2022.10.203243 views

生木の木工「グリーンウッドワーク」をバターナイフづくりで始めよう

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長野修平

クラフト作家、焚き火&野外料理人
柔らかい生木を削って生活雑貨をつくろう

朝の食卓に木のバターナイフやスプーンがあると、とても気持ちよく1日をスタートできます。そんな天然素材の木製カトラリーをお店で買ってくるのもいいけれど、もし自分で作れたら最高だと思いませんか。僕はそんな暮らしがしたいと思って、木を削って暮らしの道具を作ってきました。

これまで、木を加工して物を作るときには何年もかけて乾燥させた木材を買ってきていましたが、あるとき出会ったのがスウェーデンの木工家のパフォーマンスでした。なんでも彼は、切ったばかりの生木からスプーンやヘラを削るというのです。生木は柔らかく、ナイフでもザクザク削れるため、自由なデザインの形に削り出すことができます。

この技法は生木=green wood、ナイフで削る=cavingをくっつけてグリーンウッドワークと呼ばれています。その後、彼とは日本やスウェーデンのイベントで繰り返し会い、生木から削ることの面白さや奥深さ、生木ならではの削り方、そしてグリーンウッドワークが身近にあるスウェーデンのライフスタイルまで様々なことを見せてくれました。ここではそんなグリーンウッドワークの世界をお伝えします。

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READY
準備するもの
  • ナイフ

    1~2本

  • ノコギリ

    1本

  • 生木

    必要量

STEP 1

「生木=グリーンウッド」を手に入れよう

  • 伐採したてのシラカバの丸太

材料となる生の木は、切ってから間がないものが柔らかくて削りやすいです。長いままならば、日陰に置いておけば1ヶ月くらいは大丈夫。短く切ったものなら、ラップで巻いてビニール袋に入れて冷蔵庫で保存すると1ヶ月くらいは大丈夫。そう、生野菜と同じですね。

木の種類としては素直に割れるタイプの木がいいです。今回使ったのはシラカバの直径7cmくらいの丸太。日本では北海道から東北、本州の高地に自生している木です。スウェーデンではこのシラカバが本当に多く自生していて、グリーンウッドワークには欠かせない樹木のようでした。

僕はシラカバの他に、ホウ、キリ、サクラ、ナラ、クリ、クワ、ヒノキなどを使っています。素材には、枝分かれや節跡がなくて真っ直ぐな「素直」と呼ばれる部位が向いています。

POINT

繊維が素直で、真っ直ぐに割りやすい木を探します(ケヤキは割れにくく不向きでした)。マツはマツヤニが出る場合があります。また、ウルシの仲間のように樹液に有害な成分があるものやトゲのある木なども注意が必要です。

入手方法は、木を除伐した場所などで譲ってもらうのがベストです。木の種類も教えてもらえたりします。私有地や公園などで勝手に切ることはできません。自分で切る場合は、必ず許可を得て、万全の安全対策を施して行ないましょう。

STEP 2

「グリーンウッドワーク」に必要な道具を準備しよう

  • ノコギリとナイフ2種

グリーンウッドワークには生木を切って、割って、削る作業があります。最初の工程が、丸太を必要な長さに横に切る「玉切り」。その作業に必要なのがノコギリです。今回は細めの丸太の切断に向き、雑木も切りやすい粗い目のノコギリを使いました。押しても引いても切れるタイプのノコギリは、とても楽に素早く切ることができます。折り込み式なので持ち歩きにも安全です。

玉切りした細丸太を縦に割るのは、刃の厚みがあり丈夫な両刃のナイフです。私が愛用するナイフはスウェーデン製で刃に3.2mmの厚みがあり、刃の長さが9cmのもの。ハンドルグリップはラバー製でしっかりと安全に握ることができ、直径が7cm径程度の木までなら柿割り(※後述)に使うこともできます。

木から削り出す作業は前記の刃の厚みがあるナイフでも可能ですが、繊細なカーブや少し複雑なデザインにしたい場合は、細身で薄い刃のナイフもあると美しく削れます。

STEP 3

丸太を「玉切り」しよう

  • 丸太に直交する向きで刃を入れる

伐り倒されたままの長い丸太を、活用したい長さに筒切りすることを「玉切り」と呼びます。今回は直径7cmの丸太を長さ16cmに切り出します(この長さは我が家でバターナイフを使ううちに行き着いたベストな長さです)。枕と呼ばれる台へ丸太を載せ、足などでしっかりと丸太を固定してから、台の外側の際をノコギリで切ります。

