2018.12.2041315 views

自然の素材でお香を作ろう

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MAKI UEDA

嗅覚のアーティスト
自然の恵みをお香に詰めて香りを楽しもう

「お香」というと、みなさん何を思い浮かべるでしょうか。仏壇にお線香をあげる方は多いと思いますが、最近はコンビニでもアロマのインセンススティックを見かけるようになりました。お香は、最も手軽な香りの楽しみ方のひとつです。
香水とは違い、お香は「燃焼」を前提としています。この言葉、みなさん覚えていますか?中学校の理科で習いましたね。広い意味では、お焼香や焚き火も「燃焼」なくしてはありえないので、お香の仲間といえます。

今から約1400年前、淡路島の海岸に漂着した木片を漁師が火にくべたらよい香りがした。それが香の始まりであるという逸話が日本には残っています。世界を見渡してみても、焚香料の歴史はパフュームの歴史よりもずっと長く、それは人類が火を扱いはじめた時に始まっていたのではと考えることもできます。
何かを燃やすと、かならず香りが出る。その温度とスピード、そして香りの内容をコントロールしたものが「お香」です。人類の壮大な歴史に思いを馳せながら、枯葉や樹脂など自然の素材を使って、オリジナルのお香(インセンス)を作ってみましょう。

*子供は必ず大人と一緒に作業しましょう

READY
準備するもの
  • お香の素材(STEP1で詳述)

  • ナイフ、ハサミ、石、石製の乳鉢など

  • たぶ粉(別名は抹香)

  • すり鉢とすりこぎ

  • 計量スプーン

  • 和紙(ふつうの紙でも可)

  • 30mlほどのシリンジ(注射器)

  • シリカゲル(もしあれば)

  • 電子レンジ(もしあれば)

STEP 1

お香の素材を見つけよう

  • 素材を見つけに出かけよう
  • 素材自体に香りがあるものの方がベター
  • 枯葉などの自然物を採集
  • 森で採集したもの

まずは、お香の素材を見つけましょう。自然界で見つけられるものだと、枯葉、樹脂、花や実、海藻や苔などがあります。キッチンや身の回りにあるものだと、胡椒や山椒の実、シナモンパウダー、緑茶や抹茶、かつおぶし、クッキー、ラムネ、鉛筆の削りかすなどでしょうか。
乾燥しているもの、素材自体に香りがあるもの、燃焼性があるものが適しています。みかんの皮など水分を含んでいるものは、乾燥させてから使いましょう。土や砂などはちょっとチャレンジングです。常温でさほど香りがなくても、燃やすと良い芳香を醸すもの(樹脂など)もあります。爪で擦って摩擦熱をかけて見分けましょう。

過去に学生たちが作ったビックリお香の例を紹介します。
・頭痛薬を粉状にして「頭痛薬のお香」→むしろ頭が痛くなるような匂いでした…危険です。
・タバコの葉っぱで「タバコのお香」→タバコそのものでした…
・花火を分解して、「火薬のお香」→よい子は真似しないでください…

STEP 2

細かく砕いて粉状にしよう

  • 素材を細かくします
  • すりごまを作る要領で擦ります
  • 木片
  • 固い素材は石製の乳鉢が適してます

まずは大さじ1杯分を目標に、素材から粉を作ってみまょう。すり鉢で胡麻を擦って「すりごま」を作る要領です。素材によってはすり鉢でも良いかもしれませんが、固い素材であれば石製の乳鉢を使いましょう。なければその辺の石で砕いたりすり潰したりしてみてください。
お香作りは、例えるなら小さなクッキーを作る要領です。多少の粒が残っても大丈夫です。粒が大きすぎると成型できませんが、だいたい砕けたら生地でつなぐことができるので、次のステップに進みましょう。

STEP 3

たぶ粉と水を加えて練る

  • たぶ粉と水の配合バランスが重要

たぶ粉は、クスノキ科タブノキ属の木の幹の皮を粉状にしたものです。水と混ぜると、不思議と糊のようになります。クッキーでいえばクッキー生地のようなもので、STEP2で作ったパウダー状あるいは粒状の香り素材と混ぜながら、自由に成型していきます。たぶ粉自体にもほんのり木の香りがあり、燃焼効果もあるという優れものです。たぶ粉はオンラインで入手可能です。

すり鉢にまず、STEP2で作った粉を入れます。そこにたぶ粉を足します。たぶ粉が多いほど成型しやすく、スムーズに燃えてくれますが、香りは薄くなってしまいます。そのためバランスが重要。素材により異なりますが、以下の割合を目安にしてください。

