幼少期を豪雪の自然豊かな地域で育ち、大学時代に野外教育を学ぶ機会を得て、富士山麓の民間団体「ホールアース自然学校」に就職。プロとしてキャンプや教育旅行、エコツアーを提供するとともに、全国各地のプログラム開発や人材育成に関わる。2006年より松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科に在籍。エコツーリズムや自然体験活動、環境教育を大学教育で取り扱う。ほかにNPO日本エコツーリズムセンター共同代表理事、自然体験活動推進協議会トレーナー(2016年現在)。
河原など、水際の自然にでかけると、たくさんの石がころがっています。この石の性質を見ぬいて、書ける石を探し出します。かたい石を硯(すずり)に、やわらかい石を墨(すみ)のようにして、水をつけてこすると、天然の「絵の具」ができます。白や灰色、黄土色…いろいろな色に出会えます。天然の絵の具を顔に塗って、フェイスペイントをしてみましょう。子どもなら、鼻とひげを書いて、ネコやネズミになるとかわいいです。大人なら、インディアンのような勇ましいペイントや、サッカーのサポーター風のペイントもカッコいいです。顔にペイントしてもらう時は、大人も子どもも、おじさんも幼児も、みんなが神妙な顔つきになり、出来上がると鏡をみて笑ったり、喜んだりする姿が微笑ましいものです。この天然の絵の具は、乾いても水で洗えば簡単に落ちますので、皮膚への悪い影響はありません。顔が気になる方は、腕にイニシャルを書くとタトゥー風になります。ただし、そのまま乾いて長時間おいておくと、日焼けで跡が残りますのでご注意を!それとも、日焼け跡を楽しむのもいいかも知れません。
自然の中には2種類の石があり、かたい石とやわらかい石に分けられます。どれがやわらかい石で、どれがかたい石か、まずは見た目で選んで手に取ってみましょう。かたい石は手のひらに入る大きいもので、平面がどこかにあるものを選んでください。やわらかい石は片手で持てるサイズであれば、大きさは問いません。
正解を試す方法は、2つの石をこすり合わせてみることです。やわらかい石は、かたい石に当たってどんどん削れていきます。すぐに削れてしまうのは、とてもやわらかい石。なかなか削れないのは、ちょっとかたい石です。この先の作業を考えると、できるだけやわらかい石を探しましょう。
河原で石の上を歩く時は、グラグラ動いて捻挫をしやすいので、靴をしっかりはいて、足元の安定を確認しながらゆっくりと歩きましょう。また、帽子をかぶり、水分補給も忘れずに!小さな子どもがいる場合は、水辺が近いこともあるので、安全対策を行い、保護者が付き添いましょう。
書けるほどのやわらかい石を見つけたら、かたい石とやわらかい石の両方を、水で濡らしてこすってみます。砥石(といし)で刃物を研ぐときや、硯で墨をすった時のように、粘性のある液体ができます。これが絵の具になります。
できた絵の具を、顔や手につけてみます。石によっては色がちがったり、濡れた時は全体的に色が薄いかもしれません。しかし、乾くとどんな石も白っぽくなってくるので、色の具合はしばらく待ってから見てみましょう。写真では濡れているときは濃いグレーですが、乾くとかなり白っぽい灰色になります。
絵の具の確認ができたら、硯になるかたい石に水を落としながら、どんどんやわらかい石をこすり合わせて、絵の具の量を増やしていきます。ある程度の絵の具がつくれたら、モデルさんの顔に指でペイントしていきます。まるでメイクアップアーティストが、おしろいやほお紅をモデルさんに付けていくように!絵の具が足りなくなったら、つくりながらペイントしましょう。
ペイントする場所は、おでこやほほ、鼻の頭、あごなど洗いやすいところが良いでしょう。目のまわりや鼻の穴、唇などは、絵の具が体内に入ってしまうかもしれないので避けましょう。顔が気になる人は、腕などにイニシャルをペイントするのも、タトゥーのようで楽しいです。
水分の調節は描きながらみていきましょう。絵の具がかたすぎず、水っぽくなりすぎない程度にします。ただし、乾けば白くなるので、少々水っぽくても大丈夫です。
ペイントが出来たら、自然に乾くのを待ちます。天気が良ければ3~5分で乾いてしまいます。だんだん乾いていく様子や色の変化を観察するのも楽しいです。
絵の具が完全に乾いたら、完成です!皆で記念撮影をしてみましょう。どうですか?かわいく(カッコよく)できましたか?フェイスペイントを楽しんだ後は、水で洗い流せばすぐに落ちます。
粘土が乾くのと同じく、乾燥すると絵の具は収縮するので、皮膚がややつっぱる感じがします。乾燥した状態でこすってもかなり落ちますが、小さなお子さんの場合は、気になって顔をこすり、絵の具を目に入れてしまうかもしれません。フェイスペイントで遊んだ後は、区切りをつけて一緒に洗ってあげると安心です。
この遊びを通じて、かたい石とやわらかい石の見分け方、石の色、そしてまったく削れない石の存在など、いろいろな石に出会えます。顔料といわれる絵画や工芸の材料、生活に使われる色も、もとは石をはじめとした自然から採取したものです。石は鉱物であり、自然界の安定した各種元素から成り立っています。石の種類を覚え、学術的に分類するのは、最初は難しいですが、こうした遊びを通じていろいろな石があることを楽しむのも良い機会かもしれません。このワークでは、子どもも大人も夢中になり、時のたつのを忘れます。河原や公園での過ごし方が、またひとつ増えるでしょう。風や川の音を聞きながら、没頭している時間は心の良いリフレッシュです。みなさんにもこの遊びを通して、いろいろな発見や楽しみを広げてもらえると嬉しいです。