2016.09.204803 views

半月で地球の公転を実感する

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上田壮一

一般社団法人Think the Earth 理事/プロデューサー

月を観て愛でることは、古来から日本人が親しんできた習慣であり、文化です。特に満月は、お月見に代表されるように夜半に夜空に浮かぶ「まんまるな月」を愛で、月光の下でお酒を楽しんだり、楽器を鳴らし、和歌を詠んだりと、古くから夜の楽しみの機会として親しまれてきました。また新月は、時に「皆既日食」や「金環食」を起こす大イベントが訪れる大役を果たします。新月の夜は月明かりが無く、星が明るく見えるので、星空を楽しむには最適な夜になります。では半月は、どうでしょうか? 「あー、月が出ているなぁ」とは思っても、満月のように心の琴線に触れるような体験にはなかなかならないですよね。でも、半月が今見えている場所は、実は、数時間前(後)に、地球がいた(いる)場所なのだと知ったら、どうでしょうか? たとえば、デートの時に彼女に「さっき、レストランで食事をしていたとき、僕たちは、あの月のあたりにいたんだよ」と言ってみたりして(結果に責任は負いませんが)。実は半月は、視覚的に地球の公転を体感することができる機会なのです。ちょっとした知識があれば簡単に理解でき、しかもロマンチックな「半月の楽しみ方」をご紹介します。

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準備するもの
  • 『天文年鑑』(誠文堂新光社)最新版

    1冊

  • 星座早見盤

    1つ

  • 暦のアプリ、天文アプリ、暦サイト

  • 解説用シートあるいはシートが入ったクリアファイル

STEP 1

いつ半月になるのか調べる

いつが半月なのか、どうやって知ったら良いでしょう。あらかじめ『天文年鑑』や暦アプリなどで、月齢(月の満ち欠け)を調べましょう。新月から7日ほど経った「上弦の月」、満月から7日ほど経った「下弦の月」が半月となりますが、前後1日程度は、月の形はだいたい半分に見えます。

POINT

月齢カレンダーという便利なカレンダーも数多く販売されています。このカレンダーを使うのも良いでしょう。
暦アプリやサイトには以下のようなものがあります。
アプリ:「月読君」「Star Walker」
サイト:「国立天文台 天文情報センター 暦計算室」 http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/  など

STEP 2

半月をみつける

星座早見盤や天文アプリなどで、希望の時刻に月がある位置を調べましょう。そんなの面倒だ、という方は、目安として、上弦の月は太陽が沈んだあとの南の空、あるいは真夜中に西の空、下弦の月は真夜中に東の空、明け方に南の空にある、と覚えておくと良いでしょう。

POINT

上弦の月の方が、夜の浅い時間に観測できるので見付けやすいでしょう。下弦の月は、夜中から明け方にかけて夜空に探すことができます(でも流れ星の観測するときなど、その時間帯の方が都合が良い、という場合もありますよね)。

STEP 3

上弦の月、下弦の月がわかったら

上弦の月の場合「あの月は、いまから3時間半前に僕たちがいた場所だよ」と伝えてみましょう。逆に下弦の月の場合は「あの月は、いまから3時間半後に僕たちがいる場所だよ」ということになります。

POINT

実際に、3時間半前にやっていたことを覚えておくと楽しいです。たとえば、キャンプ場であれば「みんなでバーベキューしていたよね」とか「川で魚取りをしていたよね」など。

STEP 4

解説をしよう

  • 図1 地球の速さについて
  • 図2 半月と太陽の位置関係について
  • 図3 半月でわかる宇宙のひろさ
  • 図4 地球での見え方1
  • 図5 地球での見え方2

これだけでも、多くの人は感動してくれることでしょう。でも理由が知りたくなるのも人情というものです。「すごーい! でもなんで!?」という質問に答えるために、大切なのはこれから。解説ワークシートを使って解説してみましょう。まずは、宇宙空間に視点を移します。

図1 地球の速さについて(時速11万キロの宇宙船地球号)
地球は1秒間に約30kmの速さで太陽の周りを反時計方向にまわっています。つまり、時速11万kmというすごいスピードで太陽をまわっている宇宙船なのです。

図2 半月と太陽の位置関係について
この図は、だいたいの人は理科の授業でみたことがあるはずです。「新月、上弦、満月、下弦」と覚えた人もいるでしょう。太陽に対して、月が地球と直角の方向にあるときが半月です。

図3 半月でわかる宇宙のひろさ
地球と月の距離が38万kmで、地球の速さは時速11万km。つまり、約3時間半で38万kmを進むことになります。この図を見てわかるとおり、上弦の月の場合は、3時間半前に地球が通過した場所に「今、半月がある=見えている」ことになり、下弦の月の場合は3時間半後に地球が通過する場所に「今、半月がある=見えている」ことになります。
(もちろん、およその位置であり、完全に場所が一致するわけではありません)

図4図5 地球での見え方
図3を地球から観ると、こんな風に見えます。

POINT

月は太陽の光を反射して光っています。半月の弦の中心(平たい側)から弓の中心(円弧側)に向かって線を延ばすと、その先にある太陽が月を照らしていることになります。地平線(あるいは水平線)の下にある太陽の存在がちょっと想像できるかもしれません。

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まとめ

地球が太陽をまわるスピードや太陽系のスケール感を日常生活のなかでは、なかなか実感することはできません。日の出や日の入りを見ても、太陽が昇ったり沈んだりするようにしか見えず、地球が自転しているから太陽が動く、と感じることは難しいですよね。コペルニクスやガリレオ、ニュートンのおかげで「地動説」は知識としては定着しましたが、生活実感としては、まだまだ「天動説」の世界を生きているのです。そんな中で、この半月体験は、ちょっとだけ「地動説」を実感することができる面白い体験です。慣れてくると夕日を眺めているだけで、地球がまわっていることを体感できるようになります。地動説が体感できたからって、何の役に立つわけでもありませんが、世界の秘密をちょっと知った気持ちになってもらえたら嬉しいです。世界に関心を持つことは、この世界に生まれたことを楽しんで生きることにつながると思うからです。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性2
5知性
3感性
アクティビティ
見る
環境
その他
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
~30分
対象年齢
小学生高学年以上
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