82年東京藝術大学美術学部デザイン科インダストリアルデザイン専攻卒業。
NECデザインセンター、ミラノのデザイン事務所CDM社を経て91年に帰国後 (株)スタジオピーパを設立し現在に至る。大手家電・情報機器メーカーの製品を中心に色彩の戦略立案から量産時の色再現コントロールまで、トータルなCMFデザインおよびコンサルティングを行う。また、大学でCMFデザインを教えるほか、授業用に配色造形トレーニングツール「いろくみ」を考案、その普及にもつとめる。
多摩美術大学客員教授、青山学院大学・同大学院、金沢美術工芸大学、昭和大学、各非常勤講師
夏は夕立がよく起きますね。夕立の後に偶然大きな虹を見ると感動します!最近はスマートフォンで手軽にできるので、感動を捉えておきたいと撮影する人も多いことでしょう。
ところで虹は何色あると思いますか?日本では7色が一般的ですが、あなたは本当に7色数えられますか?世界には3色、4色、5色、6色など、7色以外の数で虹を表現したポスターや旗などがさまざまあります。
なぜ地域によって色数が違ってくるのでしょう?本当は何色が正解なのでしょう?虹をハントして塗り絵をし、その色数を数え、本当は何色あるのか見てみませんか?
このHOW TOでは、ハントした虹の写真をお手本に「虹の色を塗り絵する」ことで、実際に何色なのかを数えます。さらに投稿したほかの人の塗り絵と比べて、虹の色数のバリエーションを発見し共有しましょう。
色の正体は光です。虹はそれを教えてくれる自然現象です。虹を写し取ることで虹色(夏色)スケールは美しい色使いの糸口であることを発見しましょう。
※参考文献
『いたずら博士の科学大好きⅡ-⑥「虹を作る」』板倉聖宣・遠藤郁夫著(小峰書店)
『色彩学貴重図書図説』北畠耀著(日本塗料工業会)
Cover Photo: ©2021Etsuro Endo
スマートフォン、またはカメラ
虹色テンプレートのカラープリントアウト
※A4サイズ/コンビニ印刷可
クレパス&練り消しゴム
色鉛筆&消しゴム
※練り消しゴムは画材店で入手可、100円程
夏は1年のうち最もパワーのある色に世界が包まれる季節です。色で溢れるこの風景を私たちがあたりまえに見ることができるのは、実は太陽の光に秘密があります。太陽の光は無色透明ですが、実は全ての色の元が入っています。虹が見えるのはその無色透明の太陽光が一瞬壊れ、それぞれの色を見せてくれる瞬間です。なんとも不思議ですが、太陽・大気・観察者である私たちの三者がある角度に存在したとき、それは現れるのです。
虹を見つけるポイントは3つ。①昼すぎ~夕方、②雨上がりの太陽、③東の空、です。お昼以降夕方までの間で、雨が降り終わった直後のまだ大気中に水分が多いとき、日が差してきたらチャンスです!
太陽の位置を確認したら、太陽を背にした反対方向に虹が見えるので探してみましょう。一般的に昼すぎは太陽が西にあるので、東の空ということになりますね。さらにその東の空が、虹を映し出すスクリーンの役割をしてくれる暗い雲などで覆われていると、かなりはっきりとした虹を見ることができます。また、森林や田んぼの近くでは、雨上がりの大気中の水分が地上近くにあるので、低い虹が見えるときがあります。虹の見つけ方が分かったら夕立が来るのが待ち遠しくなってきますね!
虹は長くても数分の自然現象。太陽の光が、大気中に存在する水の粒によって分光(分散)され、それは現れます。ですから、太陽の角度・観測者である私たちの位置・大気中の水分量、この3つが変化すれば見えなくなるのです。そんな自然現象の虹を撮影しハントすることはできても、そのあと色を数えるには「虹の全色が分かる物差しのようなガイド」があると便利です。
「プリズム」さえあれば、いつでもそのガイドが見られます。プリズムは太陽の無色透明の光の中にある色を、それぞれ単独の色光に分ける(分光する)ことができます。今回は、プリズムで分光した色光の写真をもとに、虹の全色が分かるガイド「虹色スケール」を用意したので、これを使って塗り絵をしながら虹の色を数えてみましょう。
雨上がりの直後、太陽が顔を出し日が差したとき、太陽を背にして前方を見ます。雲をバックに虹が見つかったら、スマートフォンやカメラで早速撮影をします。うまく撮影して虹がハントできたら、画像の虹部分を拡大し、あらかじめ出力した「虹色テンプレート」に置きます。じっくり観察しながら塗り絵の開始です。
テンプレート中央下には「虹色スケール」があるので、その色の順番通りに塗っていけば良いのですが、撮影した虹の色はスケールのような色、スケールのように同じ幅には見えませんよね?
