に警察に現在地を正確に知らせることもできる

デメリット:機械的な故障や電池切れなど、トラブルの種が多い
・あまり広い範囲を見ることができない
・希に大きな30m程度の誤差が出ることがある
・電波の届かない深い谷では位置が分からないことや精度が劣化する

<紙地図>
メリット:一度に広範囲を観ることができるので、ルートプランに適している
・電池の消耗等を気にする必要がない
・グループでの打ち合わせにも使いやすい

デメリット:技術がないと役に立たない

MATOME
まとめ

「地図読み、難しいと思ったけど、少し道筋が見えた」そう思っていただければ幸いです。筆者の読図講習会に来るほとんどの方は、実は基礎的な地図の読み取りはできています。でも、あらゆる場所で、揺るぎないナヴィゲーションができるには、時間が掛かります。ボールを蹴ることができるようになっても、すぐには試合には出られませんね。安全な登山道で地図読みを経験し、少しづつステップアップしてください。
「地図ってこんな意味を持っていたんだ」そう思う瞬間があればしめたものです。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性4
5知性
4感性
アクティビティ
その他
環境
山 ・ その他
季節
春 ・ 夏 ・ 秋
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
中学生以上
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