1972年生まれ。小学生時代、父親と庭に餌台を作って野鳥を呼んだことがきっかけでバードウォッチングにどっぷりはまる。その後、自然環境保全を学ぶために大学へ。千葉大学大学院園芸学研究科修了。技術士(環境部門)。12才からの恩師である故藤本和典氏の思いである、「生きもの好きを増やす」ための普及活動に力を入れている。都立葛西臨海公園鳥類園の週末スタッフやNHKラジオ「夏休み子ども科学相談」回答者(野鳥担当)などを経て、現在はフリーのネイチャーガイドや環境コンサルタントとして活動中。
個人ブログ『東京いきもの雑記帳』
https://tokyowildlife2020.exblog.jp/
カワセミという鳥を知っていますか?「水辺の宝石」とも呼ばれ、何となく耳にしたことがある方は多いかもしれません。少し前には某地下鉄のコマーシャルで、有名女優さんがカワセミを探している映像が流れていました。だいぶ市民権を得てきたと思われるカワセミですが、野外でその姿を見た経験のある方は、まだまだ少ないと思います。
「連載 バードウォッチング入門」では、これまで2回にわたって、バードウォッチングの楽しさと野鳥の魅力をお伝えしてきましたが、最後となる今回は、「野鳥界のアイドル(!)」カワセミに出会うためのコツをお教えします。漢字で書くと「翡翠」、宝石の翡翠(ひすい)と同じ字を当てます。光が当たると青く光って見える、とにかくキレイなカワセミ。これを読めば、カワセミに出会えること間違いなしです!
【連載】バードウォッチング入門
#1 鳥が、もっと好きになる!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/128
#2 「声」を頼りに身近な小鳥に会いに行こう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/138
#3 水辺の宝石「カワセミ」に会いに行こう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/145
双眼鏡
カメラ
図鑑
メモ帳
筆記用具
雨具や防寒着、日よけの帽子など(天気により)
街中はスニーカーがオススメ(もしくはトレッキングシューズ)
カワセミがどんな鳥か、最初に少しだけ勉強しておきましょう!
まず、大きさですが、意外と小さくスズメくらい。長いクチバシの先から尻尾の先まで入れても約17cmしかありません!
次に特徴的なのは、鮮やかな体の色です。ぜひ写真を見て頂きたいのですが、頭から背中にかけては光沢のあるコバルトブルー、お腹は明るいオレンジ色。地味な色合いが多い日本の鳥の中では、かなり派手な部類に入ります。
そして、もうひとつの特徴は、黒く長いクチバシです。丸っこい体から突き出したクチバシは、そのシルエットでカワセミと見分けられるでしょう。一方足は真っ赤ですが、とても短いため近くで見ないと気がつきません。
オスとメスの違いはほとんどありませんが、クチバシの色が少しだけ異なります。下のクチバシの根本付近が赤くなっているのがメス(♀)。「赤く口紅を塗っている方がメス」と覚えるとよいでしょう。
お腹の色が薄くくすんでいるのは、若い個体です。親鳥に比べるとクチバシも短めです。
つぎに、カワセミの生態(生き方)を紹介しましょう。カワセミを見つけるヒントになるので、しっかり覚えてくださいね。
まず、カワセミは何を食べているのでしょうか?
答えは、魚やエビなど水中の生きものです。小さなカエルを食べることもあるそうです。でも、カモやサギのような水鳥ではないカワセミは、どうやって水中の生きものを捕まえられるのでしょう?これはぜひ観察して欲しいのですが、木の枝や空中から水中に飛び込み、長いくちばしで獲物をはさむのです!小さな体で水中に飛び込む姿は、初めて見ると感動します!魚が元気だと、とまっている木や岩に魚をたたきつけて、弱らせてから飲み込みます。
では、そのカワセミにはいつ会えるのでしょうか?
季節でいうと、一年中日本で見られます。カモ類やツバメのように渡りをしないのです。私がスタッフをしている葛西臨海公園でも、「ぼほ」一年中観察ができます。ここで「ほぼ」としたのには、理由があります。カワセミは土の崖に自分で穴を掘って、巣にする習性があります。そのため繁殖期の春から初夏にかけては、巣を掘ることができる土の崖がある場所に、移動してしまうのです。その結果この時期だけは、見られる場所が限られてしまいます。最近は、土の壁のような人工巣台を作って、誘致している公園もあります。
カワセミの形態と生態を覚えたら、探しに出かけましょう!探し方のコツをご紹介します。
① 声に注意しよう!
