大学卒業後、天文博物館五島プラネタリウムに就職。現在株式会社東急コミュニティー運営のコスモプラネタリウム渋谷でチーフ解説員として日々宇宙を語っている。NHKラジオ第一「子ども科学電話相談」の天文・宇宙関連を担当。東京新聞連載「星の物語」を執筆中。「星と宇宙の不思議109」「太陽系の不思議109」偕成社、「はじめよう星空観察」NHK出版、「カリスマ解説員の楽しい星空入門」筑摩書房など多数出版。
一年のうちで、明るい星がもっとも多い冬の星空。寒いからと家に閉じこもらず、ぜひ夜空を見上げてみましょう。都会の夜空でも案外たくさんの星を見つけることができます。
冬の星をめぐるには「冬のダイヤモンド」を探すのが一番!冬のダイヤモンドとは、冬の夜空に輝く明るい星を結んだ6角形のことです。まるで大きなダイヤモンドが輝くようだということで、冬のダイヤモンドと呼ばれています。
冬のダイヤモンド探しに必要なのは、温かい服装と心のゆとり。これでもか!というくらい温かい服装で、午後8時くらいに南の夜空を見上げてみましょう。おうちの窓やベランダが南向きでしたら、まずは部屋の電気を消して目を慣らしてください。最低10分間は星を見て、明るさや色、星の並びをじっくりと観察します。星は一つ一つみんな違います。冬のダイヤモンド付近の星は、そんな星の違いを見るのにも適しています。
さあ、それではそろそろ冬のダイヤモンド探しの旅に出かけることにしましょう!
「外に出て宇宙を見上げよう!」
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夜8時ころ、南の夜空を見ると、どこかで1度は見たことがある星の並びがあります。長四角の中に三つの星が行儀よく並ぶ星。そう、有名なオリオン座です。三つの星は「みつぼし」というとてもシンプルな名前で呼ばれています。
オリオンというのはギリシャ神話に登場する狩人で、左手にはライオンの毛皮、右手のこん棒は振り上げて勇ましい姿をしています。長四角の星の並び、右下の青白い星がリゲル。オリオンの左足に輝く星です。長四角の左上の星がベテルギウス。少し赤みをおびた星です。
狩人オリオンの神話はいろいろ残っていますが、月の女神アルテミスとの物語を。オリオンは月の女神アルテミスと恋人同士。2人仲良く過ごしていましたが、アルテミスの兄アポロンは少し乱暴者のオリオンを快く思っていませんでした。ある夜、海に入っていたオリオンを見つけたアポロンは、アルテミスにこう言ったのです。「おまえはいつも弓の腕を自慢しているが、あそこにいる大きな熊を矢で仕留めることなどできないだろう。」
これを聞いたアルテミスはオリオンをうっかり射抜いてしまったのです。嘆き悲しむアルテミス。かわいそうに、アルテミスは大切な恋人を自分の手で殺してしまったのです。
これを見ていた天の神様はアルテミスを哀れに思い、オリオンを天にあげて星座にしました。しかもアルテミスとオリオンが夜空で会えるよう、月の通り道にオリオン座をおいたのです。今でもオリオンとアルテミスは夜空でデートを楽しむことができると言い伝えられています。
つぎにオリオン座のみつぼしを結んで下に伸ばしてください。とびきり明るい星が見つかります。おおいぬ座のシリウスです!多少の街灯があっても大丈夫。なぜなら、シリウスは星座の星の中で一番明るい星なのです。シリウスは「焼き焦がすもの」という意味がある星で、おおいぬ座の牙のあたりに輝いています。
おおいぬ座は頭が3つもあったという地獄の番犬ケルベロスの姿です。そういえばハリーポッターにも登場しましたね。かなり恐ろしい犬ですが、狩人オリオンのうしろに従順についてくるように見えます。
おおいぬ座のシリウスから目を上に向けると、こいぬ座のプロキオンという1等星が見つかります。オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンと3つの星を結んだ三角が「冬の大三角」です。
オリオン座のみつぼしを結んで、今度は上に伸ばしてください。おうし座の1等星アルデバランにあたります。アルデバランは「あとの続くもの」という意味で、プレアデス星団(日本名で「すばる」)のあとに続くように見えます。プレアデス星団は肉眼でも楽しめますが、双眼鏡やオペラグラスなどがあればぜひ向けてみてください。とてもきれいですよ。
