昭和20年生まれ。大阪市出身。大阪市立大学大学院博士課程修了。38年間高校で地学を教える。元大阪教育大学付属高等学校副校長。定年後地学の普及のため「自然環境研究オフィス(NPO)」を開く。大阪市立大学、同志社大学で非常勤講師を行う。現在では、NHK、毎日、朝日、産経などの文化センターで地学関係の講座を開講。ボランティア活動として、インドネシアの子供のための防災パンフ(地震、津波、火山)を作成し、配布活動を行う。著書は「鉱物・化石探し」(東方出版)、「海辺や川原のきれいな石の図鑑1,2」「3D地形図で歩く日本の活断層」「防災教育マニュアル」「宮沢賢治の地学教室」(いずれも創元社)など。
水晶(すいしょう)、ヒスイ、ガーネット、……。
憧れの天然石は、実は近くの川原や海辺で簡単に見つけられるのを知っていますか?特に日本は、石の種類が豊富で「石の標本箱」とも言われており、世界で約4,500種あるとされる鉱物のほぼ半分以上が日本で見つかっています。これらは、おおよそ何億年も前に自然によってつくり出されたもので、長い年月を経て削り出され、私たちにも比較的アクセスしやすい川原や海辺などに流れ着きます。天然石(一部を除きほとんどが鉱物)を手にすることは、いわば地球の成り立ちに触れるきっかけになります。
このHow toでは、初めて天然石を探しに行こうという方のために、川原や海辺で比較的簡単に見つけられる「水晶」を例に、天然石を探す方法を紹介します。川原や海辺の石は、意識を向けなければただの石ですが、見方を変えると宝物にもなります。自分だけの宝物を探してみませんか?
ハイキングの服装などがおすすめ
陽よけの帽子
汗や手を拭くタオル
<必要なもの>
ハンマー
ルーペ(10~15倍くらい)
軍手
簡易ゴーグル
<あったら良いもの>
カメラ(写真が撮れるスマートフォン)
ナイロン袋
磁石
はじめに、私たちの身近なところでどんな天然石が見つかるのか、写真を参考に見てみよう。写真に並べている天然石は、すべて実際に日本の川原や海辺で拾ったものです。種類によって色や形が異なり、なかにはガラスのように透き通ったものもあります。
天然石は、川原や砂利の海辺で探すのがおすすめです。川原や海辺には、石ころが広がっているところが多くあります。それは、日本の川が急流で浸食作用が激しく、流域の石を削り出し運搬し、川原や海辺に流れ着いているからです。おかげで日本は、石の観察にたいへん恵まれています。
特に、川が大きく曲がっている内側に石ころが広がっていることが多く、石の大きさは上流ほど大きく、下流に行くほど小さくなります。初めての方は、目安としてこぶしより少し小さいサイズ(3~5cm)の石が落ちている川原や海辺へ出かけると良いでしょう。
写真(1)「群馬県南牧川(なんもくがわ)」の中流、石のサイズは5~20cmほどです。
写真(2)「茨城県 久慈川(くじがわ)」の中流、石のサイズは1~10cmほどです。
写真(3)「山口県 錦川(にしきがわ)」の下流、石のサイズは4~5cmほどです。
写真(4)「新潟県 青海海岸(おうみかいがん)ラベンダービーチ」、石のサイズは1~5cmほどです。
身近なところでアクセスしやすい川原や海辺を探し、出かける前には必ず下調べを行い、おおよその目的地を決めておくようにしよう。川や海の側であれば、どこでも川原や砂利浜に降りられそうな気がしますが、実際にちょうど良いサイズの石がころがっていて、降りられる場所を見つけるのは大変です。現地へ出かけてから探すとなると、時間もかかってしまいます。あらかじめGoogle Mapや紙の地図などで、下調べしておくようにしよう。
※地図画像 出典:国土地理院
いよいよ実際に川原へ降りて、天然石を探してみよう。STEP1でも紹介したように、天然石にはいろいろな種類があります。たくさんの石の中からやみくもに探しても、見つけるのは一苦労です。そこで、はじめに目的の石を決め、効率よく探します。ここでは、比較的どこの川原でも見つけやすく、人気の高い天然石「水晶」を探します。
