北海道苫小牧の山菜料理店に生まれ、幼いころから北の原野で山菜採りを手伝い、調理場では刃物を握って遊んでいた。そんな記憶を辿るように、自然と刃物と共にあるアウトドアと暮らしを実践。自然の素材やリユース材でアウトドアツールから暮らしの道具までも作り、その醍醐味と奥底にあるメッセージをイベントやワークショップ、SNSや雑誌連載などで伝える。現在はステンドグラス作家の妻と中学生の娘、ダウン症の小学4年生の娘と4人で小さな里山を有するセミセルフビルドの自邸で暮らす。NATURE WORKS 代表。著書「東京発スローライフ」オレンジページ、「里山ライフのごち
そう帳」実業之日本社。
キャンプやBBQなどのアウトドアは憧れるけれども「まだやったことがない」「やりたいけども、きっかけがつかめない」。あるいは「アウトドアは楽しんでいるけれど、家に帰ってきたらまた日常に追われ、あのワクワクから遠ざかった生活になってしまう」。そんな時に試してほしいのが、家でアウトドアを演出することです。アウトドアとは、自然を感じる野外で様々なことをして過ごすこと。テントを張って泊まったりご飯を作ったりのキャンプや、ティーセットとおやつをリュックに入れてハイキングや登山にでかけたりと、非日常な楽しみをすることです。そんなアウトドア的な時間や空間を切り取り、普段の家の暮らしの中に再現してみるのです。
まずは、自分がアウトドアを感じる道具を、家の中でも使ってみましょう。使う以外にも、時折目にする場所へ置いおくだけでもいいでしょう。週末にキャンプやハイキングをする人は、その思い出の品をアウトドア道具と一緒に並べるだけでもいいです。それだけでもアウトドアをした気分になれるというか、それ自体が小さなアウトドアなんです。アウトドアというちょっとワイルドで非日常の営み。そのワクワクを日々の暮らしに取り入れるのです。
今回は直ぐにでもできるアウトドアカフェからやってみましょう。
アウトドアなポット
1
(焚き火用ポット、ホーローポット、パーコレーターなど)
アウトドア用カップ
人数分
(ホーローカップ、保温ステンレスカップ、木のマグカップなど)
キャンプ用の皿や器
1~人数分
ランタンやランプ
テーブルクロスやラグやひざ掛け
キャンプテーブルやキャンプチェア
近所の野草、アウトドアで拾った枝や石ころなど
野草を活ける物(カップ、空き瓶、空き缶など)
家の中や庭など、その時にアウトドアカフェをしたい場所なら何処でもいいです。
おすすめは外を眺められる場所。窓の横や天窓の下、庭先やウッドデッキなどの野外でできれば最高でしょう。我が家は一昨年にセルフビルドしたサンルームが最近の定番です。時間帯は朝昼夕のいつでも、お茶したいときにしましょう。
カフェセットは、基本キャンプやピクニックなどで使うアウトドア用のものを準備します。アウトドア用のカップは、落としても割れにくい金属製や樹脂製、木製などのものが定番です。コーヒーや紅茶を淹れるポットも普段アウトドアで使用しているもので、直火で使った煤(すす)が残っていたりすると雰囲気抜群です。我が家のアウトドアコーヒーは、ポット一つで循環してコーヒーが落とせるパーコレーターです。ティーバッグ紅茶は、ソロキャンプ用のミニヤカンで湯を沸かします。半野外のサンルームなので、火もアウトドア用のバーナーを使いその場で沸かすと気分はキャンプそのものです。火傷や換気などには十分注意しましょう。
【写真1】右手前から次女専用の小さなホーローカップ。その後ろは直接火にも掛けられる最もアウトドアな金属製のシェラカップと真空2重構造の保温カップ。奥はいつの間にか集まったホーローカップ。その横は4色揃いの樹脂製のカップ。保温と装飾の布カバー付きカップは台湾でいただいた思い出の品。左手前は北欧伝統のアウトドアカップ“ククサ”。
【写真2】右はバーナーで使用しているパキスタンホーローのポット。奥は焚き火で使うことに特化したステンレスのポット。左がポット一つでコーヒーが淹れられるパーコレーター。手前はソロキャンプ用のチタン製ヤカンで瞬時にお湯が沸く。