おうし座は天の神様ゼウスが化けた姿です。ゼウスはある時天の上からとてもかわいらしい女性を見つけました。彼女はエウロパ。一目で恋に落ちたゼウスは、真っ白な牡牛に姿を変え地上に降りていったのです。
エウロパは、いきなり目の前に現われた牡牛にとても驚きましたが、牡牛は優しそうな目をしています。そのうち牡牛は、「ぼくの背中にお乗りなさい」と言わんばかりにエウロパの前にしゃがみました。エウロパが牡牛の背中に乗ったとたん!いきなり牡牛が走りだしのです。海に出ても牡牛のスピードは止まりません。海を泳ぎ、牡牛はやがて島にたどりつきました。牡牛はそこで神様の姿に戻り、エウロパに求婚したのです。ふたりはその島で幸せに暮らしました。その島は今でもエウロパの名前をとってヨーロッパと呼ばれています。
おうし座の角の星から五角形に星を結ぶと、ぎょしゃ座という星座が見つかります。一等星のカペラはとても明るく輝いている星で、「小さなめすやぎ」という意味があります。御者(ぎょしゃ)はアテネの王様の姿なのですが、やぎをとてもかわいがっていました。ぎょしゃ座はやぎを抱いて星座になっているのですが、ちょうどやぎの付近に輝くのがカペラです。
ぎょしゃ座の東隣りにふたつの星が仲良く並んでいます。ふたご座のカストルとポルックスです。よく見ると左側のポルックスが明るく見えます。ポルックスは1等星で、双子の弟カストルは2等星でお兄さん。この兄弟は弟のほうが目立ちたがりですね。
ふたご座にはこんな神話があります。カストルとポルックスは、人間と神様の間に生まれた双子でした。兄のカストルは人間の血を、弟のポルックスは神様の血を受け継いでいたのです。ふたりは幼い頃からいつも一緒で大の仲良しでした。ところがある時、兄のカストルが弓矢で射抜かれ死んでしまったのです。ポルックスは神様の血を受け継いだので、決して死ぬことはありません。しかし、兄カストルは人間なので死んでしまったのです。
ポルックスは悲しくて仕方ありません。とうとう天の神様にお願いすることにしました。「ぼくの命をお兄さんにあげます!どうかもう一度お兄さんに会わせてください!」これを聞き入れた神様は、ポルックスの命を半分分け与え、ふたりを天にあげて星座にしたということです。今でも夜空に仲良く輝くふたごの星を見つけることができます。
オリオン座のリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス。明るい星を6つ結んでみましょう。大きな六角形ができたら、それが「冬のダイヤモンド」です。
見つかりましたか?都会の空でも、空気の澄んだ星空でもきれいに見えるはずです。
夜空に輝く大きなダイヤモンドを見つけられたら、心の中にキラキラと輝く宝物もたまるはず。大切な人と一緒にもう一度見つけられたら、心の中に輝く宝物はさらに大きくなるでしょう。
冬のダイヤモンドを見つけたら「やった!レポ」に投稿して、みんなと体験をシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
冬のダイヤモンドは地球から見た星の並びです。まるで天井に張り付いた小さな点のように見える星ですが、実は一つ一つが、光の速さでも数十年、数百年かかる遠いところに輝く星なのです。私たちは遠く広がる広大な宇宙の中の地球から、今、星を見上げているのです。
毎日忙しく過ごしていると宇宙のことや地球のことを考える時間は、あまりないと思います。でもちょっと想像してみてください。私たちが暮らす地球は数千億以上の星の中にあって、宇宙は果てしなく広がっていることを。平凡な毎日と思っていても、実はこんなすごい世界に私たちは生きているのです。
星を見上げること。それは広い宇宙に想いをはせること。大きな大きな心を育てること。そんなことを考えながら、ぜひ冬のダイヤモンドを見つけてみてくださいね。
<コスモプラネタリウム渋谷 イベント情報>
「MILLEA 特別ライブ投影」
プラネタリウムの星空とともに、透明感あふれる「MILLEA」の歌声をお楽しみください。
3/3(土)、3/10(土)、3/17(土)、3/24(土)、3/31(土)各日19:00
「渋谷区桜丘町商店街 さくらまつり」
3/30(金)、3/31(土)
※詳しくはコスモプラネタリウム渋谷のホームページ、またはスタッフまでお尋ねください。
http://www.shibu-cul.jp/planetarium