ノコギリは材に対して直交する向きで刃を当て、切り口が斜めにならないようにその角度を最後までキープします。切り進むときは、ノコギリの刃の切れ味をサポートするような感覚で前後させます。使用するノコギリに合った力と速度で切っていきましょう。

STEP 4

玉切りを「柿割り」しよう

  • 8等分する線を描きナイフで二等分する
  • 二等分した材をさらに二等分していく
  • きれいに8等分された材

食べる柿は普通、剥き終わると櫛型にカットします。その櫛形にカットした姿を上から見たように丸太を割ることを「柿割り」と呼んでいます。

まずは玉切りの断面へ「柿割り」のガイドラインを書きます。今回はバターナイフのハンドルグリップに膨らみを持たせたデザインにするので、やや厚みを残した8等分に。その際、ガイドラインの中心を必ず年輪の中心に合わせます。中心にすることですんなりと割れやすくなります。

割る際はまず半分に割ります。垂直に立てた材を両断する向きでナイフの刃を当て(このときのナイフの刃も垂直になるように注意)、ナイフの峰側を別の丸太などで叩いて割り進んでいきます。材を半分に割れたら、その材をさらに二等分に割っていきます。これがきれいに割るコツです。

STEP 5

横からのシルエットを削ろう

  • 素材にデザインを描き入れる
  • 固定した材をしっかり握ったナイフで削る
  • 窪みの削り出しは両側から刃を入れる
  • おおまかな形を削りだせた

割った素材へバターナイフのデザインを描き、削り落とす部分を斜線などでわかりやすく記します。まずは横から見たシルエットから。そしてこのデザインのシルエットにだけ集中し、削り始めます。

厚みのある部分は大きく削ります。刃厚のあるナイフをグーに握り込んでしっかりと持ち、削り台などに木を押し付け上から削ぎ落とすようにすると安全に素早く削れます。

木は繊維に沿って割れる性質があるので、一度に強い力をかけると望まない場所まで繊維に沿って欠落させてしまうことがあります。これを防ぐため、繊維を断つ向きに窪みを付けるデザインの場合は、窪みの両側から少しずつ削ります。削り落とす場所の前側からナイフを入れたら、木の向きを持ち替えて今度は後ろ側から削ります。一番凹む部分で両側から入れた刃が出会うように削ると、凹部をきれいに削り出せます。

STEP 6

縦からのシルエットを削ろう

  • バターナイフの峰側のデザイン
  • 右手で膝上にナイフを固定し左手で材を引く
  • 左手で膝上に材を固定し右手のナイフで削る

次は縦(バターナイフの峰になる部分)からのシルエットをSTEP5と同じように記します。

使用するナイフはSTEP5と同じです。削り方も同じでも良いですが、削り進むうちに少しずつ繊細さが求められていきます。この場面で無理なく安全に削る方法として、肘の曲げ伸ばしを生かす技法が2通りあります。ひとつ目はグーの手でしっかり握ったナイフを膝の上へ押し付けるように固定し、ナイフの刃に木を当てて、木を持つ側の腕の肘を引いて削る方法。もうひとつは木を持った手を膝上に固定して、木にナイフの刃を当て、ナイフを持つ腕の肘を伸ばすようにして削る方法です。

ナイフや木のどちらかを固定するのでブレもなく正確に削ることができ、全身の筋肉を使えるため力もあまり必要ありません。そしてなにより安全です。

STEP 7

先端・後端からのシルエットを削ろう

  • 刃の先端側からチェック
  • ハンドル後端側からチェック
  • 素材を握った手の親指で押し繊細に削り出す
  • 膝上で利き手でない手で固定し利き手で削る

シルエットを基準に削る工程の最後の作業は、端から見た際のシルエットの調整(端からのシルエットとは、バターナイフの刃の先端側とハンドルの後端側から見た場合の形状のことです)。仕上げに近づいたこの段階からは、細身で刃幅が薄く、先端に向かってより細くカーブしたナイフが作業に適しています。

