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長野流 ダイレクトボンファイヤー作法

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長野修平

クラフト作家、焚き火&野外料理人
火を育て、火を操る。焚火の達人になろう!

キャンプなどでフィールドに行って、最初にすることといえば焚き火の場作りです。春夏秋冬に関係なく、焚き火を中心にそこで過ごす時間が流れます。火の熱で暖を取り、煮炊きをし、炎の灯りで夜長を楽しむ。離れた場所からでも煙が立ち上る姿を見て、己の庵がそこにあると感じられるなど、火は営みの中心であり、証のようなものになってくれます。

暖、灯、食。人が憩い佇むのに必要な要素が凝縮したその存在は、普段の暮らしの中でも切っても切れないモノ。たとえそのエネルギーがガスや電気などであっても、それが無ければ憩い佇むどころか、生きることもままならないでしょう。そんな無くてはならない存在を、しかも何も無い野外の地べたに作り、楽しみ愛しみながら最大限に活用することがダイレクトボンファイヤー(直火焚き火)の作法です。

このHow toでは、そんなダイレクトボンファイヤーの作り方や、焚き火の火を操る方法を紹介します。
※子どもが火を使う場合は、必ず大人と一緒に行いましょう。また、直火焚き火を禁止している場所もあるので、あらかじめ施設や場所の管理者に確認しましょう。

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READY
準備するもの
  • 【ボンファイヤーに必要なもの】

  • 火バサミ

  • 耐火グローブ

  • 鉈+ノコギリ

  • 薪集め用のロープ

  • トライポットを結ぶロープ

  • ライター

  • バケツと水(消火用)

  • 【調理に必要なもの】

  • ナイフ

  • ダッチオーブン

  • ステンレスのクサリとS字フック

STEP 1

薪拾い

  • 拾い集めた薪
  • 長い木は1m以内に折り揃える
  • 輪にしたロープの上に十字になるように薪を置く
  • ロープで薪を束ねる
  • 肩にかけ運ぶ

直火に限らず焚き火をする場合、最初に行うのが薪拾い。森や林ならば枯れ枝や倒木、川や海の側ならば流木など、枯れて水分のない木がベスト。良い薪を見つけるコツとしては、乾燥した土や枯葉、砂や石の上に落ちていて、木の下に多少でも空気の層があるのがポイントです。最も良いのが、立ち木に枯れて付いている枝や、折れてぶら下がっている枝で、これらは多少雨が降った後でもよく燃えてくれます。また、焚き火なら乾燥させながら燃すこともできるので、多少湿気のある枝でも大丈夫。拾った薪は、1m以内に折り揃えると束ねて運びやすくなります。同時に、枯葉や枯れ草などの着火材も拾えたら完璧です。木の皮や松ボックリなど、油分のある乾燥素材も着火に役立ちます。

拾った薪をどうやって運ぶかも考えておきましょう。大きなトートバックなどがあると便利ですが、ここでは輪にしたロープを使います。2~3mのロープを輪にし、幅20cmほどの細長い状態で地面へ置きます。その上へ十字に交差させるように薪を置き、輪の端をもう片方の輪へくぐらせてグッと引くとまとまります。薪を運ぶときは肩などに掛け、転びそうな時に身をサポートできるように、片手が空いた状態にできるとよいでしょう。

薪は買っても良いですが、その土地にある素材を自らいただいて使うことが一つの焚き火流儀です。

STEP 2

炉を作る

  • 弧を描くように石を並べる
  • 焚口の脇に薪を置く
  • 炉の内側を平らにする

直火焚き火をする場合、火を焚く範囲を定める仕切りが炉です。仕切りを作ることで、万が一の延焼を防ぐとともに、そこに憩う人との境界となり、火傷などの防護柵的な役割にもなります。炉に最適な素材は石。周囲を見渡して集めます。近くで見当たらないこともあるので、薪拾いの際にも見当を付けておくと良いでしょう。

集めた石を、弧を描くように並べ、焚口は空けておきます。大きく平坦な石があれば、焚口の両脇に置くと、ポットや鍋が載せられて便利です。ほかの石も上面が平らになるように置くと、皿やカップが置きやすくなります。炉が完成したら、焚口の脇には薪を置き、炉の内側を平らにして鍋やポットが置きやすいようにしておきます。

STEP 3

トライポットを作る

焚き火炉の上に、鍋やポット、肉などを吊り下げるトライポットを作ります。トライポットは、バランスのいい真っ直ぐで丈夫な丸太3本をロープで結わえて作ります。はじめに、3本の丸太(2m前後)の脚先(エンド)を揃え、そこから同じ高さ(ここでは1.8m)の部分をロープで結わえます。