著者がハントした虹は、赤からオレンジにかけての幅が半分で、中央に黄色、その後の明るい緑から青はかなり狭く、紫はなんとなく見えるような、見えないような?さらに、それぞれの色の境目は繋がっていて、いつの間にか色が変わっています。自分で何色かを決めないと、色数を数えることはできないことが分かります。
今回は、出力した用紙にクレパスや色鉛筆で塗り絵をするので、普通のコピー用紙を使います。表面がツルツルした特殊紙ではなく、通常のコピー用紙が良いです。もちろんコンビニのコピー出力もOKです。
自宅で出力する場合、インクジェットやカラーレーザー等プリンターの印刷方式によって色の濃さや発色が異なります。また画面の色と印刷の色は、光の色が物の色に置き換わるため同じにはなりません、ご了承のうえ体験してください。
ハントした虹をよく見ると、一色ごとに同じ幅ではないことや、色の境目が曖昧なことが分かります。色の強さや幅など塗り絵の線は気にせず、指で擦って色を混ぜたり、練り消しゴムを使って消したりしながら、お手本を写し取るように塗ってみましょう。
ここに挙げたように、著者はハントした虹をお手本に塗り絵をした結果、橙に近い赤、黄色、明るい緑と青、紫の5色が数えられました。
皆さんがハントした虹は何色数えられましたか?また各色の幅はどうだったでしょう?どの色が広くどの色が狭く見えているでしょうか?
なぜ、自分で色数を決めて良いのか?疑問に思った人も多くいることでしょう。では種明かしです。「光の中に私たちが見ることのできる色の全てが含まれている」ということを発見したのは、ニュートンという物理学者です。彼は今から約300年前に、前述のようなプリズムを用いて太陽光を分光する実験を行い、無色透明な光が色光に分かれることを確認しました。そしてその時の色数を7色(Red赤/ Orange橙/Yellow黄/ Green緑/ Blue青/ Indigo藍/ Violet紫)としたのです。
しかし300年経た現代では、光の3原色(Red赤/Green緑/Blue藍)と、それぞれの2色が合わさった3色(Magenta明るい赤紫/Cyan明るい青/Yellow黄)の合計6色が理論上見えることが分かっています。見える順番は、赤→黄→緑→青→藍→紫です。
しかし著者が見た実際の虹は、赤と黄色が混ざった橙色や、黄色と緑が混ざって黄緑が見え、青の次の藍色は暗いのでほとんど見えず、明るい赤紫が細く見えて終わりでした。つまり虹の色は、プリズムによる分光実験のようにはっきり赤から黄、黄から緑に変化するのではなく、その間に2色を混ぜた状態を作りつつほかの色に変わっていくのです。隣り合う2色を混ぜて中間色ができるのは、クレパスや絵の具でもできますね。今回の塗り絵では、著者も赤と黄の間を指でこすり橙色を作りました。
ニュートンが虹を7色にしたのは、音階(7段階)と光の色数を連動させることに関心があったことが記述にあるので、それが理由です。さらには実際に見える虹は、色と色の境目がはっきりしなかったため、赤と黄の間の橙色がかなりしっかり見えたからということも考えられますよね。
現在では、図(「太陽光のスペクトルは等幅ではない」)のように、太陽光に含まれる赤から紫までの各色は等幅ではないことが分かっています。実際の虹の色の幅と似ています。
わたしたちが見る虹はいつもアーチ型です。どんなに大きい完全な形でも、地上からでは半円以上は見ることができません。でも、まんまるの虹を見ることができる場所があります。それは飛行機や山頂です。まんまるの虹を見るためには、観測者が虹を投影するスクリーンより上にいることが条件になります。つまり①早朝や夕方、②太陽を背にする(飛行機の場合は太陽と逆側の席)、③下界に雲がある、です。
この写真は3重の丸い虹が見えて、虹の色の順番は地上で見る虹と同じです。でも、赤の外側にプリズムの分光では見ることができない赤紫色が見え、そのまま藍色へと続いていくのが分かります。さらに丸い虹の中心には、自分の飛行機の影があります。
これを「ブロッケン現象」と呼ぶのは、中世、霧がよく出ることで有名なブロッケン山の山頂に立った人の影が、下界に広がる霧の中にこのような丸い虹の中心に出ることから、「ブロッケンに妖怪が出る」と噂が広がり、そう名付けられたそうです。当時の人はこの現象を見て大変驚いたそうですが、現在でもさまざまな山の頂上でこの現象を体験することができます。
飛行機に乗ったり、夏山登山などをするときに、ブロッケン現象がハントできるかもしれませんね。ぜひ丸い虹も塗り絵をして、何色見えるか数えてみてください。
虹の塗り絵を仕上げたら「やった!レポ」に投稿して、体験をシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
※参考HOW TO
『春色ペアを探して、ボックス生け花をつくろう!』(補色などの配色)
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/227
『自分のネイチャーカラーパレットを作ろう!』(色彩表現について)
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/39
虹は7色に見えなくても良いことが分かりました。虹は自然現象なので、その時の条件によって見える位置や明瞭さ、そして現れる(見える)色数も違ってきます。一般に赤い光の色の方が、青い光の色より見えやすいので、赤と黄の間の橙は数に加える一方、藍や紫は数えにくい傾向があります。理論上は6色ですが、隣り合う色の間にその2色を混ぜた時の色が見えるので、その人の観察力つまり色に対しての意識の違いで、そこに何色を見つけるかが違ってきて良いのです。
でも違ってはいけないことが一つだけあります。それは見える色の順番です。虹の色の順番は、必ず外側から赤→黄→緑→青→藍→紫になります。これはそれぞれの色光ごとに屈折率が異なることで決まる、物理的な法則です。そしてその順番を私たちは美しさとして捉えています。色使いの順番としてこれを守れば、誰が見ても美しい!と思える色彩表現になるし、補色などの配色にも応用できます。
美しい色使いは生まれつきで決まるわけではなく、自然界の法則をきちんと理解し、応用する方法を学ぶことで誰でも作り出せるのです。虹を見たらそれを思い出して、色の順番をしっかり覚えるようにしましょう。