●一般的な素材
素材に対して10~25%のたぶ粉を加えます。こちらが一般的な処方ですが、最初は慣れないので思い切って素材と同量のたぶ粉を加えた方が安全です。慣れたらたぶ粉の割合を少なくしていきましょう。
レシピ例:シナモンパウダー(小さじ4)/たぶ粉(小さじ1/2~1)

●素材の芳香成分として油分・樹脂分を多く含む場合
素材に対して25~80%のたぶ粉を加えます。油分・樹脂分が少ない方が成型しやすくよく燃えますが、少なすぎると香りが薄くなります。
レシピ例:白檀パウダー(小さじ1)/丁子パウダー(小さじ1/2)/たぶ粉(小さじ2)

たぶ粉を加えたら、すりこぎで練りながら水を加えていきます。水分はつい加えすぎてしまうので、1滴ずつゆっくり加えていきましょう。多少パサついていても、練ることでまとまっていきます。「耳たぶ」「ぷにぷに」あるいは「クッキー生地」のような硬さになるまで加えましょう。配合は常にトライ&エラーです。正解はありません。

*大さじ1=15ml、小さじ1=5mlです。
*湿度や温度も影響します。

POINT

白檀や丁子はパウダーの状態でもネットリずっしりしているので、「油分・樹脂分が多い」と判断できます。パウダー状ではなく、ワックス状や油脂状のものを香りの素材として使う場合(たとえばバターや精油など)、枯葉や木片を粉状にして加えて調整するとよいでしょう。

STEP 4

成型しよう

  • コーン型のお香を成型します
  • コーン型のお香
  • 棒型、コイル型はシリンジに流し込みます
  • 絞り出して成型
  • 左から、コイル型・棒型・コーン型

お香を成型しましょう。下敷きに和紙を使うと、水分を適度に吸ってくれます。円錐のコーン型、お線香のような棒型、蚊取り線香のようなコイル型の作り方を紹介します。

●コーン型の場合
指で高さ2~3cm、底直径0.8cm~1.2cmの形を作りましょう。

●棒型、コイル型の場合
STEP3で作った生地に水滴をさらに足し、ムースのようなテクスチャーにしてから30mlほどのシリンジ(注射器)に流し込みます。和紙の上に絞り出しながら形を作りましょう。水分を足すほど絞り出しやすくなりますが、形が崩れやすくなりますので注意してください。シリンジは100円ショップなどで購入可能です。

POINT

焚いた時のことを考えて成型しましょう。接触する土台が燃焼を止めるので、最後に必ず1~2mmは燃え残ります。つまり底面の面積を多く取りすぎると、材料がもったいないことになります。また、先が細い方が火は点きやすく、スムーズに燃焼が進みます。つまり、コーン型、棒型、コイル型は理にかなった形です。このポイントをおさえつつ、自由な形を成型してみましょう。

STEP 5

乾燥させる

  • 風通しのよいところで陰干し
  • 乾くと色が薄く変化します

1~3日ほど、風通しのよいところで陰干しします。乾くと色が薄く変化します。コーン型の場合、底面を見ると、まだ乾燥していないところが色濃く残っているのがわかるでしょう。
乾いたらシリカゲルのような乾燥剤と一緒に容器に入れ、常温あるいは冷蔵庫で保存しましょう。

STEP 6

点火して香りを楽しもう

  • いよいよ点火!

コーン型は石の上に置いて、棒型は火鉢にさして、コイル型は針金で吊るすなどして、点火してみましょう!不燃性の土台を使って、火事にはくれぐれも注意してくださいね。どんな香りがするでしょうか?

POINT

お香が湿気っていて点灯しづらい場合は、電子レンジで10秒チンしてみてください。火が点かない場合はこれを繰り返します。なるべく早めに使いきりましょう。

STEP 7

「やった!レポ」に投稿しよう

オリジナルのお香を作ったら「やった!レポ」に投稿して、体験をシェアしましょう。質問や感想はコメントに記入してください。

MATOME
まとめ

「追風用意(おいかぜようい)」という言葉をご存知でしょうか。もとは吉田兼好の徒然草に出てくる言葉です。すれ違う時にふんわり香る着物に焚き染めた香りや、空間に残された「残り香」、そのような香りの準備、あるいは配慮のことを意味します。
お線香は焚いている時は煙たいので、来客の前に燃焼を終わらせておくもの。奥ゆかしいですね。古来よりお香は、おもてなしの心を体現してきたのです。
お香こそ、日本の湿度と木造建築に最もふさわしいディフューザーでもあります。ぜひ自然の恵みをそのままギュッとお香に詰め、楽しんでみてください。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性3
4知性
4感性
アクティビティ
つくる
環境
森 ・ 街 ・ 公園 ・ その他
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1日以上
対象年齢
小学校低学年以上
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