ここで紹介するコツの中では、とにかくこれが一番大切です!私もカワセミの存在に気づく時は、7~8割その声に反応しています。ではどんな声かというと、イメージは自転車のブレーキ音です。坂道でブレーキをかけながら降りる時の「キーーーー」という音がそっくりです。いまはネット上に動画があふれているので、ぜひ検索してみてください。そして、この鳴き方をしている時は、たいてい飛んでいます。カワセミは上空高く飛ぶことは少なく、水面近くを低く、速く、まっすぐに飛んでいることがほとんどです。なので、声が聞こえたら、その方向の水面近くに目を向けてみましょう。
② 川や池に張り出した枝や杭に注目しよう!
川や池に到着したら、まずこれをやってみましょう。いつもこのような目立つ場所にいるわけではありませんが、小魚などを狙うのによい場所があると、カワセミは気に入って何度もやってきます。そういう場所はよくとまるので、フンで汚れて白くなっていることもあります。①で紹介した声が聞こえたあとに、こういうポイントを探してみると、飛んできたカワセミがとまっていることもあります。
③ カメラマンが集まっているところを探す!(※裏ワザです)
バードウォッチングの方法としてオススメするのは心苦しいですが、効果絶大なのがこの方法です。初心者の方には、手っ取り早いでしょう。特に、大きなレンズや、がっしりとした三脚がついているカメラマンが、水面の方向に並んでいる場合、十中八九カワセミがいると思って良いでしょう!もしいなくても、もっと珍しい鳥がいる場合がほとんどなので近づいてみる価値はあります。こっそりとレンズが向いている方向を探して見ましょう(笑)。
「では、カワセミを探してみてください」と言われても、どこに行けばいいか、迷ってしまうかもしれません。そこで、都内でとっておきの3大カワセミスポットをご紹介します。
① 都立水元公園 水元かわせみの里 水辺のふれあいルーム
名称に「かわせみ」が入っていてこれだけでも期待してしまいますが、みごとその期待に応えてくれる素晴らしい施設です。近くでカワセミが繁殖することもあり、一年中観察ができます。しかも専門スタッフが常駐し、望遠鏡も備えつけられています。双眼鏡をまだ用意していない初心者の方には、最適の施設でしょう。
詳しくは:http://www.city.katsushika.lg.jp/institution/1000096/1006910.html
② 都立石神井公園の三宝寺池側
練馬区の中心に位置する、歴史ある都立石神井公園には、二つの大きな池があります。それぞれの池で観察できる可能性がありますが、おすすめのポイントは西側にある三宝寺池です。中でも「水辺観察園」と呼ばれる小さな池に、カワセミはよくやってきます。この池は周りを囲うように木道や園路があります。南側からの方が、光線の具合がよくきれいに観察できオススメです。武蔵野の雑木林に囲まれた池は、散歩するだけでもほっとします。のんびりと観察したい方にオススメです。
公園ホームページ:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index006.html
③ 都立葛西臨海公園の鳥類園
私が週末にスタッフとして勤務している都立葛西臨海公園の鳥類園は、まさにバードサンクチュアリです。面積は約27ha、公園内の施設としては贅沢な広さです。一番期待できるスポットは、「上の池」と呼ばれる淡水池です。残念ながら周辺で繁殖はしていないので、4~6月は姿を消しますが、それ以外の秋から冬にかけてカワセミは毎日にようにやってきます。公園自体が丸ごとバードウォッチングスポットなので、他の鳥もたくさん見たい方にオススメです。
詳しくは:http://choruien2.exblog.jp
この他にも都内では、新宿御苑、明治神宮、代々木公園、日比谷公園などの都心の公園・緑地でも見かけます。池があり、小魚がいそうなところは、十分に可能性があります。
カワセミを観察できたら、是非「やった!レポ」への投稿をお願いします。その際、「観察した場所」と「日にち」も記入して下さい。
レポが集まれば、皆さんの手によるカワセミ観察ガイドができるはずです。一緒にやってみませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
このHow toを読んだら、ぜひカワセミを探しに出かけましょう!思いのほか簡単に観察できると思います。双眼鏡で観察できれば、その美しさや目立つ声、ダイビングするときの躍動感に、はっとさせられることでしょう。そして、今までカワセミの存在に気づかなかったことに、「もったいなかった~」と感じるかもしれません。
さて、めでたくカワセミを見られた方に、最後のアドバイスを。カワセミを探していると、他にもいろいろな鳥たちを観察できると思います。もしかしたら、カワセミより気になる鳥が現れるかもしれません。かわいい小鳥や、精悍な猛禽類かもしれません。カワセミをきっかけに、野鳥観察の世界を楽しみながら、身の回りの環境にもちょっとだけ関心を向けていただければと思います。
日本で唯一のバードウォッチングマガジン『BIRDER』;
野鳥のグラビアや探鳥地の情報、生態、識別、保全や観察アイテムといったバードウォッチングに必要な情報を満載した雑誌です。(毎月16日発売、B5判・80ページ、定価 本体1,000円+税/文一総合出版)