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アジアで人気の香草!ドクダミの葉っぱや根っこでドクダミ料理をつくろう

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のん

自然観察指導員
裏庭の雑草? いいえ、美味しいおかずです!

特徴のある香りを持つドクダミは、繁殖力も強くて厄介な雑草と思われがちです。しかし、意識を変えてよく見てみれば、ドクダミは宝物のような植物になります。現に中国から東南アジアにかけての地域では、ドクダミはポピュラーの食材です。花、葉、根っこまで余すことなく活用できるドクダミの家庭での楽しみ方をご紹介します。

READY
準備するもの
  • ドクダミ

    適量

  • はさみ

    1本

  • 軍手

    1双

  • シャベル

    1本

  • 新聞紙

    数枚

STEP 1

ドクダミを知ろう

  • 日陰を好んで生える
  • 裏庭や建物の隙間に多い

名前に「ドク」が入っていることから、毒があるんじゃないの? と勘違いされてしまうドクダミ。その名前は毒や痛みを抑える意味の「毒痛み」が由来であると言われています(独特の匂いが溜まる場所という意味で「毒だめ」という説も)。

語感はおどろおどろしいですが、ドクダミに毒はありません。それどころか、古くから民間薬として利用され「10の効果・効能がある」という意味で「十薬(ジュウヤク)」とも呼ばれています。気にもとめられないような地味な植物にはあまり別名がつきませんが、ドクダミには郷土名や別名が多くあります。これは、独特の臭気や繁殖力の強さ、効果効能などで目立つ存在だったからではないかと推測されます。

ドクダミは公園や民家の庭、河川敷、道端、どこにでもあると言っても過言ではありません。少し暗い場所でも生きられるので、民家の日陰側や、壁と壁の隙間はドクダミだらけになっていたりもします。暖かい気候が好きなようで、北海道では自生しておらず(本州から持ち込まれたものはあります)、本州、四国、九州、沖縄に分布するほか海を越えて東南アジアにも分布しています。

STEP 2

ドクダミの花を観察しよう

  • 写真1。花期は5~6月
  • 写真2。蕾のときは白い苞葉に包まれている
  • 写真3。黄色が雄蕊は、白が雌蕊

香りが独特で、ちょっと嫌な顔をされることもあるドクダミですが、5~6月頃に、4枚~5枚の清楚で美しい白い十字の花をつけます。しかし、この白い4枚は花びらではありません。蕾のときに花全体を包んでいたもので、苞葉(ホウヨウ)という部分になります。

※図鑑では総苞(そうほう)と書いてあるものもありますが、よく観察してみると苞葉(ホウヨウ)に見えます。しかし、私は専門家ではないので、間違えている可能性もあります。

ある日、この4枚の白い苞葉が、不均等で大きさに違いがあることに気が付きました。どうして大きさに違いがあるのか観察してみると、花がひらくときに、1番外側の大きい苞葉が展開しました。その後に中くらい、最後に小さな花びらが咲いていきました。全ての花びらが展開し、ドクダミの花全体が現れました。どうやら花びら(苞葉)の大きさの違いは、蕾のときの花びらの順番が関係しているようです。

さて、苞葉が展開すると、穂状になっている黄色の花が現れます。ドクダミの花は小さな花が集まって穂のようになっています。ルーペでみてみると、1個の花は、雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)だけで、がくも花びらもないのです(写真3)。いつも変わったつくりの花だなぁと思いながら観察しています。雄蕊は3本、雌蕊は柱頭が3個に分かれます。

STEP 3

ドクダミの葉を観察しよう

  • ハート型の葉とにおいが特徴的
  • 先入観なしで嗅いでみよう

ドクダミの葉っぱは縁に切れ込みがなく、ハートの形をしています。縁は少し赤っぽく、葉をこすると独特な香りがします。独特な香りをもつドクダミですが、葉、茎、根、花で微妙に香りが違います。一番香りが薄いのが花と苞葉で、香りが濃いのが葉です。中国ではドクダミのことを魚腥草(ぎょせいそう)と呼びますので、ドクダミの生臭さを、魚に例えたのでしょうか。

