大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
WILD MIND GO!GO!アンバサダー
体を動かすアウトドア遊びに必須なのが飲み物。緑茶や麦茶、スポーツドリンクなど喉を潤す飲み物を水筒に入れて出かけていると思います。だけど飲む行為は立派な食事。喉を潤すだけでなく、栄養をとったり、疲れを癒したり、体を温めたりすることだってできるんです。
今回ご紹介する甘酒は、飲む点滴と言われる日本伝統のエナジードリンク。お出かけの前の晩に水筒に仕込んでおけば、甘くて栄養満点な甘酒が楽しめます。このHow toでは、麹菌をつかって甘酒を作り、アウトドアで楽しむ方法を紹介します!
[甘酒の材料]
乾燥米麹
100g
残りご飯(冷凍のものでも可)
200g
水
300cc
[甘酒作りに必要なもの]
水筒(600cc以上、保温時間6時間以上のもの)
鍋
木ベラ
ボウル
計り
温度計
[お出かけに必要なもの]
牛乳
500ml
チューブ生姜
水筒(牛乳を入れるもの)
コッヘル
スプーン
甘酒を作るのに必要な材料はたった3つ。麹、ご飯、お水です。麹は通常生麹を使いますが、今回はスーパーなどでも簡単に手に入る乾燥麹を使います。ご飯は夕食の時に食べる分より半合ほど多めに炊いてもらいましょう。
甘酒作りで使用する道具を準備し、手をしっかり洗ってください。水筒には沸騰させたお湯をたっぷり注ぎ、保温しておきます。次に、市販の乾燥麹を100g計ります。袋から出すとブロック状になっていますので、ちぎって計量してください。
甘酒を仕込む水筒は、600ml以上入るもので、保温能力が高いもの(80度以上で6時間以上持つもの)がオススメです。
固まりになっている麹をバラバラにほぐします。麹の塊をひとつまみ手に取り、ボウルの上で手をこすり合わせるようにすると麹の力でくっついていた米粒が剥がれて崩れていきます。
虫眼鏡で観察してみると米粒のようなものに、細かなふわふわしたものが覆っています。これが麹菌です。麹菌はカビの仲間、炊いたお米に培養し、そのチカラを人間が利用しています。その姿は目に見えないほど小さいですが、室町時代から日本人が共に歩んできたパートナーなんです。
麹を手で擦り終わった後の手のひらを触ってみてください。すべすべになっていませんか?これは麹の持つ酵素と、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸のパワーです。
残りご飯を200g計量します。温かいうちが良いですが、冷えたもの、冷凍でも構いません(冷えたご飯を使用する場合は調理時間が少し長くなります)。
計量したご飯を鍋に入れ、水を300cc注ぎます。コンロにかけて弱~中火にし、木べらでご飯粒を崩すようにかき混ぜ続けます。しばらく混ぜ続けるとサラサラだった水に粘りが出てきます。ご飯のデンプンが溶け出してのりのような状態=おかゆになったら一度火を止めてください。
おかゆをひとさじ食べてみよう!(やけどに注意)
香りや食感、甘みを感じてみよう。
おかゆができたら火を止めたまま、木べらでかき混ぜて温度を下げていきます。温度計で計りながら作業をしましょう。おかゆの温度が60~70℃(麹に含まれる酵素が働く温度帯)まで冷めたら、麹を入れてまたかき混ぜてください。かき混ぜているうちに、さっきまでの粘りが消えて水分がサラサラになっていきます。
この工程の間にまた温度が少し下がるので、もう一度弱火にかけて、よくかき混ぜながら60~70℃に戻してください。
麹に含まれる酵素がおかゆの粘り(デンプン)を分解して糖に変えていきます。酵素は60~70℃で最も活発に働き、それ以上の温度では壊れていきます。温度に注意して作業をしましょう。滲んだ白い液体を舐めてみて、味を確かめてみよう。
甘酒の種が60~70℃に戻ったら、水筒のお湯を捨て、スプーンなどで中に移していきます。この状態ではまだ個体に近いです。移し終わったら、容器を揺すり、中身に隙間がないようならします。蓋をして8~10時間ほど寝かせれば完成です!
寝かせるのは常温で問題ありませんが、室温が極端に低い場合や、水筒の保温力が低い場合は、外側にタオルを巻くなどして養生してください。
容器に移すときの粘り具合を覚えておこう。麹の力で、翌日どんな変化をしてるかな?
翌朝になりました。中身を見てみたくてウズウズしますが、そこはぐっと我慢。せっかくなので外で楽しみましょう!甘酒は通常、お湯などで希釈して楽しむ飲み物です。今回は筆者のオススメの牛乳甘酒で楽しみたいと思います。飲む点滴と言われる甘酒ですが、たんぱく質はほとんど含まれていません。これを牛乳で補って、美味しいエナジードリンクに仕上げます。
公園にやってきました。寒い時期ですので、HOTドリンクで楽しみたいと思います。まずは、コップに甘酒を注ぎます。昨日とはうって変わって水分が多く感じ、どろっとした液体になっています。ひとくち舐めてみると、むせるほど甘い!無事甘酒の完成です!
このままでは甘くて飲めないので、牛乳で割って飲みます。牛乳はその場で温めて割ると良いですが、今回来た公園は火器の使用ができないため、あらかじめ温めてきた牛乳で割ります。割る量はお好みですが、甘酒の2~3倍の牛乳で割るとちょうど良いです。アクセントで生姜を入れるのもオススメです。体を温める成分が加わって、さらに冬に最適な飲み物になりますね!
水筒から出てきた液体を、前日仕込んだ状態と思いくらべてみよう!なんでこんなに甘くなるの?それはおかゆのデンプンを麹が分解し糖分に作り変えたからです。
これは麹菌が生きて作用したのではなく、麹菌が作り出した分解酵素が麹の中に沢山蓄えられていて、60~70℃の活性温度帯でおかゆのデンプンを分解したからなんです。
美味しい甘酒が作れたら、ぜひ『やった!レポ』に投稿してください。感想などは、『コメント』に記入してください。
麹菌はカビの仲間です。「カビ」と聞くと体に悪いもの、というイメージがありますが、日本人は、というより人間は古来より、目に見えない小さな生物と共生してきました。人間の体の中にも腸内細菌をはじめとした無数の菌が暮らし、体に恩恵を与えています。人を動かすエネルギーを作るミトコンドリアだって、もともとは別の生き物です。目に見えないものを怖がらず、体で感じて、アウトドアライフを楽しみましょう♪
※注意事項
・手作りの甘酒は自然そのままの生の食べ物です。甘酒が残ったら家に帰ってすぐ鍋で煮沸消毒し、粗熱を取ったら冷蔵庫で保管してください(1週間程度で食べきってください)。
・野外で火器を使用する際は、山や地域、公園などのルールを確認し、十分に注意して使用しましょう。
・甘酒を仕込む際は水筒や魔法瓶に書かれている注意書を守って使用しましょう。
・調理をする際は、やけどなどに十分注意して、必ず大人と一緒に作業するようにしましょう。
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