1962年東京生まれ。武蔵野美術大学卒。
東京都レンジャーとして、奥多摩、高尾の国立、国定公園を管理後、東京都指定管理者として都立公園を管理。主にインタープリテーション、環境教育、環境保全にあたる。NPO birth理事、兼レンジャー部長。森林インストラクター。著者「ハチスカ野生食材料理店」他、アウトドア誌等の執筆多数。
NPO birth: http://www.npo-birth.org/
『越年草』(エツネンソウ)と呼ばれる植物があります。ナズナやタネツケバナなど、秋の終わりに芽を出して寒い冬をしのぎ、春一番に花を咲かす草たちです。稲刈りが終わった田んぼや、ちょっとした水路の脇などにたくさんあります。そこは今まるで春のように。柔らかな草の海なのです。
さあ冬の摘み草へ行きましょう!裏側の春に入りこもう!
参考書:「野草のロゼットハンドブック」(文一総合出版 亀田龍吉)・「ハチスカ野生食材料理店」(小学館 蜂須賀公之)
遠くへ行く必要はありません。住宅地の片隅の畑や、河川敷など、柔らかな緑色が見えたら、そこへ行ってみましょう。
住宅地の中を抜け、小さな川沿いを歩くと、、、なんと小さな田んぼがありました!すごいなこれは秘密のスポットだ!わらぼっちまであるぞ!
田んぼの中や、水路の脇は、柔らかな野草でいっぱい!こんなかんじの、あたりまえのような緑、みんな素通りするだろうな。でも僕から見れば、とても初々しく柔らかで、おいしそう!
越年草たちは、ロゼットという花飾りのような形で、地面にへばりついています。
魚の骨のように、細く横に飛び出す葉があるのはナズナ。キャベツのような「青菜の基本!」という味がします。
タネツケバナはこんもりして、まるっこい六角形のような小さな葉がいっぱいついています。カイワレダイコンのような爽やかな辛みがあります。
ちょっと木のあるところでは、カキドオシがかわいい丸い葉を並べ、地面を這っています。タイムのような香りがあります。
同心円状に広がるロゼットの中心に根があります。葉の脇からナイフを入れて、ここをかき切れば簡単に採れます。ナイフは先鎌のような曲がったタイプがあると便利です。土を落とし、下の方の枯れた葉を摘み取って持ち帰りましょう。
乾いた水路にはセリが、木陰にはカキドオシが!
写真のバッグは保温できる防水機能がついたものですが、コンビニ袋でもOKです。
さあ、いっぱい採れました!美しいですねえ。よく水洗いをしたら、つまみ食いをして味を確かめましょう。
野生食材は採れた場所、時期などで味や香りが違います。つまみ食いをしながら料理のイメージを広げましょう。
今回は、1時間ほどで、タネツケバナ、ナズナ、カキドオシ、セリ、カラスノエンドウなども採れました。
ロゼットは一つの束なので、それを崩さないように下ごしらえしましょう。下の方には枯れた葉があるので、取り除きます。
ロゼットは中心でひとつにまとまっています。ここを切り離すのは一番最後にしましょう。全体の形での正確な同定、調理効率のためです。
採集した野草で作った料理を紹介します。皆さんもぜひチャレンジしてみてくださいね。
『タネツケバナのホットサンドと、ヨモギを入れたカレースープ』
ホットサンドにはナツメグを振って、スープはさらりと軽いカレーの風味で、ヨモギとのバランスを取ります。
『小さなイカのボイル、カキドオシとセリの風味』
柔らかく茹でたイカに、セリとカキドオシを刻んで和え、オリーブオイルを回します。
『野草とイナダのシャブシャブ』
ナズナ、タネツケバナ、セリ、クレソンなど、薄切りにしたイナダとしゃぶしゃぶに。
寒い日には嬉しいごちそう!いろいろな香りがやってきます。
越年草で冬の野草料理を作ったら、『やった!レポ』に投稿して、みんなと体験をシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
冬に草摘みをするなんて、聞いたことがないかもしれません。でもまさに今!晩秋から年明けくらいまでが、草摘みの『裏の旬』なのです。誰も知らない季節の裏側へ忍び込み、柔らかな野草を我が物としましょう!春は急ぎ足に去ってしまいますが、『裏側の春』静かに待っていてくれます。
*注意点・コツ
犬の散歩に使われるような場所は避け、清潔なところで採集しましょう。たくさんあるところから、いいものを必要なだけ採集しましょう。「あった!取るぞ!」でなく、周囲を広く観察しながらがコツです。