ここでは、「三脚結び」という結び方で3本の丸太を結わえています。はじめに、ロープを真ん中の木に「巻き結び」か「本結び」で固定し、次にロープを両脇の木に8の字を描くように何度も巻きつけ、足で抑えるなどしてギュッと締めこむようにしっかり固定します。丸太と丸太の間のロープを束ねるように、縦にもロープを巻きつけ、最後は最初のロープの端と結びます。

脚先を正三角形に開いて自立させると、トライポットの完成です。脚先が地面を滑りそうな場合は、鉈などで杭状に削ると滑りにくくなります。足に枝分かれなどを残しておくと、焚き火グローブや火バサミを掛けたり、夜の照明となるランプを吊るしたりできるので便利です。

STEP 4

火をつける

  • 白樺の皮を削って焚き付けを作る
  • ファイヤースターターで火を起こす
  • 火を大切に育てる

炉とトライポットの準備ができたら、集めた薪と着火材で火をつけます。地面に湿気が多い場合は、薪を平行に並べると良いでしょう。この時、燃焼に欠かせない空気が流れ込むように、風の吹く向きに平行に薪を置くのがポイントです。その上に、着火用の枯葉や木の皮を置き、小枝→中太枝→太枝の順に空気を含ませるよう組んでいきます。

組みあがったら、枯葉に着火して火を見守ります。順に太枝まで火が移り、ほぼ安定してくるまでは組んだ枝を崩さないで見守ることが重要です。もし安定する前に組んだ枝が崩れると、鎮火してしまい薪を組みなおすことにもなりかねません。ついた瞬間の火は、産まれたばかりの赤ちゃんみたいなものだと心得えて、大切に育てましょう。

STEP 5

火を操り、火を分ける(主火、副火、おき火、煙)

  • 徐々に炎が大きくなってきた焚き火
  • 炉の中で用途に合わせた火床を分ける

どんどん薪を足していき、炎が大きくなったら、用途に合わせて火を分けていきます。暖を取ったり、鍋などを吊るして湯を沸かしたりするのは大きな炎の「主火」を使います。弱火で炙ったり、ゆっくり加熱する場所には「おき火」。燻煙には燻った薪を置き、「煙」が流れていくようにします。そして、それらの予備の焚き火が「副火」です。火バサミで着火した薪を動かし、炉の中で用途に合わせた火床を分けていきます。慣れてくると、どの着火薪がどこに効果的かが徐々に見えてきて、自由自在に火を操れるようになります。

STEP 6

「おき火」を操る

  • おき火を操り調理する

火が操れるようになったら、いよいよ調理です。ここでは、「おき火」を操る比較的イージーな調理、ダッチオーブン料理を紹介します。簡単に言うと鍋に食材を入れて蓋をし、焚き火に放り込むだけ。あとは火を操るのみ。今回は、鶏モモ肉と野菜のローストを作ります。

〈鶏肉と野菜のダッチオーブンローストレシピ 〉
材料:
漬けタレ(醤油大さじ2、蜂蜜大さじ2、白ワイン大さじ2、塩小さじ2)、鶏モモ肉2枚、ジャガイモ中2個、ニンジン中1本、玉ねぎ小1個、ピーマン2個、オリーブオイル少々

作り方:
あらかじめ鶏肉は漬けタレに1時間ほど漬け込んでおき、野菜は皮付きのまま全て洗っておきます。鍋はオリーブオイルをぬり、焚き火で熱し一旦火から外します。次に、鍋にピーマン以外の食材を入れて蓋をし、おき火の上に載せてから、さらに蓋の上で焚き火をするような感覚で上からも熱を加えます(加熱の目安は、下火2、上火8ぐらいの割合)。食材が鍋へ直に接する底と横は、焦げやすいのでおき火の弱火からはじめ自然鎮火させるのがポイント。徐々に上火だけの状態にしていき、約30分ほどで完成です(ピーマンは仕上る10分前に入れておく)。野菜は串が通ればOK、肉は串をさして透き通った汁が出てきたら火が通った目安です。

おき火を操ることで、食材にじわじわ火が通り、ジューシーな鶏肉と甘みが引き立った野菜が楽しめます。

STEP 7

「熱風と煙」を操る

  • トライポットで燻煙乾燥熱料理

ガズや電気の火では味わえない焚き火の特徴とも言えるのが煙です。ここでは、トライポットを活用した「熱風と煙」を操る料理、生ベーコンの燻煙乾燥熱料理を紹介します(発酵・燻煙に時間がかかるため、このHow toの所要時間には含まれません)。

