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2017.11.021148 views

サウンドスケープへのアプローチ

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川崎義博

サウンドアーティスト・サウンドデザイナー
耳を開いて、音が持つ意味や関係性を捉えていこう

サウンドスケープ(Soundscape)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?この言葉は日本でも1990年頃から耳にするようになりました。サウンドスケープとは、カナダの作曲家マリー・シェーファーが1960年頃に作り出した造語です。Landscape(風景)という言葉から生まれた「音風景/Soundscape」を意味する言葉で、本来意図するのは「音を単に物理的に捉えるだけでなく、コミュニティや個人との関係性の中で捉えていこう」とする概念です。
例をあげてみると… 日本では、お寺の鐘が問題になっている地域があります。時を知らせるとともに宗教的な意味合いも持ち、かつては「鐘の音を聞くと安らぐ」「鐘の音を聞くと心が和む」と感じる人は多かったものです。新しく住み着いた人で、その土地ともお寺とも繋がりが薄い人の中には、毎日鐘の音を聞くのはうるさいと感じる人もいます。鐘の音自体の大きさや種類は変わりないのに、聞く人によって受け取り方や意味は変わるのです。
サウンドスケープでは、音の物理的側面だけを見るのではなく、音が持つ「関係性や意味」を捉えようとします。サウンドスケープにアプローチをしながら、理解を深めていきましょう。

READY
準備するもの
  • 【サウンドスケッチ】

  • 画用紙、ペン

  • 【サウンドマップ】

  • 街の地図、画用紙、筆記具

  • 【サウンドウォーク】

  • 経路地図、メモ、ペン、あれば録音機やカメラ、水筒

  • 【定点観測】

  • メモ、ペン、あれば録音機やカメラ

STEP 1

アプローチ1:俳句 <haiku>

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    立石寺

「閑(しずけ)さや岩にしみ入る蝉の声」、芭蕉が山形の立石寺で詠んだ有名な俳句があります。では、芭蕉になったつもりで考えてみてください。蝉がたくさん鳴いているのに、どうして「閑さ」を感じるのでしょうか?蝉の声が岩にどうして「しみ入る」のでしょうか?蝉の声を単に物理的に捉えるならこれはあり得ないことですが、ここでは蝉の声をそれだけで捉えていないのです。想像してみてください。一生懸命立石寺への長い石段を上って来た。一休みしたくて腰をおろし、汗をふいた。ふとその時耳にした蝉の声は?芭蕉はどのように感じたのでしょうか?
「古池や蛙飛びこむ水の音」という別の句があります。蛙が池に飛び込んだ音、その飛び込んだ音が逆に静けさを表しています。では、当時芭蕉が住んでいた庵。そこはどのような環境にあったのでしょうか?その時芭蕉は考えごとをしていた?いやいや何か作業をしていてふと気を抜いた時?いろいろ考えられます。芭蕉は何を聴き、何を感じたのでしょうか?

実は、虫の声を雑音として捉えるのではなく、そこに静けさや侘しさを感じる感性。これらの音の捉え方、そして表現。そこには日本独特の文化や感性が底辺に存在します。音を聴いて俳句を読むのも、サウンドスケープへのアプローチの一歩です。

STEP 2

アプローチ2:街へ出て音を聴こう #サウンドスケッチ

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    サウンドスケッチの例

私たちは日常生活の中で多くの音に包まれて暮らしています。しかしながら、その事実に意外と気づいてなく、知らないうちに耳を閉じて生活しています。聞いていても音を聞いていない。物理的には、耳を塞がないかぎり音はいつも耳に入ってきます、でもそれを認知していない。そして、その状態が日常化すると、耳を閉じ、感性すら鈍くし、周りの環境に注意もしなくなります。
サウンドスケープは「聞く/聴く」という行為がベースになります。耳を開き、五感を開き、環境への関心や、音そのものへの関心を開いて行く、サウンド・エデュケーションというメソッドがあります。では実際にいくつかやってみましょう。

#サウンドスケッチ
音のスケッチです。目で見たものをスケッチするのは子供の頃に教わります。では、聞いた音をスケッチするのはどうでしょう?いくつか方法がありますが、ここでは簡単なものを紹介します。
スケッチ用に、画用紙、それからカラーペンなど簡単に描けるものを用意してください。公園や街の広場など座ってゆっくりできる場所を探しましょう。
まずは、画用紙の真ん中に「ペケ×」を入れてください。そこがあなたの座っている場所です。音は周囲360度から聞こえてきます。周りから聞こえる音を全てスケッチしましょう。描き方は自由です。できるだけ、言葉ではなく音を描いてみましょう。低く重い音、高い小さな音、ずうーっと続いている音。自由に描いてみましょう。
1分ほど目をつぶり音に注意を向けます。そして、15分ほどかけて聞こえる音をスケッチします。場所を変えてもやってみましょう。自分の家でやってもよいかもしれません。何度かやっているうちに耳が開いてきます。そして、自分がどのような音環境にあるかも解ってきます。

STEP 3

アプローチ3:街へ出て音を聴こう #サウンドマップ

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    サウンドマップ:震災後神戸の街音調査より

音の地図作りです。まず、住んでいる街で音の地図を作るエリアを決めます。通りなどおおよそのマップを書いてみましょう。マップができたら、それを手に街に出ましょう。ゆっくり歩きながら、時々立ち止まり、どういう音が聞こえてくるか?耳を澄まして聞こえた音をメモします。できれば数人でやると良いでしょう。自分が気付かない音を誰かが聞いているかもしれません。
メモした音をマップに落とし込み、音の地図を作ります。そうすると、普段どんな音に囲まれて暮らしているのか解ってきます。また、その街独特の音(サウンドマーク)や、いつもあるので気がついていない音、基調音(キーノート)、たまに注意を引く音の信号音(シグナル音)など、自分が暮らす街の音の構成も解ってきます。
子供達とみんなで大きなサウンドマップを作るのも楽しいです。大きなマップを作る時は、大きな紙、カラーペンなどを用意しましょう。

MATOME
まとめ

サウンドスケープが提唱するのは、「音を積極的に聴こう。耳を閉じることなく、耳を開いて行こう」ということです。耳を閉じその音を遮断するのではなく、その音が持つ意味や背景、歴史性を積極的に捉えようとします。そこに、その音が持つ新たな意味や関係性が生まれるのです。逆に、耳を閉じていると、周りの環境や騒音に鈍感になります。サウンドスケープの研究は、騒音や環境の分野だけでなく、芸術や文化、社会的な領域にまで及ぶのです。
江戸時代は、様々な売り声、風鈴の音、虫の音を聞く会など、生活の中で音を楽しみました。現在はどうでしょう?一日中イヤホンで音楽を聴き、外の音を遮断していませんか?たまには、音楽のように周りの音を聞いてみましょう。耳を閉じることなく開いていく。自分にとって必要な音を選んでいく。「地球の音」に改めて耳を澄まして楽しむ。時に「静寂の音」に耳を澄ますこともふくめて。

・参考サイト:日本サウンドスケープ協会http://www.soundscape-j.org/
・参考図書:
「世界の調律」R・マリー・シェーファー
「サウンド・エデュケーション」R・マリー・シェーファー
「サウンドスケープ〜その思想と実践」鳥越けい子

GROW CHART
成長スコアチャート
野性3
4知性
5感性
アクティビティ
聴く
環境
森 ・ 街 ・ 公園 ・ その他
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
30分~60分
対象年齢
小学生高学年以上
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