しかし私は、先入観で判断できないように、目隠しをしてドクダミの葉の香りを嗅いでもらったことがあるのです。するとにおいを嗅いだ人の意見に「ミントみたい!」「すっきりする!」という感想がありました。もしかしたら人は香りを判断するときに先入観が大きく影響するのかもしれません。

好みの分かれるドクダミのにおいですが、これは乾燥させることでマイルドにできます。ドクダミの香りの成分は、揮発性(常温でも蒸発し気化すること)で、乾燥することで香りが減ると言われています。更に、乾燥した葉を炒るとほうじ茶のような芳ばしい香りになります。新鮮な状態から乾燥させていくと、ドクダミの臭気は少しずつ移り変わっていきます。ドクダミの香りの七変化を楽しみましょう。

STEP 4

ドクダミの根っこを観察しよう

  • 長大な地下茎
  • 地下茎から伸びるヒゲ状のものが根

地上部では別々の株に見えるドクダミを丁寧に掘ってみると、地面の中で根っこを通じて繋がっていることに気がつきます。そしてこの根っこですが、実は根ではなくて茎なのです。このように地下で伸びる茎のことを、地下茎と呼びます。地下茎と根はよく似ていますが、顕微鏡で観察すると、維管束の配列が異なります。

ドクダミは地下茎と根を伸ばしながら、ところどころに芽をつくって地上に顔を出しているようです。地面のなかにはしっかりした地下茎がありますから、ドクダミの地上部を抜いたとしても、地面の中には地下茎が残っています。ドクダミをなかなか根絶できないのはこのためです。植物の繁殖方法としては効率的ですが、除草するとしたら厄介ですね。

STEP 5

旬のドクダミを収穫しよう

  • 収穫した地上部と地下茎
  • 新聞紙で保湿する
  • 地下茎の採集にはシャベルが必要
  • 若い葉が食べやすい

地上部を採集するなら軍手とハサミ、根も収獲する場合は加えてシャベルも用意しましょう。フレッシュな状態で楽しみたければ、新聞紙も必須です(新聞紙に包んで蒸発を防ぐと萎れるのを遅らせることができます)。ドクダミの旬は部位ごとや食べ方によって変化します。それぞれの利用法に合ったタイミングで収穫することがドクダミと楽しく付き合う秘訣となります。

生で食べるなら生えたばかりの新芽が柔らかくておススメ!(でも、慣れていないうちは美味しいと感じられないかもしれませんが……)根茎を食べるなら、花が咲く前4月~5月の柔らかい根茎を利用します。花が咲くと筋張ってきます。

お茶にするなら、花が咲いたばかりの株の茎~花までを利用します。ドクダミリキュールを作る場合も、咲いたばかりの花と柔らかい新芽が向いています。

ドクダミの根茎からは澱粉を採取できます。取るなら澱粉を蓄える冬がおススメですが、夏でも少量なら澱粉をとることが可能です。

POINT

私有地での採集は禁止されています。公園も採集禁止ですので、許可を得た場所や、自宅のお庭などで採集しましょう。

STEP 6

ドクダミ茶を淹れてみよう

  • 入門者も飲みやすいお茶
  • 雨の当たらない場所で乾かす
  • 乾燥したら乾燥剤と一緒に保存
  • 粉末は香辛料代わりにも

ドクダミとお近づきになるにあたり、重要なのが食べる順番です。最初は独特の臭気が気にならないドクダミ茶でのチャレンジをおすすめします。お茶をクリアしたら、次は香りが薄めの根茎料理をつくってみましょう。新芽は柔らかいので口あたりは悪くないのですが、慣れないと臭気が気になって美味しく食べられません。お茶、根茎料理、その次に葉とステップアップしましょう。

ドクダミ茶の作り方は簡単です。ドクダミを刈り取ってよく洗い、束にして雨の当たらない場所に吊るして水分を飛ばすだけでOKです。天候がよければ2~3日ほどでカラカラに乾きます。これを取り込んで煎ってから乾燥剤と一緒に密閉できる袋に入れれば長期間保存ができます。飲むときは適量を鍋や薬缶に取り、数分に煮出せばお茶として楽しめます。

ドクダミ茶は香辛料のような使い方もできます。乾燥した葉を粉末をにしたものをかけたドクダミティラミスは美味しく食べられます。ほうじ茶より芳ばしくて、野草を食べるイベントなどでは人気を集めるデザートです。