〈 熱燻 生ベーコンレシピ 〉
材料:
豚バラブロック4kg、ブレンド塩(海塩160g、三温糖80g、ローリエ4枚、唐辛子4本、粒黒コショウ20粒、ニンニク2片スライス)

作り方:
あらかじめ、豚肉にブレンド塩を満遍なく摺り込み、ビニール袋に入れ空気を抜いて密閉し、15度~10度ぐらいの場所で4日間漬け置き、発酵させます。液が白濁してきたら醗酵の印、その後は冷蔵庫で保管します。調理の前に、豚肉を冷蔵庫から取り出し、水洗いしてから、たっぷりの水につけ3時間ほど塩抜きしておきます。

焚き火は、薪の油分が燃え尽きると煙が白くなります。そのタイミングで、下ごしらえした肉をトライポットに吊るし、焚き火から立ち上がる乾燥した熱風で水分を抜き、燻った薪からあがる煙で燻煙し、保存食となる生ベーコンに仕上げていきます。

常に火バサミを持ち、肉を育て上げるような気持ちで、肉の真下におき火、その周囲で肉に沿って炎が立ち上がるように主火や副火をおき、さらにその外側で薪を燻らせて煙をあげるように、火や煙を操ります。焚き火に近い部分から2時間ほどで熱燻仕上がりになるので、ナイフで削ぎながら食べます。時折肉の上下を入れ替えたり、裏表を替えたりしながら丸1日~2日かけて仕上げます。

熱風と煙を操ることで、豚肉を燻煙し、美味しい生ベーコンに仕上げます。残った肉は持ち帰り熟成させるとさらに美味しくいただけます。上手に1~2年保存できると、極上の熟成生ベーコンになります。

STEP 8

焚き火を終わる

  • ティピ型に集めた残り火
  • 炎がなくなりおき火だけに
  • 全て灰になる

最後は、すべて灰になるのが焚き火の理想であり極意。そのコツは、あらかじめ焚き火のスタートから、どれくらいの時間で焚き火を終えるかを想定し、その時間にすべて燃え尽きる太さの薪で焚き火をおこなうことです。例えば、大木のように太い薪だと燃え尽きるのに1日以上もかかったりするので、程よい太さを選んでおくことが重要です。

終盤にかけては薪を足すのを控え、火を中央に集めティピ型にして燃やします。その周囲のおき火や、消し炭も火バサミで掴み其処へ積んでいき、次第に炎や煙が止まり、最後にはおき火のみになります。さらに集めて行き、自然鎮火させるのが理想です。途中で消さなければいけない場合は、火から離れた場所から円を描くように少しずつ水をかけていくと、安全に消せます。灰は土に返りますが、炭は残るので、火が完全に消えたら、燃え残り木や炭は全て拾い集めて可燃ごみに出すようにしましょう。最後は、炉に石を積み上げて、灰が風で舞ってしまわないようにするのが直火焚き火のマナーです。


STEP 9

『やった!レポ』に投稿しよう

ダイレクトボンファイヤーにチャレンジしたら、炎や調理の様子を写真に撮り『やった!レポ』に投稿しましょう。新しい発見や、自分なりに工夫してみたことがあれば、コメント書き込んで他の人にもシェアしてみください。

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MATOME
まとめ

この作法は、儀礼や習い事の茶事などとは違い決まった動作やしきたりはありません。あるのは、火を思う存分楽しみながらも、活用させてもらってありがとうという感謝や、尊敬のようなもの。そんな気持ちをもちながら、薪集めから灰にするまでを、自分なりに丁寧にするということだと思います。また火は、人が生きるために今も昔も必要不可欠な要素です。それを何もない地面の上で自ら作り、そしてあやつり活用できることは、物質社会の今でも大きな生きる自信につながるはずです。自力でエネルギーを作り出せる焚き火。そのあとの灰もまた次の植物の栄養素ともなり、二酸化炭素を循環して保有するとされています。

ある時はフィールドのエンターテーメントでもある焚き火は、自ずと現代の暮らしにもつながり、そしていざという時のための大きな経験にもつながっていきます。このHow toを通して、皆さんも実際に体験してみてはいかがでしょうか?

GROW CHART
成長スコアチャート
野性3
4知性
2感性
アクティビティ
つくる
環境
山 ・ 川 ・ 森 ・ 街 ・ 田畑 ・ 海 ・ 公園
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
半日
対象年齢
中学生以上
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