【写真3】左は最もコンパクトになるタイプのバーナーで、燃料はアウドドア用ガス缶。ガス缶には台湾の友人から貰ったかわいいカバーを被せた。左はカセットガスの缶も使えるタイプのバーナー。
アウトドア気分をさらに高める小道具も重要です。ゆったりと時間を過ごすイメージで、テーブルに置いても違和感の無い道具を選びます。特にキャンプ用のランタンやランプなどは雰囲気があります。日暮れ時など、半野外等であれば換気や火傷に注意しながら灯すこともありますが、あくまで自らの責任で行いましょう。
【写真】左は灯油のハリケーンランプ。手前はキャンドルランタン。その後ろは妻自作のステンドグラスのキャンドルランタン。奥はアウトドア用ガス缶のランプ。左は数年前の私の誕生日に妻がプレゼントしてくれた年代物のキャンプ用ランタン。
その時期の野草を摘んできて活けましょう。住宅街や公園でもちょっと外を歩くだけでそこはアウトドア。風や陽や気温を肌で直に感じながら、野草を探して、摘んで、活けることで、外の季節をカフェにもたらします。ただし、野草摘み禁止エリアなどもあるので注意しましょう。野草がないときは拾った木の実など、外の空気感だけでもいいでしょう。
眺めたい外の景色や飾る野草、お気に入りのアウトドア道具などのメインテーマを、まずは決めていきます。次にそれを愛でるための配置を考える、という具合でテーブルセッティングをしていきましょう。バーナーなどの火やポット熱い湯などは、ちゃんと注意できる人の脇へ置きましょう。
好きなものを飲んで、好きなものを食べる、ということでいいのです。ただしアウトドアというテーマなので、あまり凝ったものや高級なものである必要はないです。短時間で用意できて、片付けも楽なものにします。
今回はアウトドアでいつも使用している鋳物のスキレットというフライパンでホットケーキを焼き、冷蔵庫にあった梨ジャムとハスカップでソースを作り載せながらいただきました。取り皿もカットするナイフもキャンプ用のもので、セルフサーブでラフにしましょう。
その日の気分や都合で、家族の誰かがカフェマスターになってもいいです。
「今日のカフェは3時からね」と、この日は長女がマスター。ちょうどバレンタインで友達に渡すお菓子を作っていたので、それをスイーツにアウトドアカフェをコーディネートしました。アウトドア道具も自分でセレクト、使い方もマスターし、セッティングから火の扱いまで手馴れたものです。初めて焼いたというマドレーヌをいただきながら、この日は父娘二人でアフタヌーンティーになりました。
宿題や部活で忙しい娘、ステンドグラス作家業で週末も製作したり出展に出ることが多い妻、イベントや野良仕事の私。そんな日々で家族4人が一時ほっとする時間。それが我が家のアウトドアカフェです。いつか行ったあのキャンプの道具。娘が幼いころに使ってたカップ。次のキャンプで使う予定の新しい道具。そんなアウトドア道具をセットして家カフェをする。そう、あのアウトドアを家に持っきて、毎日に活かすように外の風を取り込むのです。
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アウトドア道具を使ったホームカフェには、幾つかの利点があります。ひとつは、災害などの時に役立つ道具を普段から使い慣れること。キャンプやアウトドアでは、他にもやりたいことや準備などが多く、ついつい慣れた父親がやってしまいがちなので、こういう機会にゆっくりと使い方を共有します。道具のメンテナンスの仕方や仕舞っておく場所も教えておけます。もう一つは、道具を前にすると、娘が生まれる前に夫婦で行ったキャンプの話や、父が一人で楽しんで来たワイルドなアウトドア体験談も自然と伝えられ、「今度はみんなで行こうよ」という流れに自然とつながっていきます。たとえそれがアウトドア未経験でも、道具を前にすると、キャンプってどんななんだろう、一回みんなで行ってみようってことにもなるのではないでしょうか。楽しみながらゆっくりしながら、いざという時にも役立ちつつ、アウドドアや自然にに思いを馳せる。そもそもこの暮らしそのものが、自然の一部なんじゃないかってことにもなるかも。そんなカフェタイムをぜひ一度、家族や仲間でやってみてほしいです。