STEP 7

ドクダミの地下茎を食べよう

  • 白くて太いものが良質
  • 下処理では根っこを取り除く
  • 四川省成都の市場で(船越さん撮影)
  • 中国昆明の前菜(冨田さん撮影)
  • 「貴州火鍋」の料理(富田さん撮影)

ドクダミの食材としての真価を感じられる部位が地下茎です。この魅力に気づいたことから、私は自宅の庭のドクダミを食べ切ってしまいました。

シャベルを用意したら、ドクダミが生えている場所を掘り起こしていきます。ドクダミの地下茎は地下20cmほどのところを横方向に広がっているので、面状に地面を掘って地下茎を掘り上げます。掘ったドクダミの地下茎は綺麗に洗浄します。節からひょろひょろとした根が出ているので、洗うときにこすり落としておきましょう。このときに注意するポイントが、赤い茎が混じらないようにすること。赤い茎が混じると、風味にえぐみと酸味がでてしまいます。

ドクダミの地下茎は、揚げたり、煮たりしてホクホクした食感を楽しみます。このホクホク感は、デンプンのおかげ。炒めるとあの独特の香りは失せ、ホクホク感が際立ちます。

中国・四川省の市場ではドクダミの根茎が売られており、食べたことのある人によればたいへんおいしいそう。お隣の昆明市ではドクダミの根茎を使った前菜が一般的に食べられているそうです(写真4枚目)。雲南省ではドクダミの葉も食べるそうですが、臭いしゴワゴワして美味しいとは思えなかったという感想を中国に詳しい方に聞きました。

このようなドクダミ料理は日本の一部の中華料理店で食べることができます。写真5枚目は東京新小岩の「貴州火鍋」さんで提供されたドクダミ料理。手前が凉拌折耳根野葱(ドクダミ野蒜和え)、写真奥が折耳豉(ドクダミ納豆)となります。

根茎はドクダミの花が咲くころになると、とたんに硬くなるため、花の咲く前のものをオススメします。

STEP 8

ドクダミの葉と茎を食べてみる

  • 湯通しは短めに
  • 茎は上級者向け

独特の香りも、慣れると「爽やかな香り」と認識できなくもありません。例えるなら、匂いが強くて酸っぱくて少しゴワゴワしたパクチーといった感じでしょうか。美味しいかと聞かれると、美味しい! とは言いにくい味ですが、慣れたら食べ物だと認識できます。こんなに味と香りの強い植物はそうはありません。スペシャルな植物です。私は柔らかくて食べやすい3~4月の新芽を春のお楽しみとしていただきます。ただし、ドクダミの生葉の旬は一瞬。旬を過ぎると、エグミとゴワゴワ感が強く食べにくくなります。

本場では生(!)の葉もよく使われますが、私は生葉はトムヤムソースや、かけるニンニクラー油と合うと思っています。生に挑戦したら、次はドクダミの葉を茹でて食べてみましょう。ドクダミの葉は、茹でると溶けてしまいます。茹でたドクダミの味は、強い酸味と溶けてヌルヌルとした食感、香りも相まって、飲み込むと鼻から突き抜けるドクダミの香りで気持ちが悪くなります。

実はドクダミを茹でて食べるにはコツがあるのです。その正解は「茹でこぼし」。上からお湯をかけるか、もしくは一瞬だけ湯にくぐらせて、冷水にとります。こうするとシャキシャキとして硬い生葉が、茹でて少し柔らかくなり、一瞬だけ茹でることで溶けることもなく、舌触り歯ざわりの良い食感となります。

焼きそばに入れればエスニック風になるし、茹でた野菜と和えて温野菜サラダの一員にも。塩レモンやニンニク、酸味の効いたドレッシングと相性バッチリです。

ドクダミの調理法としては、よく天ぷらが挙げられていますが、ドクダミの天ぷらを日本式に食べるのはいまひとつだと私は感じています。ドクダミ特有の香りは飛びますが、酸味とヌメリがあるので壊滅的に天つゆに合わないのです。塩にも合いません。ところが、スイートチリソースをつけるととたんにドクダミがおいしくなります。やはりエスニックな味付けが合うようです。

