大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
WILD MIND GO!GO!アンバサダー
一年も終わりに近づくと、クリスマスに向けて街中は色とりどりの装飾で飾られます。家庭でも楽しめるクリスマスの装飾といえばクリスマスツリーとクリスマスリースでしょうか。なかでもクリスマスリースの歴史は古く、五穀豊穣や子孫繁栄、新年への祈願の想いが込めて家庭の戸口に飾られたと言われます。つまりこれはしめ縄の西洋版。思い思いの願掛けをして、自分だけのクリスマスリースを作ってみましょう。
リースの土台となるツルは特にこれと限定されません。かご編みなどに使われる木質(木のような質感)のアケビのツルなら上等。身近なものでは、クズやサツマイモのツルなども使えます。
リースに必要なツルの長さは円周の計算式で見当をつけられます。円周の長さは直径に3をかけるとだいたいの長さを求められますから、直径15cmのリースをつくるのであれば、外周はおよそ45cmとなります。ツルは8~9周させて形にしますので、余裕をみて4mほどの長さがあると良いでしょう。ツルは一本の長さが足りなくてもつなげて使えますが、太さはある程度揃っていた方が使いやすいです。
ツルについた枝葉は軍手をした手で、根元に向かってツルをシゴくように滑らせると簡単に剥がすことができます。アケビなどの太いツルではできないこともありますので、面倒ですが1本ずつ剪定鋏などで切っておきましょう
作りたいリースの円周×10倍程度の長さでツルを採ってこよう。
松ぼっくりやどんぐりは里山や神社、公園などで拾うことができます。ただし、常に湿っているような場所では、生き物達の住処になっていたり、分解が始まっていたりします。日当たりが良い場所や乾燥した場所で拾うのがベストです。虫食いが気になる場合は一昼夜ほど水に浸けて虫出しをし、その後数日間天日で乾燥させましょう。
クリスマスリースは冬とはいえ1週間~10日間程度は飾りますので、あまり水分の多いものは萎れてしまいます。形を保ちたい場合は収穫後に吊るして数日間は乾燥させましょう。
ツルでリースを作る前には、ツルをほどよい硬さにするための下準備が必要です。アケビなど木質のものは1週間ほど天日で乾燥させてから、水を張ったバケツに一晩浸けて柔らかくします。
収穫したばかりのサツマイモやクズのツルは、水分が多いので無理やりたわめるとパキッと折れてしまいます。かといって乾燥させすぎてはもろくなります。生の状態と乾き切った状態の間くらい、ツルがしんなりするくらいが加工にベストの硬さです。
ツル全般にいえますが、一度乾燥させてから水で戻す方が作業はしやすいでしょう。
リチャード・ランガムの説は『火の賜物―ヒトは料理で進化した』という本に著されています。
今回のリースは家庭でも飾り付けやすい、直径(内径)15cmほどで作ってみます。まずは1周ツルを回して任意の大きさの輪を作ります。2周目はその輪を軸にして、残りのツルを緩やかに巻き付けていきます。巻きつける際に無理やりたわめるとツルが折れてしまいます。丁寧に作業しましょう。
3周目からは2周目の巻き付けたツルと同じ角度に合わせて巻いていきます。こうして好みの太さになるまで、大体8~10周くらい巻くとしっかりとしたリースの土台が完成します。ツルが途中で折れたり、継ぎ足す場合は、螺旋状のツルの中に端を差し込み再開しましょう。
輪が完成したら、形を整え、平置きして天日で乾燥させます。乾燥させる前に吊るしてしまうと、水分が抜けていく過程で重力に負けて楕円形になってしまうことがあります。また、水分の多いサツマイモやクズのツルは、乾燥すると細くなり隙間ができます。巻き付けをきつめにしておいた方が乾燥後の見栄えが良くなります。
ツルを巻きつける角度は軸に対して45度以下の浅い角度がおすすめ。形を整え平置きで乾燥させよう
ツルがしっかり乾燥したらいよいよ飾り付けです。まずは全体を見て綺麗に見える表裏、上下を決めます。飾り付けをする部分のツルは隠れますので、節が目立つような見栄えの良くない場所に飾り付けを施すと良いでしょう。今回は、下半分に飾り付けをしていますが、飾り付けの材料がたくさんあれば全体に付けてもO Kです。
飾りをリースに付ける方法はグルーガン(電熱してEVAを溶かす器具。EVAは冷めると再び固化する)を使うのが最も簡単ですが、ガンの先端部や溶けたグルースティックは高温になるので注意が必要です。グルーガンの本体とグルースティックはホームセンターや100円ショップで入手可能です。
グルーガンの他には接着剤を使ったり、細い針金で巻くといった方法で固定ができますが、瞬間接着剤は木部に接着剤が吸われて貼り合わせにくく、木工用接着剤は固化するまで時間がかかります。粘度が高く固化するまで時間が短いものが使いやすいでしょう。
飾り付けができたらツルの上側に紐を掛ければ完成です。出来栄えはいかがでしょうか。飾り付けのコツは各々の感性ですので何が良いということはありませんが、私が気をつけているいくつかのコツをご紹介します。
・飾りとなる自然物、松ぼっくりやどんぐりなどをよく観察し、綺麗に見える面=顔を見つける。
・全体にうっすら飾り付けるよりは、ぎゅっと1箇所に詰めて飾る方が見栄えが良くなる。
・リースの円形を意識し、シルエットが極端に崩れてしまうような飾り付けは避ける。
・一番後ろに、緑、次に松ぼっくり、隙間にどんぐり、といったようにレイヤーを意識する。
完成したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。
野山の素材を使うリース作りは「作ってみよう」と思ったその瞬間に始まります。リースを作ろうと思った人は、素材が拾える場所が近所にないか思い巡らせます。あそこに松ぼっくりがあったはずだ。どこかで赤い実を見た覚えがある。緑は友達の家の木の枝をもらおう……と。そして実際に野山を歩くと、ふだんは見過ごしていた風景のなかにリースの素材になる植物がたくさん潜んでいたことに気づくでしょう。もしかしたら、リースの素材に選んだことをきっかけに、植物の名前を調べたりするかもしれません。
今回のリースは私の家の近くで集めた自然物だけを使いました。自然物ですから同じ大きさ、太さ、見た目のものは作れません。同じ人が同じ場所で集めた素材で作っても、リースはそれぞれ異なる顔に仕上がります。素材と相談しながら見栄えのよい位置、角度を探すのは生花にも似た楽しさがあります。
冒頭にクリスマスリースは願掛けや祈願の思いがある、と書きましたが、それはつまりリースを手作りすることで、いまいちど自然を意識する、ということなのではないでしょうか。私はこのリースを飾り、今年も自然の恵みに感謝し、来年もまた同じように素晴らしい自然に出会えることを願いたいと思います。