野生動物学を専攻。並行して行っていた自然保護ボランティアで出合ったインタープリターを志す。現在は高尾ビジターセンターインタープリター、高尾599ミュージアム解説員として、年間250万人ともいわれる来訪者と、高尾山の豊かな自然と歴史をつなぐべく奮闘中。
また、 野外フェスが自然と人が近づく場所となることを目指して、会場の自然を楽しむワークショップやガイドプログラムを展開している。
株式会社自然教育研究センター:http://www.ces-net.jp
高尾ビジターセンター:http://takaovc599.ec-net.jp
「シモバシラ」と聞くと地面にできる氷の柱が思い浮かびますが、冬の高尾山でシモバシラと言えば、「シモバシラの氷の花」が知られています。一見すると、植物の茎に咲いた白い花のようですが、本物の花ではありません。氷でできた幕が、まるで花のように見えているのです。
実は、この氷の花ができる植物の名前がシモバシラと言います。シモバシラは関東地方から九州にかけて分布しているシソの仲間の植物で、本物の花は夏から秋にかけて咲きます。冬になると葉を落として茎だけが残りますが、地面の中の根は水を吸い上げます。吸い上げられた水は茎の間から染み出し、冷たい空気にさらされて氷になります。こうして花のような氷の幕ができるのです。
12月から1月までの間、高尾山の山頂周辺や奥高尾と呼ばれる地域で見られます。
夜中に-2℃くらいまで気温が下がると、シモバシラの茎に氷の花ができます。翌日の東京都心の最低気温が0~3℃と予報されているとき、高尾山でシモバシラの氷の花が見られる可能性が高いでしょう。
氷の花ができるためには水分が必要です。土の中に根が吸い上げる十分な水がなければ氷の花はできません。1ヶ月くらいさかのぼって雨が降っているか確認しましょう。気象庁のホームページでは、過去の気象データを検索することができます。東京都八王子を選択して検索してみましょう。
気象庁ホームページから:八王子 2016年12月(日ごとの値)
https://goo.gl/N7Z4jj
雪が降ると氷の花が埋もれて見ることはできません。念のため雪が積もっているかも確認したいところです。東京都心で積雪があった日は、ほとんどの場合高尾山でも雪が積もります。そして、雪が積もってから1週間から2週間はとけずに残る場合があります。また、当日雨の場合は氷の花はとけてしまいます。
氷の花を見るためには、シモバシラの茎を見つけることが必要です。この時期、氷の花を撮影するためにたくさんの人が高尾山にやってきます。そのため、氷の花がある場所には人が集まっていることがあります。そんな場所を目印にして探してみましょう。
高尾山では山頂付近の南側斜面(5号路南側)がよく見られるスポットです。
高尾ビジターセンター:ハイキングコース
http://takaovc599.ec-net.jp/02takao/0204course/0204course01.html
午前中のできるだけ早い時間がおすすめです。時間が経つにつれて気温が高くなると、氷の花がとけてしまうからです。10時くらいまでに山頂付近に到着しておくと見られる可能性が高くなります。また、1月下旬近くになると氷の花が小さくなってしまいます。氷がシモバシラの茎を割くため、何度も氷の花ができると茎が弱り、地面から2cm程度のところで折れてしまうのです。
いくつか氷の花を見つけたら形を比べてみましょう。風向きなどが影響して、同じ形の氷の花は一つとしてありません。シモバシラの氷の花はまさに、自然がつくる芸術作品ともいえます。
氷の花をできるだけ近くで撮るために、一歩踏み込みたくなります。でも、シモバシラが生えている場所は、他の植物がくらす場所でもあるのです。その場所が踏まれて固くなると、植物が生えることのできない場所になってしまいます。春に植物が芽を出すことができるよう、写真を撮るときは道をはずれて踏み込まないように気をつけて下さい。
シモバシラの写真が撮れたら、ぜひ『やった!レポ』に投稿して、他の人とシェアしてみましょう。観察して、発見したことがあれば、コメントにも書き込んでください。
その年氷の花ができ始めてからすぐのころと、少し時間が経ってからでは、同じ株のシモバシラであっても形が変わります。また、御岳山では「カメバヒキオコシ」という植物で見られることが知られています。時期や場所を変えてシモバシラを見比べてもおもしろそうですね。
氷の花を目の当たりにすると、毎年その繊細さに驚かされます。冬の寒さと偶然が重なって生まれる自然の神秘。高尾山へ「氷の花」を見に行ってみませんか!