この工程でのポジションは、ナイフを利き手にしっかりと握り、利き手でない手で素材を握ります。そして、素材を持っている手の親指でナイフの峰を押して削ります。この削り方とSTEP6で使った削り方を組み合わせて削っていきましょう。

木のバターナイフの刃の部分は、あまり薄くし過ぎると欠けやすくなります。峰のほうに厚みを持たせつつ、刃の3mm手前くらいから鈍角に刃を付けるように削ります。

STEP 8

全体を仕上げよう

  • 細かい作業ができるナイフで少しずつ削る
  • 角を少しだけ面取りして強度を高める

仕上げの工程では、全体に流れるような柔らかいラインを意識しながら、自分が使いやすい刃の形とハンドルの形にしていきます。少し削ってはハンドルを握り、バターナイフを使う真似をして確認しつつ形を仕上げていきます。

くびれの部分は前後から薄く少しずつ削って、滑らかに仕上げていきます。

そして完成形になったら、最後に全てのエッジをほんの少し面取りします。木の道具は角があると欠けたりササクレになったりしやすいので、丁寧にこの作業を行ないます。

STEP 9

ナイフの削り跡は手削りの証

  • 完成したバターナイフ
  • いろんなデザインのバターナイフ

生木から人の手で削り出すグリーンウッドワークは、刃物だけで削って完成とするのが主流です。生木は容易に削ることができるので、ひとつ作るごとにまた削りたくなります。そのうちに技術も高まり、自由にデザインしてスプーンや器などいろいろなものが作れるようになってきます。容易に作れること、作品に削った人のナイフ跡が残ること、削り跡が木の表情に重なること。その3つがグリーンウッドワークの魅力と言えるでしょう。

なお、どうしても滑らかにならないときやササクレが残る場合は 240番~400番くらいのやや目の細かいサンドペーパーで気になる部分を磨いてもよいでしょう。刃物だけで仕上げるのが主流と言いましたが、決まりはありません。思うがままに作っていきましょう。

STEP 10

日々使って食事を楽しみながら、バターナイフを育てていこう

  • 使うことで風合いが深まっていく

グリーンウッドワークは作品ができ上がっただけでは終わりません。作品は日々使っていくことが最も大切です。自然の木というひとつの命から頂いた素材から作らせてもらったのですから、絶対に無駄にしたくないですね。

日々使っていくことで、色も艶も増してきます。もし使いにくかったら、少し削りなおしたっていい。使って調整するのを繰り返すうちに、いつしか唯一無二の手放せないバターナイフに育っていくことでしょう。

削り終えたばかりのバターナイフはまだ生木のままです。もしそのまま放置したり引き出しへ仕舞い込んだりするとカビることもあります。でき上がったばかりのバターナイフはすぐに使うことができ、使い続けることでカビ防止にもなります。時々オリーブオイルなどを塗るとさらに色艶が良くなり、ジャムやソースなどの色が移る心配もなくなります。

STEP 11

『やった!レポ』に投稿しよう

実践したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。

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まとめ

グリーンウッドワークは木工の中では非常に始めやすいジャンルです。準備する道具もごくわずかで数千円あれば始められます。難しいのは生木の入手かもしれません。僕は街中に住んでいたときは、近所の公園や街路樹の伐採を目にしたときに「木を少しもらってもいいですか?」と聞いては譲ってもらっていました。近所や友人の家で庭や畑の木を切ったものもよく頂いていました。また、キャンプ場などでは管理人さんに尋ねて、最近伐採した木を分けてもらったり、冬に雪倒れしたり台風で折れたりした木から切らせてもらっていました。

こんなふうに、ひと声かけたり、気に掛けておくと日常のなかでも素材を入手することができます。どうしても素材の入手が難しい場合はグリンウッドワーク向けの生木の真空パックも売られています(「グリーンウッドワーク」「素材」などの語句で検索してください)。

また今、全国でグリーンウッドワークのコミュニケーションスペースが生まれているので、そんな場所で聞いてみるのもいいでしょう。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性2
4知性
3感性
アクティビティ
つくる
環境
山 ・ 森 ・ 街 ・ 公園
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
小学校中学年以上
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