フリーの編集者。実用書をメインに活動。趣味は物作りと、生き物観察、釣りや登山などアウトドア。釣り好きが高じて、築地に通い魚食普及を推進するおさかなマイスターの資格を取得。HP:http://funfun-design.com/
魚は種類によって口の構造が異なります。口の構造に限らず、あらゆる魚の体のフォルムの違いには、生息域にあわせた捕食スタイルによって大きく影響があるようです。それは、魚が進化の過程で身につけてきたデザインともいえるでしょう。
このHow toでは、普段食卓にあがる身近な魚で口の構造を観察し、海で泳いでいた時はどんな捕食をしていたか、またどうしてそんな構造になったのか想像してみることで、進化のデザインに触れてみます。
まずはじめに、魚が餌を捕食する際の基本的なスタイルを2つ紹介します。
・噛みつき型
獲物にガブリと噛み付いてから飲み込むスタイル。
・吸い込み型
泳ぎながら海水ごと吸い込み、捕食するスタイル。
ほかにも、かじる、かじって反転するなど、魚は、いくつか基本的な捕食方法に分類することができます。生息域や獲物を捕まえるスタイルによって、魚の体、口の構造が異なります。次のステップから、それぞれの捕食方法にどんな魚がいるかをみてみましょう。
(1)は刺身やムニエル、カルパッチョなどでいただくヒラメ。噛みついて捕食をすることが多い魚の口を持つ魚のひとつです。ヒラメは体が平べったく、上の面に目がふたつ並んでいます。砂地にもぐって、ふたつの目で頭上を通りかかる魚をチェックしています。こうした体のヒラメやカレイは砂底に隠れて、獲物にガブリと噛みつき、弱らせてから食べます。
(2)はタチウオ。お刺身や塩焼きでいただくことがありますね。タチウオは海の中で基本的に縦に泳いでいますが、捕食の時は素早く自由に泳ぎ、獲物をとらえます。
(3)は食卓にはなかなか並びませんが、大きな体で海底を悠然と泳ぎ、獲物に襲いかかるウツボ。口先が長く、細かく鋭い歯で獲物に噛みついてから丸呑みします。ちなみにウツボは小骨が多いですが美味だそう。
彼らも吸い込める範囲の大きさの小魚程度なら、獲物を吸い込むそうですが、もしも魚すべてが吸い込むだけしか捕食方法がなかったら、なかなか食事にありつけないか、進化の過程で今のフォルムをしていないでしょう。
吸い込み型の魚の口は、食卓でおなじみの魚マアジ。マアジなど回遊しながら獲物を得る魚は、プランクトンや小魚など食事になるものを見つけると素早く口を大きく開けて、獲物を海水ごと吸い込むので、吸い込み型の口の構造をしています。
(2)のカワハギという魚は白身で歯切れがよく、お刺身として登場します。カワハギの口はおちょぼ口で、小さくかわいらしい印象を受けますがしっかりとした前歯をもち、ジワジワと餌をかじりつつ、餌を吸い込みます。水中でホバリングできるように、背・腹ビレを器用に動かすため、こうした体の形をしています。
このように、魚は捕食方法に合わせて口の構造が異なります。
私たちが普段なにげなく食べている魚たちは、海の中で生きていた頃、獲物を得るためにそれぞれにあったスタイルで成長しています。それは、長い長い年月をかけて、生き抜くために進化して獲得したデザイン。
切り身になった姿からは想像ができませんが、彼らが生きていたありのままの姿を目にし、実際に自分の手で触ることで、生き物や自然界に存在する、あらゆるもののフォルムやデザインの面白さに気がつくことができるかもしれません。