人類をちょっとワイルドにする自然体験を集めた、体験メディア「WILD MIND GO! GO!」編集部。
自然の中の体験を通して、普段の自分がちょっとワイルドに変わって行く、そんなステキなアイディアを集め毎週皆さんへお届けしています。
自然は偉大なアーティスト!その細部を観察すると、ドキドキするほど感動させられることがあります。植物で見られる「葉脈(ヨウミャク)」もそのひとつ。筋状や網目状などに広がる葉脈は、まるで緻密に計算されたアート。少し手を加えると、身近に楽しめる自然のオブジェになります。
「透かしホオズキ」は、ホオズキの紙風船のように膨らんだ袋部分を、水に浸けておくことで葉肉を腐らせ、丈夫な葉脈だけを取り出したもので、その形や造形をじっくり観察することができます。ここでは、そんな透かしホオズキのつくり方を紹介します。
誰でも簡単につくれるので、お盆で余ったホオズキを使って、観賞用や自由研究に試してみてはいかがでしょうか?
※他にも、重曹を使って短時間で葉脈を取り出す方法も紹介しています。
「葉脈標本を作ってみよう!」
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お盆の時期になるとよく見かける、ふっくら膨らんだオレンジ色のホオズキ。このホオズキの膨らんだ袋の部分は、何か知っていますか?これは、ホオズキの花が咲いた後に、花びらの外側にある「萼(ガク)」が、実を包み込むように成長したもの。袋の内側の実にはたくさんの種子が詰まっているので、鳥や虫などに食べられないように、萼を広げ保護していると言われています。はじめは緑色をしていますが、7月後半から8月にかけて次第に色づき、キレイなオレンジ色になります。
袋をよく観察すると、筋状や網目状に通る筋があります。これが葉脈です。葉脈は、植物にとって水や栄養の通り道となり、葉をしっかり支える役割があります。人に例えると血管のようなもので、ストローのような管の集まりです。そのため、まわりの葉肉よりも強く腐りにくくできています。
ここでは、この葉脈と葉肉の性質を利用して、ホオズキの葉肉を腐らせて葉脈だけを取り出し、透かしホオズキをつくります。
必要になるのは、ホオズキとホオズキをつける容器。そして、ホオズキが浮いてこないように押さえるための割り箸です。
ホオズキは、茎から切りとった、できるだけ形のキレイなものを準備します。生のものでも、乾燥したものでも構いませんが、ここでは乾燥したものを使いました。
容器は、準備したホオズキがしっかり浸けられるサイズで、蓋付きのものがおすすめ。水につけている間、腐った臭いがするので、蓋を閉めておくことで臭いの広がりを抑えてくれます。蓋がない場合は、サランラップなどで代用することもできます。また、透明なものであれば、つけている間の様子が観察できるので便利です。
はじめに、準備したホオズキを容器に入れ、浮いてこないように割り箸などで突っ張り棒をつけます。続けて、ホオズキが完全につかるように水、またはぬるま湯を入れます。早く腐敗を進めたいときは、ぬるま湯でつけるのがおすすめです。ここでは、35度ほどのぬるま湯を入れました。
ホオズキがしっかり水につかったら、お箸などでホオズキを揺すり内側の空気を抜き、袋のなかまで水が入るようにします。空気が入っていると、その部分が水に触れず腐りにくくなるので、丁寧に空気を抜くようにしましょう。
最後に、しっかり蓋をして暖かいところで保管します。腐敗を進みやすくするために、昼間温度の上がる日当たりの良い庭先やベランダに置くと良いでしょう。腐敗してくると、かなり臭いも出るので、外に置くことをおすすめします。
ここからは2~3週間ほどかけて、ひたすら腐敗が進むのを待ちます。また、水が濁って臭いが強くなってきたら適宜入れ替えます。
※期間は環境により異なるので、あくまで例として参考にしてください。