水晶は「石英(せきえい)」という鉱物で、石英の外形が六角形の柱状の結晶になったものを水晶と呼びます。水晶を見つけるには、まず川原に落ちている石の中から、白い色の石英を探し、その中に水晶が含まれていないかを確認します。
石英は比較的軽く、表面はツルツルしているものや、ややザラっとしているものがあります。また、他の石より硬いという特徴があります。形は丸みを帯びていて、表面に凹凸があるものを探します。
石英のくぼみの中に結晶のようなものが見つかったら、ルーペで拡大して観察してみよう。結晶が柱状であれば、水晶の可能性が高いです。
ルーペを使う際、下向きで覗く人が多いのですが、下を向くと自分の影で暗くなり見えにくいので、石に光が当たるように、まっすぐ前を向き覗くとよいでしょう。手順としては、はじめにルーペを目の前に持ってきます。次に、石をルーペの前に近づけていき、ピントがあったところで観察します。こうすると視野が広くなり石をよく観察することができます。
結晶が見つからない場合でも、石英をハンマーで砕いてみると、石の中に水晶が見つかる場合があります。ハンマーで石を砕く際は、怪我をしないように軍手をつけて、目に石の破片が入らないようにゴーグルをつけるようにしよう。
川原で見つけられる水晶は、数ミリから1センチくらいまででしょう。それでも、自分でキレイな天然石を探し出した時の喜びは、何ものにも代えられません!
天然石を見つけたら、デジタルカメラやスマートフォンで写真を撮ってみよう。カメラに接写(マクロ撮影)機能があれば利用しよう。市販のスマートフォン用のマクロレンズを利用したり、携帯電話とルーペを組み合わせて撮影することもできます。撮影した写真を拡大すると、より石を観察しやすくなります。
キレイな写真が撮れたら、『やった!レポ』に投稿してみんなとシェアしよう!拾った場所の情報や、天然石の色や形、手触り感など、気づいたこともコメントに添えて教えてください。
最後に、じっくり観察を終えた水晶は、できるだけ元あった場所に戻して帰るようにしよう。
STEP5では、比較的どこでも見つけやすい水晶を例に、天然石の探し方を紹介しました。天然石によっては、見つけられる地域が限定されるものもあります。ここでは、人気の5つの天然石が見つかるおすすめのスポットを紹介します。
瑪瑙(めのう):岩手県 久慈川(くじがわ)
翡翠(ひすい):富山県 宮崎海岸(みやざきかいがん)
菫青石(きんせいせき):京都府 木津川(きづがわ)
水晶(水晶):京都府 桂川(かつらがわ)
ガーネット:愛媛県 関川(せきかわ)
もっと知りたい方は、書籍でも紹介しているので、参考にしてみてください。
『ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑(創元社)』
https://goo.gl/31pv5e
『ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑2(創元社)』
https://goo.gl/1usNQ9
このHow toでは水晶の探し方を紹介しましたが、川原や海辺では、その他にもいろいろな天然石を見つけることが出来ます。水晶を見つけたら、次は好きな天然石をひとつ決めて探すのもいいでしょう。あるいは、形のきれいな天然石を探すのも面白いです。
川原や海辺で見つけることができる天然石は、ほとんどが数億年や数千万年前にできたものです。地球ができて46億年たちますが、最も古い天然石は約40億年前の「ジルコン」と呼ばれる鉱物です。そんな、地球の成り立ちに触れるような天然石に、身近な川原や海辺で出会うことが出来ます。皆さんも、身近な川原や海辺へ出かけ、地球の成り立ちに触れてみてはいかがでしょう!
注意事項
※私有地や管理されているエリアでの採集は、必ず管理者の許可を取りましょう。
※川原で採集した石は、観察を終えたら、元の場所に戻して帰るようにしよう。
※川原などの水辺では、水難事故に注意し、必要であればライフジャケットなどを着用しよう。