そして、ドクダミの茎。春の柔らかいときに、葉を落とした茎を茹でて食べてみましたが、酸味が強く、皮はあるのに中身が少しヌルっとして、香りもドクダミ臭が強いので食べにくさを感じます。茎は食べ慣れた私でも苦手です。ドクダミ好きの私でも、茎はいまだに食べたくありません。

STEP 9

ドクダミのデンプンをとろう

  • 地下茎をミキサーにかける
  • 笊で繊維質を濾し取る
  • ザルを通った液を沈澱させる
  • 精製したデンプン。
  • ヨウ素でデンプンか確かめる

6月の後半ともなると、ドクダミの地下茎は硬く筋張ってきます。こうなると、木を食べているように思えるほど繊維質になるので、初夏以降にドクダミを利用するときは地下茎からデンプンをとることにしました。

小学校の理科の実験で、ジャガイモからデンプンを取り出したという記憶がある方もいるでしょう。ドクダミからのデンプンの採取法も同じ手順で行います。ドクダミの根塊を細かく砕いて笊やサラシで濾し、濾した汁を沈殿させて上澄み液を捨てます。上澄み液を捨てたら新鮮な水を加えて混ぜ、さらに沈澱させて上澄み液を捨てます。これを幾度か繰り返すと、白い粉だけを残せます。私が過去に挑戦した例では、200gの根から6gのドクダミデンプンが得られました。

白い粉が取れたら、本当にデンプンなのかどうかをヨウ素デンプン反応で確認してみましょう。白い粉がデンプンならヨウ素を垂らしたら、青紫色に変化するはずです。ドクダミの根茎から取れる白い粉はデンプンで間違いないようです。

POINT

※ヨウ素デンプン反応とは…茶色のヨウ素と白色半透明のデンプンを混ぜると青紫色に変化する反応のことです。

STEP 10

ドクダミのカスから和紙を作る

  • 残った繊維に紙を混ぜミキサーに
  • 枠に入れて整形する
  • ドクダミの葉をあしらってみた

ステップ9でドクダミのデンプンを作った際に、たくさんのドクダミの繊維が余りました。

植物の繊維は土に混ぜこみ、たい肥にすることが多いのですが、ドクダミの地下茎のカスなら細かくして食べられるかもしれないと思い立ち、非常時には食べられる和紙を作ってみました。デンプンを取った際の粉砕カスに紙を10%程度加えて水とともにミキサーにかけ、型に入れて整形・圧縮・乾燥させればドクダミ和紙の完成です。主成分はドクダミですから、食べられるしドクダミの風味もあるかも……と醤油をつけて食べてみましたが、ドクダミ香は感じられず口の中がゴワゴワするばかりでした。手紙としては送れても、食べることはできませんね。

STEP 11

『やった!レポ』に投稿しよう

完成したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。

MATOME
まとめ

さて、ドクダミ茶、ドクダミ料理、残りカスの活用とご紹介しましたが、ドクダミへの認識は変化したでしょうか? 私はこの個人的な研究の成果を「いとしのドクダミ研究室」と題してワークショップにしたことがあります。その内容はドリンクはもちろん前菜からデザートまでドクダミ全草を利用した15品のドクダミフルコースを食べるというもの。料理だけではなく、フローラルウォーターや和紙づくりなど、ドクダミの活用法も一緒にレクチャーしました。この参加者のおひとりから「おそるおそる食べはじめたのに、たった数時間でドクダミに慣れてしまい、最後にはドクダミが愛しくなった」という感想をいただきました。

多くの日本人が抱くドクダミへの悪い印象はきっと先入観によるものです。身近なドクダミを生活に活用してみたら、厄介者だったり、臭いと思っていたドクダミがきっと愛しくなるはずです。

なお、文中での「効果がありそう」という感覚や食味は個人の感想であり、その効果を保障するものではありません。また、野草を見間違える事故にご注意下さい。図鑑を読み、葉のつき方や特徴を確認すること、もしくは、野草に詳しい方などを同伴して採取にいきましょう。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性4
3知性
3感性
アクティビティ
食べる
環境
山 ・ 森 ・ 街 ・ 田畑
季節
春 ・ 夏
所要時間
30分~60分
対象年齢
小学生高学年以上
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