水につけて数日すると、葉肉の腐敗がはじまり次第に水が濁ってきます。お湯につけたおかげか、3日目にしてかなり腐敗が進み水が濁ってきました。2枚目の写真のように、蓋を開けて上から覗き込むと、底が見えないくらいに濁っています。臭いもかなりきつくなってきたので、水を捨てて新しいぬるま湯を注ぎました。水を入れ替えるときも、袋の中まできちんと水が行き渡るように、しっかり空気を抜くようにします。
さらに放置して5日目。水が濁ってきたので入れ替えました。ホオズキの様子を観察すると、葉肉の一部が葉脈から剥がれてゆらゆら揺れていました。また、葉肉全体も色が濃くなり、しっかり水分を吸収しているのがわかります。
さらに、適宜水を入れ替えながら放置して、観察を続けます。
12日目には随分と葉肉が剥がれて葉脈が剥き出しになってきました。容器を振ると、葉肉全体がゆらゆら揺れるのがわかります。
水から取り出してみて、葉肉が腐ってトロトロになっているのが確認できたら、葉肉を落としていきます。トロトロになった葉肉は、水道やシャワーなどで少し強めの水圧で水をかけると簡単に剥がれます。
葉肉が少し残るようであれば、毛先の柔らかい歯ブラシで軽く叩くようにして落としていきます。このとき、力を入れすぎたり横方向に強く擦ると、葉脈が切れてしまうので気をつけましょう。最後に、シャワーでキレイに洗い流して、葉肉の取り除きは完了です。
強めの水圧で水をかけても葉肉が剥がれにくいときは、腐敗が足りないため、さらにぬるま湯につけて数日待ちましょう。
全ての葉肉を取り除いたら、キッチンペーパーの上に並べたり、洗濯バサミで吊るすなどして、風通しの良いところで乾燥させます。このとき、できるだけ袋の形がキレイになるように、形を整えておきましょう。乾いてしまうと葉脈が硬くなり、形を変えにくくなります。
乾燥できたら、透かしホオズキの完成です!優しく触ってみましょう。葉脈も葉肉同様に、長い間水につけておいたにも関わらず、かなり丈夫なのがわかります。また葉脈だけを取り出したことにより、その構造をじっくり観察できるようになりました。
完成した透かしホオズキは、そのままオブジェとして飾って鑑賞するのも良いですが、ここでは2つのアレンジを紹介します。
1つ目は、透かしホオズキに明かりを灯し、くっきりとした葉脈を楽しむライトです。実がついていた部分の近くを少しだけ切り込みを入れて、LEDライトなどを入れて飾りつけると、葉脈がくっきり浮かび上がりステキなデコレーションになります。
2つ目は、透かしホオズキを乾燥させる前に、もう1日だけ漂白剤につけることで、葉脈の色を脱色し真っ白にしたものです。脱色しない場合は、自然そのままの色を楽しめますが、脱色するとより造形美が際立ってモダンなアートに変わります。
みなさんも、透かしホオズキをいろんな方法で楽しんで、その美しさをじっくり味わってください。
※注意
・透かしホオズキにライトを入れる場合、必ず熱が発生しないLED電球を使い、火災などには十分に注意をし、鑑賞するときだけ明かりを灯すようにしましょう。
・漂白剤を使用するときは、必ず大人の方と一緒に行うようにしましょう。
ステキなオブジェが完成したら、写真に撮って、『やった!レポ』にもアップしてください!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
いかがでしたか?人間には到底まねできない緻密で美しい自然のアート「葉脈」。自然の絶景は、何も遠くへ出かけて見るものだけではありません。視点を変えるとすぐ近くでも見つかるものです。
透かしホオズキは、葉脈と葉肉の性質を利用して少し手を加えることで、そのキレイな造形を鮮明に見えるかたちで取り出すことができます。普段見ているものから形が変わることで、植物をオブジェとして捉えたりと新しい見方も得られ、そこから興味が湧き新しい発見にもつながるはずです。
ぜひみなさんも、透かしホオズキで、美しい自然の造形を楽しんでみてください!