東京農業大学で造園学を学んだのち、中国で2年間砂漠緑化活動に従事する。帰国後、日本各地の自然を訪ねるツアーを企画する専門特化型の旅行会社に勤務し、植物を学ぶ。2018年にフリーの植物ガイドとして独立。徒歩10分の道のりを100分かけて歩く『まちの植物はともだち』観察会を中心に、保育の現場や地域おこし、企業のSDGsの取り組みへの協力など幅広く活動。著書に『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』、『種から種へ 命つながるお野菜の一生』(どちらも雷鳥社)。
1年中いつでも楽しむことができるのが植物の良さですが、それでもやっぱり大変なのが夏です。特に近年の酷暑ともいえる暑さのなかでは、外に出ることさえおすすめできない状況になってきました。
こうなると夏は植物観察をお休みしないといけないように思えてきますが、じつは良い方法があります。それが、早朝の植物観察です。
まだ日が昇っていない時間に植物はどのようなふるまいをしているのでしょうか。いつもより早起きをして確かめにいきましょう!
「半径100mで探す!冬芽の顔あつめ」
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「植物の謎解き ひと足早く春の植物観察に出かけよう!」
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6月頃から咲き始めるツユクサの花。その青い花びらがとても美しく、暑い季節に見ると涼やかな気持ちにさせてくれます。街中でもよく見かけるので、いつでも咲いているように感じますが、じつはツユクサは早朝から昼にかけての限られた時間だけ咲く植物だとご存知でしょうか。
早朝、日の出の前にツユクサを探しに行くと、まさに開花しようとするツユクサを見つけることができます。咲きたてのツユクサに朝露がつく様子を観察すれば、この花に「ツユクサ」と名前がつけられた理由にも納得することができます。
早朝に観察した花の場所を覚えておき、今度は昼過ぎに同じ花を見に行ってみてください。すると、朝に開花したばかりの花が溶けるように萎れた姿を観察することができます。
ここまで見届けると、ツユクサが半日程度しか咲かない短命な一日花であることを確かめることができ、その美しさが貴重なものに感じてきます。
次に観察したいのはユウゲショウ。ピンク色の花が咲く植物で、これも街中でよく見かけます。車がそばを通るようなアスファルトの隙間でも生きていられるたくましい植物です。
ユウゲショウは、漢字で「夕化粧」と書きます。花が夕方から咲くのでこの名前がついたとされますが、はたして本当にそうなのでしょうか。というのも、この花を夕方に見に行くと、そのほとんどが花を閉じているからです。夜に見に行っても同様で、花はしぼんだままです。
それでは、いつになったら開花中の花が見られるのかというと、それが早朝です。日が昇る前のまだ薄暗い時間にユウゲショウを探しに行くと、すでに咲いた状態の花を見ることができます。どうもユウゲショウは深夜から夜明けにかけてその花を咲かせるようなのです。
ユウゲショウはマツヨイグサの仲間になりますが、これは夜に花を咲かせるものが多いグループです。なので、ユウゲショウの名前をつけた人は、この花も夜に咲くのだろうと早合点して名前をつけてしまったのかもしれません。
名前に惑わされず、自分で確かめてみることの大事さを教えてくれる花です。
朝に咲く花といえば、セイヨウタンポポも忘れてはいけません。深夜にはすぼんでいた花が、日の出とともに開花していくので、これも早起きの花です。
ですが、この花の観察を続けているとあることに気が付きます。セイヨウタンポポは晴れた日には早朝に咲くようですが、どうも曇りや雨の日にはなかなか開花しないようなのです。
これは、セイヨウタンポポが時間ではなく、日の光の量によって開花を決めていることに理由があります。曇った日には光の量が足りないので花は開かず、日の光がさす時にだけ花を咲かせるようになっているのです。
植物が花を開くきっかけには、時間以外にもさまざまな要因があるのだということが分かると、その見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。
こうして早朝に植物観察をしていると、朝に咲く花はほかにも多くあることに気が付きます。分かりやすい植物でいえばアサガオがそうですし、野菜のカボチャだってそうです。
ここで面白いのは、どの花も日の出とともに開花すると決まっているわけではなく、それぞれ少しずつ時間帯がずれることにあります。
私の観察だと、アサガオは深夜の2~3時頃に咲きはじめ、カボチャは早朝5時頃に咲きました。ほかにも、ムクゲは朝4時頃に咲くなどするので、これらをつなぎ合わせていけば開花している花を見て時間を知るなんてこともできそうです。
近くに咲く植物の開花時刻を調べて、マイ花時計を作ってみるのも楽しいかもしれません。
花が咲く時間はその日の天候や気温によって変化します。また観察する日によっても開花時刻はずれていくので、正確な時刻を知ることはもちろんできません。身近な植物と親しむ方法のひとつとして楽しんでいただければ幸いです。
早朝の植物観察をしたら写真に撮って「やった!レポ」に投稿しませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
植物観察はテーマを決めるとぐっと面白くなります。早朝の植物観察を楽しんだら、今度は夜の植物に注目してみると新たな発見があるかもしれません。自分なりのテーマを決めてぜひ植物を楽しんでください。
夏は、植物が枝葉を伸ばす活き活きとした姿を観察できる季節です。この時期が過ぎると、今度は実をつけ、種を運ぶ季節になります。1年のうちでその姿を次々と変えていく植物は、「いま」観察しないといけないものばかりです。
夏の植物観察もどうぞお楽しみください。
『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい(雷鳥社)』
http://www.raichosha.co.jp/book/other/ot48.html
『種から種へ 命つながるお野菜の一生(雷鳥社)』
http://raichosha.co.jp/book/other/ot56.html